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共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会(2)

●前記事 「共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会
ことの出発点は、法政大学という大衆大学卒業の学歴しかない菅さんが国家のトップになったのをみて中国共産党員が驚き、日本では農民工でも首相になれるのかと揶揄したということにあります。 

そうです。たかが受験戦争に勝ち切ることができず、二流大学を卒業したような知能に問題のある人物は、苛烈な中国の受験戦争を勝ち抜いてきた受験エリートである共産党員からみたら「農民工(共産党員は学歴のない一般人を農民工と呼んで小馬鹿にしています。)」なのです。

共産党員になるためには、精華大学か北京大学に入って、そこで優秀な成績を収めることが必要になります。そのため、親たちはなんとか息子たちを精華大学に入学させて共産党員にならせたいとして物凄い受験戦争が生じています。どなたかが、韓国のことを指摘しておられましたが、韓国なんて中国の受験地獄に比べたら全く話になりません。 

精華大学か北京大学に入って共産党員となり、出世する道以外で、「成功」するには、スポーツで英雄になるか、芸能界で人気者になるか、芸術家として成功するか・・・起業して成功するか、という限られた道しかありません。その点はアメリカの黒人が置かれている状況と一緒です。 

共産党員のプライドの高さの源泉は、そこにあります。精華大学にも北京大学にも入れなかったものは、「人」にあらずです。受験戦争すら勝ち抜けない低能を自分たちと同じ人間とは思っていないといってもよいでしょう。 

中国共産党は、その本音において知能に劣る農民工(受験戦争の敗者の総称としての農民工です。)に選挙権を与えても統治が混乱するだけで何のメリットもないと思っています。
受験エリートによる統治が、知能におとる農民工に選ばれた人気者による統治よりまともであるという確信です。彼らは本心から自分たちは、一流大学を出て共産党員となったエリートであり、馬鹿な農民工と同じ大衆とは違うのだというプライドで生きているのです。  

繰り返しの部分が多いですが、そのことは中国共産党の統治とは何かを考える上での基本中の基本になりますので、よく理解しておいてください。 

中国のエリートとは官僚のことです。官僚はすべて共産党員です。それは中国が生んだ中央集権制度(郡県制度)と科挙による「士大夫(読書人階級)」による統治です。これが四書五経を讀むことで天との一体感を得られるという救済を掲げた「儒教」の必然です。 

科挙を統治の背骨にした中国社会の伝統的な特徴は、「受験エリートの統治」だということです。昨日今日の話ではないのです。宋の時代に完成する制度ですが、儒教を国教にした漢の時代以前からの2000年の歴史があるのです。

これが合理的にみえて合理的ではなかった。日本は律令制度をはじめとして多くのことを中国から導入しましたが、絶対に受け入れなかったものが2つあります。1つは「宦官」です。もう1つが「科挙」です。この2つは日本社会と肌が合わなかったのです。そしてそれは正解でした。

読書人を尊び、文人を尊ぶ儒教社会は、体を使う仕事を蔑視しました。そのことは、兵士も同じこと。人民解放軍は私兵だということを指摘しておられる方もいましたが、共産党のエリートにとっては、兵士は頭の悪い消耗品であり、農村の次男、三男の食いあぶれた社会の不安定要員です。体育会系の軍人は、受験エリートが軽蔑する職種です。決して社会の尊敬は得られません。彼らは技術的なエンジニアや職人も馬鹿にしていました。職人の技術や作る工芸品は、買えばよいと考えており、その技術を尊ぶということもなかったのです。職人に対する尊敬の念を忘れない日本人とはそこが違います。

「それは官僚だけではないのか」という疑問に対しては、中国での出世とは、官僚としての出世です。2000年前から。落ちこぼれは、ITか何かで起業して運をつかむしかありません。民間企業は所詮、エリートになれなかった落ちこぼれが、成功するために運を掴む賭博場です。その経営もエリートである共産党員に監視され、管理されているのです。 

人民解放軍が共産党の私兵であるという指摘は、なんの意味があるのか、僕には判りませんが、要するに、軍人に対する社会の尊敬はなく、体育会系の軍人を、受験エリートの共産党員が馬鹿にしているということの一つの現れでしょう。

人民解放軍の兵士は、中国共産党の私兵です。共産党に金で雇われているということです。軍人が共産党に入党することはありません。だって、学歴(共産党員にとって学歴とは、精華大学か北京大学しかありません。)がないんだもん。 

中国共産党による統治の強さも弱点も、すべて受験エリートの統治ということにあります。そして受験エリートが恵まれた地位をもてるのは、その受験戦争を勝ち抜いてきた知能の高さを正当性の根拠にしているのです。

共産党員が、現代の中国の不公平や格差にも泰然として「それは当たり前だろう」と考え、共産主義の理想との不一致に疑問をもたない理由はそこにあるのです。厳しい科挙を勝ち抜いてきた共産党員には、恵まれた待遇を受ける正当な理由があるのです。
(MLでのやりとりから) 
共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会 
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