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「ちえ」(62)「プロポーズの翌日」②

「ちえ」の作ってくれたタマゴサンドを持って動物園に行くことになりました。

動物園は、初デートで行った以来一度も行っていませんでした。

初デートではリフトに乗っている時だけ「ちえ」の手をにぎれましたが今回はずっと手を繋いでいるつもりでした。

動物園に着くと「ちえ」が「ねえ、トクちゃん、腕を組んでも良い?」と言ってきました。

「じゃあ、ずっと腕組んで歩こうか」と言うことで腕を組みながら歩きました。

一通り回ってから「爬虫類館どうする?」と聞くと。

「せっかく来たんだから行こうよ」

「でもなあ⋯。やっぱリフト怖いんだよな⋯」

「じゃあ前来た時みたいに手を握っててあげるから。ね、行こ」

「う~ん、そうだなあ、我慢するか。俺、ずっと目をつぶってるから着いたら教えて」

リフトに二人で乗って目をつぶって「ちえ」の手を握っていました。

「トクちゃん、そんなに強く握った痛いよ」

「ゴメン。でも、怖いから⋯」

「プロポーズしたばっかなのに、こんな情けない姿見せちゃったよ⋯」

「トクちゃんは情けなくなんかないよ。私の前では弱いとこ見せても良いんだよ」

「うん⋯。そうだよな。それでなきゃ結婚なんてできないよな」

「そうだよ。トクちゃんの弱いところも含めてが全部好きなんだからね」

「うん」

「俺、ヘビも苦手なんだけど⋯」

「知ってるよ。初デートの時も、私の後ろに隠れてたよね(笑)」

「今日も「ちえ」の後ろに隠れてるからな」

ヘビ以外の爬虫類は、なんとか一緒に見ることができました。

爬虫類館を出たところで、時間が昼ごろになったので持って来たタマゴサンドを食べることにしました。

初デートで来た時と同じベンチに座ってタマゴサンドを食べました。

「初デートの時も、このベンチに座ったの覚えてる?」

「うん覚えてるよ」

「ここで色々話したよな」

「家族構成とかさあ」

「私、緊張してたからなあ⋯。細かいとこは覚えてないなあ⋯」

「俺だって緊張してたよ。ホントは俺も細かい話しは覚えてないんだけどな(笑)」

「ここじゃないけど、レッサーパンダの話ししたの覚えてる?」

「レッサーパンダ?なんだっけ?」

「3年生の時にクラス全員で、ここに来たろ?」

「うん、覚えてる」

「その時にさあ、「ちえ」に告白したYがさあ、レッサーパンダのことをラッサーパンダって言ってて、みんなで笑ってたんだよな」

「ふ~ん。そんな話しもしたんだ⋯」

「あれから、もう2年くらいたつのか⋯」

「なんか時がたつのって早いよな⋯」

「T君が「トクちゃん」になってKさんが「ちえ」に変わったんだもんな」

「最初なんか「ちえ」って呼べなくてさあ、ついついKさんって呼んで「ちえ」に直されたよなあ」

「私は、あんまり意識しなくても「トクちゃん」って呼べたけどね」

「懐かしいよなあ⋯」

「夕飯は、あの、肉の美味しい店に行こうか?」

「うん!」

「まだ、やってると良いなあ」

「俺、道、覚えてるかなあ(笑)」

                                                                      つづく







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