インディーゲーム開発者が遭遇する色々なトラブルの話(その1)
個人や少人数でのインディーゲーム開発では色々なトラブルに遭遇する事になります。
大手や中小ゲームメーカー勤務なら会社がトラブルを解消してくれる事もありますが、インディーゲーム開発の場合は自分で解消するしかありません。
中には致命的なトラブルもあり、そういうのを回避するためにも「どういうトラブルに遭いそうか?」というのを紹介していきたいと思います。
一つの記事で全て紹介するとものすごい文章量になりそうなので、シリーズとして複数の記事に分けて紹介していきます。
また、以前連載していた「ゲームの売れ行きアップ方法」というシリーズもインディーゲーム開発者やパブリッシャーにとって役に立つ内容が多いので、時間がある時に少しずつ読んでいくと良いでしょう。
金稼ぎは考えていないので全記事無料で読めます。(記事数は60以上)
この「ゲームの売れ行きアップ方法」のシリーズをきちんと最後まで真面目に読んでいるかそうでないかで、今後あなたが出すインディーゲームの人気や稼げる額がずいぶんと違ってきます。
それでは色々なトラブルについて解説していきます。
<海外ユーザーから訴訟を起こされる場合がある>
ゲーム内で光の点滅が繰り返されると『てんかん』などの症状が起きて体調が悪くなったり、ひどいと入院する事になる人もいます。
発作時の転倒で大怪我したりも。
てんかんを誘発するような光の点滅があるゲームでは、光の明暗の強さを弱めたり、点滅速度の低下、回数などの調整もしておくべきですが、それでも体調が悪化する人を考慮して、「ゲーム起動時に光の点滅に関する注意事項を必ず表示する」という風にしましょう。
海外では特に訴訟が起こされやすく、ユーザーの健康を損ねるような行為に対してはメーカーに懲罰的に多額の賠償命令が裁判で下される事も少なくありません。
大手メーカーだと普通に億単位の賠償命令が下されたり。
個人や少人数で作ったゲームでさえもそういう裁判に海外で巻き込まれると数千万円やもっと多額の賠償に発展する事になりかねないので、それを予防するためにこういう注意書きの表示が必要となります。
パソコンやコンシューマ機に移植されたレトロゲームは光の点滅表現がわりと多いですが、そういうゲームでは起動時に光の点滅に関する注意書きを表示しているのを良く見かけるでしょう。
<古臭い差別表現はNG>
昔のようなひどい差別表現は絶対にゲーム内に入れないでください。
もし入れてしまうとそれで炎上してアンチとなった人達に低評価爆撃を食らいまくり、そのゲームが売れないだけでなく今後出すゲームでもずっと嫌がらせを受け続けて事実上そのブランドでゲームを出すのは不可能という事になってしまいます。
過度なポリコレはエンターテインメント作品ではやる必要はありませんが、かといって昔のような一部の人を馬鹿にするような差別表現はゲームに入れてはいけません。
差別以外にも宗教に関する事もその信者を怒らせるような内容のはNGです。
<キャラクターデザインの酷似などで問題になる事がある>
人間キャラで個性的な衣装デザインをした場合、別のゲームやアニメ、漫画などとキャラクターデザインがたまたま似てしまう事があります。
人間でない動物系のキャラもたまたまLINEスタンプなどで存在する膨大な数のキャラクターのいずれかと似てしまったり。
創作物で「たまたま似てしまった」という事は普通に起こりえますが、キャラクターデザインで「個性的な感じにしよう」と頑張りすぎるほど、たまたま似た時の印象が悪化してしまいます。
一方そこまで個性を出しすぎないようにデザインすると「まぁよくあるデザインだし、似ても仕方ない」みたいに一般ユーザーに捉えられてそこまで問題にはなりません。
「個性をもっと出そう」と頑張りすぎたキャラデザインはこういうトラブルを起こす事があるので注意してください。
前提として「キャラクターデザイナーが他人のキャラをパクらない」というのは言わずもがなです。
<パブリッシャーとの守秘義務契約違反でのトラブル>
インディーゲームではパブリッシャーと守秘義務契約を行います。
しかしインディーゲーム開発者が何らかの理由でその守秘義務に違反してしまう場合があります。
たとえばパブリッシャーのスタッフの対応に何度も不満があり、それを広く公開してネット上の誰かに罰してもらいたいという浅い気持ちで色々ばらしてしまうというケース。
守秘義務を違反されたと知ったパブリッシャーはただちに契約違反だという事でそのデベロッパー(開発者)との取引を終了し、扱っていたソフトの全ての販売停止措置を取る事になりかねません。
残念ながらパブリッシャーの対応に不満などがあっても一般にそれを公開して改善させようとするのではなく、そのパブリッシャーの別のスタッフなどに対応の改善を求めるなどしてください。
それでも対応が改善されない場合は今後のゲームの販売は別のパブリッシャーに変更したり、すでに販売しているゲームも次の契約切り替えの時に別のところに移管するしかないでしょう。
そのパブリッシャーと縁を切ったからと後で色々曝露してしまう事も、そのパブリッシャーと民事裁判でトラブルになりかねないのでおすすめできません。
パブリッシャーイメージを悪化させるような情報の公開は民事訴訟で多額の賠償を支払わされる事になりかねません。
不満の曝露以外にも「パブリッシャーがどれだけ取っているか」みたいな金銭に関するデータの公開も守秘義務違反になるのでそういう話も他言しないように。
<パブリッシャー担当者の我が強い事でのトラブル>
インディーゲームは開発者が好きなように作るのが本来の姿ですが、パブリッシャーの担当者が「ここはこうした方が良いかも」のアドバイスの圧が強くなりすぎてゲーム内容を半ば強制的に改変させられそうになる事もあります。
「パブリッシャーの担当の意見を採用しないと以後の対応が悪くなる」なんて事も。
パブリッシャーのスタッフの仕事は「ゲームのリリースをお手伝いする」事であって、「自分の好きなように他人のゲームを改変させる」という事ではありません。
パブリッシャーのスタッフがこれをやらかさないようパブリッシャーは社員を繰り返し教育しておくべきです。
スタッフの中にこういう駄目社員が一人でもいると売れそうなゲームを作ってくれるデベロッパー達が嫌になって今後の取引で他のパブリッシャーに逃げていってしまいます。
また、特定のイラストレーターの絵をいろいろなインディーゲームのゲーム内や広告、ストアの画像に入れさせようとしてくるパブリッシャーもたまにあります。
ゲーム内のキャライラストやストア用のイラストはそのゲームの顔となるため、「このパブリッシャーの出すインディーゲームは同じイラストレーターの絵ばっかり登場する」というのはあまり良い事ではありません。
パブリッシャーがゲーム開発者にイラストレーターを紹介するならもっと色々な人を紹介するようにしましょう。
<偽物のパブリッシャー関係者には注意>
展示会やメールやSNSなどで偽物のパブリッシャー関係者から「うちと取引しませんか?」みたいな打診をされてそれにひっかかってしまう人もいます。
そういう偽者は途中で何らかの金銭を要求しようとしてきたり、ゲームのビルドデータやプロジェクトデータの提出を促すなどをしてきます。
ゲームのプロジェクトデータはインディーゲーム開発者にとっての大切な資産のため、それが流出してしまうと取返しのつかない事になります。
パブリッシャーと契約する場合は自分自身でパブリッシャーのサイトの問い合わせ窓口に連絡を入れて契約を進めるようにしましょう。
<ハッキング被害を考慮したビルドデータの提出を>
開発途中のゲームをパブリッシャーに体験してもらうにはその都度パソコン上でプレイできるビルドデータを提出する事になりますが、そのビルドデータは万一の漏洩が起きた時の対処も仕込んでおくようにしましょう。
・起動時にはパスワードの入力が必要となる
・一定の年月以降は起動できないようにする
・起動回数で起動制限をかける
など、色々な漏洩時の対策を仕込んでおくようにしましょう。
今は大手でさえハッキング被害でデータが漏洩する時代です。
パブリッシャーも知らない間にハッキング被害を受けて色々なデータが漏洩してしまう事は十分考慮しておくべきです。
また、パブリッシャー側もインディーゲーム開発者の個人情報や販売や金銭のやり取りデータはきちんと暗号化しておかないと、情報漏洩が起きた時に色々なデベロッパーから被害賠償の民事裁判を起こされる事になりかねないので注意しましょう。
<ゲームの権利を丸々奪おうとするパブリッシャーも普通にいる>
海外の一部のパブリッシャーや、日本でもよくわからない会社がパブリッシャー業務をやった場合、契約の中にそのゲームの権利を奪おうとする記載を入れてくるところもあります。
契約書については多少お金がかかっても、わからないところはきちんと法律の専門家に相談してその内容を細部までよく確認してから契約するようにしましょう。
ゲームの権利を奪われそうな記載や変な縛りがある契約には絶対に判を押さないでください。
<ローカライズの品質問題>
時々海外製のゲームでひどい日本語訳のゲームがあります。
日本で開発したゲームもパブリッシャーに紹介してもらったローカライズスタッフの翻訳がいまいちで同じ事が海外で起きてしまう事もあります。
文字数が多いゲームでローカライズコストを抑えようとするとこういう事も起きやすい。
また、翻訳についてはエクセルデータで日本語テキストの一覧を渡してそれを一気に翻訳してもらうという手順が多いですが、この方式の場合はゲーム内の盛り上がるシーンで場面に似合わない海外の言葉に翻訳されてしまう事があります。
感情表現がその場面にあってないというか。
大事なシーンにおいては実際のイベントシーン上で改めて翻訳者に確認してもらいつつ調整していくという事もやった方が良いでしょう。
ローカライズにきちんと手間をかけるほどコストがかかってしまいますが。
ローカライズスタッフの不備で俗語(スラング)が翻訳に入ってしまい、下品な表現や差別的な表現が入ってしまう事もたまにあります。
スラングチェックもきちんとやってもらいましょう。
第二回はこちらです。