古い洋館で暮らす人々の優しい日々/『からさんの家 まひろの章』小路幸也
シビアな物語にばかり接していると、温和な世界で一息つきたくなるものだ。愛すべき人々のコミュニティを紡ぎ、居心地の良い空間を提供する。小路幸也はそのセンスと技量に長けた作家に違いない。
小路幸也は一九六一年北海道生まれ。広告制作会社に勤めながら小説を書き、専門学校の講師などを経て、二〇〇二年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で第二十九回メフィスト賞を受賞。一一年には『東京公園』が映画化、一三年には『東京バンドワゴン』が連続ドラマ化された。筆の速さにも定評があり、著作数は百冊