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共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会(5)

「敵を知れ」は戦いの定石です。中国共産党と共産党員の考え方を知ることは、そのために必要となります。

共産党の根本的な思想は、「理性的合理主義」です。徹底して社会を理性に基づいて合理的に設計することです。それが圧倒的多数のプロレタリアート(無産階級)を含めた人民全体を幸福にするための正しい方法だということを信じています。 

すなわち「理性による統治」です。天下を取った後、これを実施するのに必用なことは国家官僚テクノクラートの整備です。テクノクラートは最高級の知性と教養と人徳をもった人たちがなるべきものです。国家の統治を知能の劣った愚鈍な連中に任せるわけにはいかないわけです。もともと中国は、合理主義の国です。その中核的な制度として「科挙」があったわけです。困ったことに、儒教は、士大夫を持ち上げます。いわば四書五経を諳んじることができる知的な受験エリートが人格的にも優秀であるという幻想です。北京大学若しくは精華大学に入学して「科挙」に合格すると、その中から優秀な連中だけが、晴れて「共産党」に入党でき、出世の出発点に立てるわけです。

その受験戦争は、かつての日本の受験地獄を遥かに超える過酷なものです。多くの予備校が乱立し、小学校の頃から、高額な塾や予備校に通わされます。ところで、本当のエリートは知っています。塾や予備校を頼って「科挙」を通ってくる受験エリートに本当の天才や秀才はいないことを。彼らは学校の勉強と自分の工夫だけで十分、北京大学や精華大学を合格してくるからです。受験戦争を鉢巻き巻いて頑張ってきた連中を下に見ていますが、それでも「一生懸命頑張るガリ勉の能力は、官僚になってからも役にたつ資質」ではありました。それでも、人民の不満が高まると、いとも簡単に予備校や塾を禁止しました。共産党がです。

そんな過酷な受験戦争を勝ち抜いてきた、国家エリートたる共産党員たちは、心の底から、民主主義を馬鹿にしています。国家統治は、知的エリートである共産党員に任すべきであって、愚民の選挙で馬鹿や人気者をリーダーとして迎えるなんてことは、愚かな宗教にしか見えないのです。 

共産党員の傲慢は、自分たちが受験エリートだという自負に基づいています。彼らは本当に、自国の人民だけでなく、世界の指導者(特に二流の学歴しか持たない日本の指導者)を下にみているのです。 

太閤殿下が天下人になったという歴史をもち、田中角栄という不世出の小学校卒の宰相をもつ日本という国の国民には理解しがたいことですが、中国では受験エリートは、知力、能力、識見、道徳、人格も一流だとみなされており、そこには2000年の歴史があるということを日本人はもっと知るべきです。 

受験エリートによる支配は、中国共産党のプライドであり、メリットですが、そこにこそ、中国共産党の弱点もあるということです。
以上 
(MLでのやりとりから)
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