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ルーティン

おはようございます。

本日は、私が好きな本の一節を紹介するところから始めたいと思います。

「驚くべき病体験、たとえば世界が粒々に分解するというような、まだ誰も報告していない現象を話してくれる患者がいたとします。

その彼が友達と映画を見に行ったり、ベースボールをしたり、喫茶店に行ったりしたことを、私は驚くべき病体験の話よりも膝を乗り出して興味を持って聴けるか。

実はそれは、医学部に入ってから何十年経った人間、医者の世界で生きてきた人間にはとても難しいことです。

この点は、看護師の世界はそれほどではないかもしれない。
あるいは、たいていの患者は看護師が健康な面に光を当てているからこそ治るのかも知れません」

(こんなとき私はどうしてきたか/中井久夫 医学書院)

※太字部分はとくだわらがしました。

さて、では今回は私が精神科に入院していた時のルーティンをお話します。

毎日の様子と、当時の私の気持ちをはさんでお送りしますので、良かったら見ていってくださいませ。

※ただし、

①全然変わったことはしていません。
②今のルーティンではありません。
③他の病院の入院者のものとは違うことがあります。

このことを了承して、お読みくださいね。

5:00 みんなまだ寝てるけど、起床してお化粧

(お化粧は六人部屋の同室の入院者の人が、勧めてくれた。多分「自分の体調や気分を、客観的に見てごらん」ということだったんだと思います)

5:15 英語の勉強。私一人で入院中に続けようと決めたので。(みんなまだ寝てる)

6:30 みんなの起床時間。検温、服薬、自分のいる六人部屋の掃除

7:00 朝食、歯磨き

8:00 自由時間(シーツ交換やロッカーの整理をしていました)

9:00 作業(菓子箱折り)

(作業は食堂に集められて、二時間ひたすら菓子箱を折ります。工賃は入院者の財産になりますが、時に看護師の人が企画した行事の予算に消えることがありました。ひと月当たり数百円でした)

11:00 自由時間(一休みして、お茶を飲んだり、吸う人はタバコ。私は吸いませんが)

12:00 昼食

13:00 買い物リスト提出、三日に一度は入浴、当番はトイレや共用スペースの掃除

(売店のない病院でしたので、必要なものは注文制でした。ほとんどのものは次の日に届きますが、読みたい本は家族の面会や差し入れ頼みでなかなか手に入りませんでした)

15:00 お茶、休憩

16:00 自由時間。共用スペースのテレビではチャンネル争い

(共用スペースには、テレビが一台と、地方紙が一誌ありましたが、大抵誰かが独占していて見ることが出来ません。情報源が少なくてとても困りました)

16:30 服薬

17:00 夕食

(食堂で働く人の都合で、夕食はこの時間。お腹が空いていなくても、食べなければなりませんでした)

18:00 歯磨き、洗顔

19:00 下剤を飲む時間(抗精神病薬は、便秘になりやすいので)

20:00 消灯

(眠くないのに布団に入り、目はらんらんとしていました)

夜中

(いつ退院出来るのか、明日も同じことの繰り返しで、同い年の人達はどうしているのか、と悶々としていました)

このような日々が五ヶ月続きました。

月に一度くらいは行事として桜祭りや誕生会、看護学生さんたちの企画したイベントがありました。

けれども普段の毎日があまりに平坦過ぎて「こんなことをしている場合ではない」と多動な私には苦痛の日々でした。

入院者の本分は、休むこと。

けれどもそれは何もせずにいることではありません。

自分の疾患について学んだりとか、服薬について知るとか。

社会資源、福祉制度、あるいは自分の入院制度について知るといった時間があって欲しかったと、のちのち思いました。

何も知らされないことの辛さを、この時の経験から痛いほど感じたのです。

もし、このnoteを精神医療の関係者の方が読んでいらしたら、そのあたりご検討いただきたいと思っています。

こんな感じで、今から30年前に私は入院生活をしました。
今では病院の体制も変わってきていると思います。

リハビリや疾患について学ぶ時間がもっと充実しているはずです。

ただ、精神科病院というのは、閉鎖空間です。密室という意味では患者の人権侵害は常に心配されます。

2020年の神出病院事件や、2023年の滝山病院事件といったことは許されないことです。

※これらの事件について、現在はさまざまな対応がとられています。今の病院を非難するものではありません。

人はいつ何時、精神的に調子を崩すかわからないし、医療のお世話になるかもわかりません。

自分ごととして、精神科病院の入院が安心なものであるべきだと、考えなければならないのです。

本日も、最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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