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【読書記録】神去なあなあ日常

今回は、三浦しをんさんの、"神去なあなあ日常" です。

この本への記憶

多分初めて読んだのは、大学生になってからだったと思う。何かしらの長期休暇に帰省した時に、実家にあったから、読んだ。というような。気がする。父親に勧められたんだったかな (そういえば本日父の日ですね。全国の父親の皆さん、Happy Father’s Day!です)。
林業の話であるということと、ワイルドな人たちだらけだったことは覚えていた。あと後半の、マジかよ、みたいな行事も。

改めて読んで

面白かった。再読だけど、純粋に楽しんだ。キャラクターの人柄の面白さ、会話の掛け合いだけじゃなく、書き口というか、テンポがすごく好き。
ちょうど今日、神去なあなあ夜話の方も読んだけど、主人公の少年が村の人たちと仲良くなっていくたび、私も彼らに少し近づけたような気がしてしまう。

森の大きさを、怖さを、偉大さを知っている人たち。あくまでも森の中の一部を貸してもらっているという感覚。そういう感覚をずーっと持ち続け、共有し続けている人たち。
独特の、全員顔見知り、みたいな生活を想像すると、すごく閉じている感じがするのに、重苦しさがあまりない。これもなあなあ精神のせいなのだろうか。

人間も一つの生物であるということ

山で働くこと。山で生きること。
生きていること、死ぬこと、が都会での生活より明確に存在している感じ。
人間の力ではどうにもならない事柄がごろごろ転がっていて、でも人間として生きているからにはお金とか、学校とか、人間関係とか、生活というものがそこにはちゃんとある。

いいとか悪いとかではなく、私は田舎の (?) 閉じた感じを少し苦手だと感じてしまう。いろんなことを共有しすぎている感じと、異分子を許さない感じが、どうしても息苦しく感じてしまう。それが自分たちの身を守るための、本能のどこかに刷り込まれた何かであること、は分かっていても。たくさん人がいる都会の人間の無関心さの方が、私には性に合っているのかもしれない。
無関心であることと、干渉すること。どちらも、それぞれ優しさなのだろうけれど。
多様性を認め合おうという意識が強調される今、どちらの方が生物として自然なのだろうと思う。
異分子ははじき出し、自分の遺伝子をより強く、より生殖に有利になるように守ってゆく生き方。
さまざまな在り方を受容し、どんな風に世界が変化してもそれなりに適応可能な遺伝子を残しておく生き方。

人間も生物の一つでしかないということ

森で生まれて、そこでの生活のすべてが生まれた時の当たり前に存在する人たち。この物語で彼らの暮らしを見ていると、人間って小さいなあと思う。同時に、こういう、自然相手の色々を生業としている人たちを、偉大だと思う。
科学や技術が発達して、色んなことを掌握しているような気がしてしまうこともあるけど、自然というものの不思議さを、自然への畏怖を、自然と共に暮らしている人たちへの尊敬を、忘れてはいけないと思う。人間なんかには分からない道理だって、きっとそこには存在している。
人間だけを勘定に入れた社会というものだって、個々の動きが重なり合って、理解を超える大きな動きが生まれたりする。
だから、人間だけで出来ているわけではないこの世界で、人間が理解しコントロールできることなんて、きっと本当は、ほんの、ほんの一部だと思う。

先日電車の中で電子広告をぼんやりと眺めていると「みんなで守ろう地球の未来」という言葉が出てきた。それを見て、それは違うんじゃなかろうか、と思ってしまった。地球って人間が守るとかいう次元じゃないのではないか、と。人類が生まれるよりはるか昔から地球は存在してるし、未来で人類が滅びようと地球は存在してるやろって。太陽に飲み込まれるとかはあるかもしれないけどさ。
そんな大きな存在を守ろうって、無理でしょう。スケールはすごく適当だけど、皮膚の常在菌が私を守ろうって言ってるようなものなのではないか。守りたいのは地球の未来ではなく、人間が住める環境なのではないのか。
そういうの、妙に引っかかってしまって、でもそれを人には話さないので、ここに書いておきます (補足しておきますが、環境を大切にするためにみんなで頑張っていこうとか、そういうことはポジティブにとらえている方だと思います。他者、および、その他もろもろ、自分以外の存在への配慮を忘れないでいたいとは思うので。あくまでも言葉に引っかかってしまっただけ)。

まあともかく、個としての自分の行いって、どのくらい意味があるんだろうなぁと思ったりするのです。
自然って、理解や想像の範囲を超えていて怖いよなぁ。
でも多分そこが面白かったりもするんだろうけど。

本日はここまでです。読んでくださってありがとうございます。
ちなみに私はアレルギー検査項目にあるほぼすべての花粉に対しアレルギー陽性反応が出る人間なので、山では暮らせないと思います。都会で暮らしていても花粉の季節は微熱状態が続くのに。山に住んだら、多分耐えられません。
それから虫など割と平気な方ですが、この話に出てくるでっかいダニとヒルは想像するだけで変な声が出そうになります。

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