パブリッシャーがセールに応じてくれない場合もある(インディーゲーム開発者が遭遇する色々なトラブルの話その5)
個人や少人数でのインディーゲーム開発では色々なトラブルに遭遇する事になります。
大手や中小ゲームメーカー勤務なら会社がトラブルを解消してくれる事もありますが、インディーゲーム開発の場合は自分達で解消するしかありません。
中には致命的なトラブルもあり、そういうのを回避するためにも「どういうトラブルに遭いそうか?」というのを紹介していきたいと思います。
今回はシリーズの5回目となります。
1回目はこちら。
インディーゲームはよほど人気の作品でない限りはセール価格でない時はあまり売れません。
そのため積極的に30%OFFや50%OFF、場合によってはもっと安くセールをするのを繰り返す必要があります。
しかしパブリッシャーとの契約次第では「デベロッパー側がセールを依頼しているのにパブリッシャーが応じてくれない」みたいな事になります。
値引きされないインディーゲームは消費者からは存在しないような感じになり、ずっと売れないという悲惨な事になりかねません。
最近はインディーゲームが一番売れているswitchでさえソフト数が増えすぎて個々のゲームの売れ行きがかなり低下しています。
パブリッシャーとしてはリリースのためにかけた社内スタッフの人件費や外注費、広告費をできるだけ早く回収したいため、『最初の何万本まではパブリッシャーの取り分をかなり多めにする』という契約をデベロッパーに結ばせるところが増えてきました。
たとえば通常はデベロッパーとパブリッシャーの取り分割合は7:3とか6:4であっても、「最初の2万本まではデベロッパーとパブリッシャーの取り分割合は3:7にしてください」みたいに言ってきたり。
3:7どころか最初の数万本は0:10みたいなデベロッパーに一切金が入らない契約をさせようというパブリッシャーもあるようです。
この「最初の2万本」みたいな契約が後にセールの時にネックになりかねません。
通常価格で売った2万本と、セールで安くして売った2万本では当たり前のように同じ比率(3:7とか)であってもパブリッシャーに入る金は大きく減ってしまいます。
そのため、「インディーゲームはセールしないとあまり売れない」という状況なのにパブリッシャー側がセール販売を拒否し続け、ずっとセールをできないで売れず、デベロッパーが開発費の回収にかなり苦労するという事になりかねないのです。
契約というのは双方の合意があれば契約内容の修正などができます。
セールが当たり前の状況では「最初の何万本まで」という本数ベースの契約ではなく、「パブリッシャーにいくらのお金が入るまではデベロッパーとパブリッシャーの取り分割合は3:7にし、その後は7:3にする」みたいな金額ベースで契約をした方が双方にとってはトラブルが少なくなると思います。
とにかく今のインディーゲームはセールをしないと消費者にほとんど相手にされません。
パブリッシャー側としてもセールをせずにそのまま売れずお金が入って来ないより、セールをこまめに行って売りまくってパブリッシャーがかけた人件費や外注費、広告費をきちんと回収できるようにするべきです。
最初の契約時点で「最初の何万本までは」みたいな記載があったら、パブリッシャー側とよく話し合い、「これだと気軽にセールできなくなるから本数ベースではなく金額ベースに変更すべき」みたいに指摘しておくべきだと思います。
デベロッパー側がセールの割引率やセールの頻度、期間などをきちんとコントロールできるよう、契約書には「デベロッパー側の申し出に応じてパブリッシャー側は拒否する事なくデベロッパー側が希望する価格や割引率でセールを行う事」みたいな文言を入れさせた方が良いでしょう。
その6はこちら。