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珈琲人に呼ばれた月曜日

心拍数が上がりっぱなしの月曜日だった。
帰るまでずっとほかほかしていた。

ランチでスパイスカレーを食べたせいでも、帰り道に自転車で坂道を登ったせいでもない。

一つの場所で、同時に、幸せな出会いを三つも経験したからだ。

月曜日の昼間、仕事の都合で急に時間が空いた。どうしようか。

大阪、中津。近くに行きたかったスパイスカレー屋さんがあることを思い出した。

開店前から先頭に並んだ。
念願の味は最高だった。
水まで美味しかった。

なんだかすぐに帰るのはもったいない。
コーヒー飲みたい。

そう思って前を向いた瞬間、木の看板に「珈琲人」の文字。

珈琲人?呼んだ?

という気持ちでお店に入ろうと進むと、ほんの一瞬だけ私より早く、1人の女性がお店の引き戸を開けた。

彼女は「先に入りますね、はい、次どうぞー!ふふふ。」と笑顔で振り返って話しかけてくれた。もうなんか、いい気持ち。

店内に入ると、席はほとんど埋まっていた。

その女性と私が笑い合いながら入店したので、2人連れだと思ったのだろう。テーブル席に座っていたおじさまが「席代わるよ。」と言ってくれた。お店のママは、私たちが同時に飲めるようにお冷を持ってきてくれた。

「今初めてお会いしたところなんですよ。」と説明する私たち。

「そうだったの。荷物だけでも置いたらいいよ。」おじさまはそう言うと、テーブル席の空いているスペースに上着とバッグを置かせてくれた。「そうだったんですか。カウンター、お好きなお席にどうぞ。」とママさんは笑ってくれた。

さらに気持ちがあたたまって、もはや汗ばんでいる私。

カウンターの空席は三つ。
じゃあせっかくだからと、一つあけずに隣同士に私たちは座った。

「ここね、ずーっと通ってるの。ここのコーヒーすっごくおいしいんですよ。初めて来られたの?」と丁寧な言葉でニコニコお話してくれる女性。お名前はMさん。

珈琲人が大好きなことと、私と隣り合わせの時間を楽しんでくれていることが伝わってきて私までニコニコしてしまった。

そこに登場したアイスコーヒーがまた、たまらなかった。


私は寒い季節にモコモコ着込んで出かけた後、暖かい部屋に入ってから飲むアイスコーヒーが好きだ。スパイスカレーの後のアイスコーヒーも好きだ。

これら2つが揃っただけでも最高なのに、珈琲人のアイスコーヒーは味も最高だった。スッキリしていてごくごく飲んでしまった。Mさんの言うとおり、本当に美味しい。

Mさんと私にはいくつか共通点があることがわかり、会話はさらに弾んだ。Mさんの笑顔、とても可愛らしい。

初めて会ったと思えないくらい親しみを込めながら、初めての会話に失礼がないようにと丁寧に言葉を選んでくれる彼女を私は大好きになってしまった。

仕事を聞かれてライターをしていると答えた。今後は、たくさんの方にお話を聞く取材のお仕事を中心に頑張りたいですと。

すると、テーブル席のあのおじさまがまた声をかけてくれた。「どんな人に取材をするの?」「どんな分野に興味があるの?」私は聞かれるがままに楽しく答えた。

初めて会う人が自分の取り組むことに興味をもち深掘りしてくれる。照れくさいけどこんなに嬉しい気持ちになれるんだ。取材ライターとして大切な気づきまでいただいてしまった。

その上、さらに出会いが広がりそうなお誘いまでいただいて、私の胸は感謝と感激でいっぱい。

そして、出会いはもう一つ。足つぼ師、藤井亮さん。店舗を構えないポップアップスタイルで、足つぼ一筋。

喫茶店や美容院の一角、イベントに出店しているという。もちろん出張も。

月曜日はちょうど珈琲人に足屋が出現する日だった。Mさんは、足つぼの予約をしていたのだ。

彼女はカフェオレとトーストを楽しんでから足屋のブースへ……。いいな、こんな昼休み。

藤井さんは、この人に足つぼしてもらったら心まで元気になれそう、と直感で思うような爽やかで楽しい空気を持った方。彼も私たちの会話に気さくに加わってくれた。

後から藤井さんが登壇したイベントのアーカイブを観たのだけれど、足つぼと中津の街への愛がはんぱなくて思わず笑顔になった。

足つぼ師として活躍するまでの道のりも相当ユニークで、いつか絶対に取材させてもらおうと思っている。

帰り際の私は珈琲人での出会いに高揚したままだった。そんな私にママさんがくれた笑顔も忘れられない。

「いい出会いがあってよかったねー!すごいねー!」と言ってくれた。珈琲人の看板が私を呼んでくれたおかげだ。

お店を出てすぐ、店内で写真を撮っていないことに気づいた。

「ただいまあー。」と戻った。

もはや写真を撮りに戻ったのか、単に名残惜しかったのかわからないが、皆さんがもう一度笑顔で迎えてくれて嬉しかった。

穴が空いてポカーンとするしかなかったはずの月曜日に、私はとんでもないパワースポットを見つけてしまった。

電車に乗らなきゃ行けない距離感もむしろいい。恋しい場所があるって嬉しい。

近々月曜日に休みを取って、珈琲人でコーヒを飲んで、足つぼを受けながら、おじさまとMさんが来るのを待ちたいなと思っている。

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