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くるくるまわす美容師さんの話

いつも髪を切ってくれる美容師さんが独立した。
自分のお店を作って一人で営業している。
かっこいい。
お店を開くと聞いたとき感動した。
自分と同じくらいの歳で夢を実現させている人を目の当たりにしたからだ。

自宅横に作られたちいさなお店はとってもおしゃれ。
彼女の人柄のせいか、居心地がいい。
髪を洗ってもらうときに座るあの倒れるイスも何台も試して決めたという。
ヒーター付きで背中がぽかぽかしてくる。
寒い季節に行くと洗ってもらっている間に寝そうになる。
ちょっと高いけど気持ちいいのでこれにした、と開店当初話してくれた。

新しいお店で初めて切ってもらったとき写真を撮ってもいいですか?と聞かれた。
今日のお客さんはこんな風になりましたというのをインスタグラムで紹介しているのだ。
はずかしいので顔が分からない角度でなら、とOKした。
お店の役に立てるなら応援したかった。

それから毎回写真を撮られた。
もちろん毎回了承を得てからだ。
こないだなんかは、もう髪を切るときのイスをくるくるまわされiPhoneでカシャカシャ撮られた。
あ、もうちょっとこっち、その角度いい!、あ、長いのが一本ちょっと切りますね、なんて言いながら右に左にくるくるされる。
わたしは5歳の息子のように心の中できゃははは!と楽しんでいた。

写真撮りたくなるんですよね~、と言っていた。
分かるかも。
作品ってことだな。
わたしは彼女の作品になったのだ。
宣伝のためでもあるけど、きっと写真に撮って自分でも眺めるのだ。
わたしもかつて自分の描いた漫画は飽きもせず何度も読み返した。
好きなんだな、ヘアスタイル作るのが。
楽しくカットしてくれてわたしもうれしい。


前のお店にいるときに初めて彼女に切ってもらったとき、周りの人からいいね!ととてもほめられた。
それから、毎回指名するようになった。
新しいお店ではなかなか予約が取れない。
ひとりでまわしているせいもあるだろうが(イスじゃなくてお店を)、わたしのように彼女のファンになってしまったお客さんがいっぱいいるのかもしれない。


会計をしているときに窓から陽が差してきた。
あ!自然光がいい感じ!ちょっと撮っていいですか!?
またiPhoneを出してくる。
何枚撮るんだ(笑)

毎回、楽しい気持ちで帰ることができる。
これってけっこうすごいことかもと思う。



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