ハワイの恋が終わり苦しみの先に、悟りへの道が開けた 30
第五章30 クリスの家からとっとと退散
クリスは別れた後もりさに食事を作ってもらえると思っていた。今までのように一緒に食べて、時子が来る日までは一緒に過ごすと思っていたのかもしれない。
私はクリスが家にいない時間を見計らって、彼の家にある私の持ち物を整理し、必要なものは持ち帰った。私がクリスの家用に買ったばかりの鏡やカーペット、私の家にあった可愛い子供用のいす、全て引き揚げようかと思ったがやめてあげた。
クリスが新しい住まいに移った時に、住みたがらなかった彼の為に、食器棚を拭いて、開けてもいない箱から食器を棚に納めてお鍋を出して。私がほとんどあの家を整えた。
クリスは、たくさんの私の心遣いを、感謝する日が、いつか来るのだろうか。
私物を撤退した後、クリスが帰った時には、彼はたいそう驚いたに違いない。よくテレビに出てくる場面で、その人の物が一切なくなっている、空虚感がにじみ出る画像。
いや、新しい彼女が出来たのだ。そりゃあそうだよな、くらいに思っただけかもしれない。
翌日は、私は仕事から遅く家に帰ってきた。私の家の入り口に、ホールフーズの野菜が置いてあった。クリスは別れた次の日に、夕食を作ってもらおうと野菜を買っておいたのだ。そうしたら、私の荷物がないことを知って、私の家に野菜を持ってきたけど、不在だった。そんなところなのだと思う。
クリス、あなたは私の身内でも息子でもないのよ。
クリスは、新しい日本の彼女とスカイプをして、長い夜は過ごせただろう。ただ、残念なことに、スカイプではお料理は出てこない。また、自分で食事をなんとかしないといけない、過酷な日々が始まった。
私はこの時は、元彼と付き合いだして、クリスの家から荷物を持ち出し、やっと関係が終えられた、スッキリしたのだとその日は思った。
この日は、龍一と近くのパン屋さんがやっているカフェへ食べに行った。そこはクリスの教会にほど近い。リリハベーカリーと言って、教会のあるヌウアヌ通りの日本国総領事館の角を曲がって、クアキニ通りに入る。リリハ通りを超えたらすぐ左手にある。その店の、シャンテリクリームがのったシュークリームが特に有名だ。日本の雑誌にも紹介されて、日本からの旅行者がワイキキからバスに乗って、わざわざ買いに来るほどだ。独特の甘みと塩味があるシャンテリクリームで作ったケーキもある。
そのカフェは、家が近いクリスともよく来た。その前に付き合っていた龍一も来ていたから、相手が元に戻っただけ。
カウンターしかなく、給仕さんたちは、フィリピン人のおばちゃん達だが、無駄口をたたかず働いている。多分、話してはいけないのだろう。創設者は沖縄からの日本人移民だ。オールドアメリカンハワイの名残がある雰囲気で、私は好きだった。ロコモコがおいしい。クリスとの思い出は、龍一とのものに、再び塗り替わる。
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