国葬の法的根拠について-朝日新聞の今日-
本日(7/16)の朝日新聞の社説に注目していたが、朝日は取り上げなかった。様子見だろうか。
本日、全国紙で取り上げたのは、読売と毎日だけ。読売は、「安倍氏国葬に~内外の悼む声を踏まえた判断」の見出しの下、260カ国・地域・機関から1700件以上の弔意が寄せられていることを紹介し、奈良や東京での弔問者の多数を踏まえ、国葬に理解を示しながらも、「異論がある人もいよう。だが、不慮の死を遂げた元首相の追悼方法を巡って日本国内が論叢となれば、国際社会にどう映るか。そんな事態を、遺族も望んではいまい。」として、「政府は、不必要な混乱を招かないよう、国葬の規模や運営方法などについて、丁寧に説明を尽くしてもらいたい。」と結ぶ。すっきりしない。
毎日は、「安倍元首相の『国葬』~国民の思い尊重する形に」の見出しの下、取りあえずは「国民が弔意を示す場を設ける必要はある。」としつつ、「だが、国葬に関する法律や基準はない。首相経験者の業績で判断することになれば、時の政権によって恣意的に運用されることがある。」と原則論を述べ、「退陣から2年弱で、現役の政治家だった安倍氏の歴史的評価は定まっていない。野党は『公文書改ざん問題や国会での虚偽答弁などがあったことも忘れてはならない』と指摘している。」と野党の主張を援用し、「こう
したことから、政府・与党内にも慎重論があった。銃撃事件の捜査も続いている。落ち着いた状況の中で、世論を見極めながら決めるべきではなかったか。」と本音を呟く。
その上で、国葬には反対しないけど、吉田元首相の国葬では政府は官公庁や公立学校で一切に黙祷するよう指示し、民間企業にも協力を求めた。だが、個人の尊重を尊ぶ憲法の趣旨に添わないとの反対意見もあった。」とし、「今回は自治体や学校の自主性を重んじ、同調を求めるようなことは避けるべきだろう。」と、ここでやっと見解らしきものを表明している。
琉球新報のようなストレートな意見を、朝日や毎日も表明するかな、と思ったら拍子抜けだった。世界の国葬の扱いや前代未聞の多数からの弔問の要請から、国葬に反対するのはマズイと判断したのだろう。自治体や学校に対する同調を求めてはならないという線で防衛線を敷いて闘うつもりのようだ。
学校での国旗・国歌儀礼に基づく職務命令の合憲性を認めた最高裁判例(2011.05.30、2011.06.06、2011.06.23)の趣旨を嚙みしめよう。それは、一般的に式典における慣例上の儀礼的な行為であり、直接的に個人の思想、良心の自由を制約するとは認められないとし、ただ、間接的な制約が有るので目的や制約の態様を検討して判断すべきであるとした。
どうやら全国紙やテレビは「国葬には反対しないが、学校や自治体に同調を求めるようなことはするな。」の線でいくつもりだろう。上記判例の趣旨を銘記して彼らの反対の論理に備えようではないか。それぞれの思いで「黙祷」という所作を求めるという程度であれば決して最高裁判例に反するものではないことを覚えていてほしい。
●国葬の法的根拠について-朝日新聞の今日-
●国葬の法的根拠について-朝日新聞の今日-(2022/7/17)
●国葬の法的根拠について(3)