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【読書記録】ムゲンのi

今回は、知念実希人さんの"ムゲンのi"です。

少し不思議で、少し厳しくて、それでいてとても優しい物語だった。

読む前に

知念さんの本は、大学生の頃にお世話になっていたバイト先の先輩から、誕生日だったか、プレゼントにもらったことがある (死神のやつです)。すごく理論的かつリアリティのある話で、物語としても論理的なのに、設定が非現実的だったりして、脳みそのどの部分を使って読めばいいのだろうという感覚を持ちながら読んだ。

初めて読んで

この作品の視点は、猫でも犬でもなく人間 (語り手が猫のver.と犬のver.の2作しか読んだことがないもので)。それでも読みながら、ファンタジーなのか?ミステリなのか?なんなんだ?と思っていた。読み進めるうちに、気が付けばそんなことどうでもよくなるくらいにムゲンの世界に引き込まれていた。
最後の100ページくらいは、ずっと”ほー-”とか”はあー-”とか”すげえー-”とか言いながら読んだ。

人間の無意識

人間の、意識、無意識、って不思議だし面白いな、と思う。自分が見ているつもりはなくても目に入っていたものが、思考に影響を与えていたりする。
(今、五年ほど前に出版された”脳の意識 機械の意識”という本を読んでいます、とても面白いです)

特に夢の中って、自分が生み出しているはずの世界なのに、自分でコントロールできないのがすごく不思議だ。
自分で生み出している世界なのに、成す術なく誰かに襲われたり、自分が生み出している世界なのに、その中で何かに絶望していたり。

今日の仕事の続きをしている夢もあれば、長らく思い出すこともなかった地元の知り合いが出てくることもある。自分の頭の中で作っているはずなのに、見知らぬ土地にいたりもする。そういう時、なにが私にその夢を見させているんだろうと思う。遠い記憶から友人を連れてきたり、見たこともない景色を生み出したり、無意識下でどうしてそんなことが出来るのか。

夢の実感

実は他の人がどんな夢見ているかって、本当の意味では知らないんだよな、と思う。自分が見ている夢も、目覚めてから思い出すそれが、本当に見た夢だったか定かでないのだから。人によって、その世界の明度とか彩度とか、見え方とか、違うんだろうか。

私の夢の中にはたいてい、音も色もあるけれど、においがあることは少ない (とてもまれに、あることもある)。体がベッドの中にいることは確かなのに、歩いたり走ったりする感覚がある。

個人的に歯が抜ける夢をよく見るのだけれど、本当にリアルで、ちゃんと自分の口の中に存在している歯に対して、失われた、”なくなった”という感覚がなぜどうやって生み出されているのかと思う。(少なくとも現状の) VRなんかよりはよっぽど、リアルな身体感覚だと思う。
あれは、かつて乳歯が抜けたことが体感としてあるからあんなにもリアルに感じられるのだろうか。例えば視覚や聴覚に障害を持つ人の夢は、やはり視覚情報や聴覚情報が欠けているのだろうか。例えば身体的に不自由で一度も歩いたことのない人は、歩く夢は見られないのだろうか。

夢から醒めて、夢でよかったと胸をなでおろすこともあれば (ちゃんと歯が生えていた時とか)、なんだ夢だったのかとがっかりすることもある (合格したはずの試験がまだ終わってなかった時とか)。ここ最近で言えば、一度夢の中で会社のプレゼンを終わらせたのに起きたらその日が本番だったということがあった。あれは微妙に損した気分になった。

なにから身を守るのか

この物語に出てくる、突発性嗜眠症候群と称される病気。心が耐えられなくなった時に、夢の中に逃げ込む、夢の中にとらわれてしまう。
それは果たして生物としての防御機能として正しいのだろうか。眠りの中に居続けることは、エネルギーを自分で摂取することも外界の危機を感知することもできなくなる。でも逆に、外界に存在している危機にさらされなくて済むということでもある。
人間であるからこそこういう設定が成立するのかもしれないと思う。
人間にとっての、”危機”というものは、生を失うことではなくなっているのかもしれない。

今回はここまでです。
時々朝起きた直後に、めちゃくちゃ懐かしい曲を、最近聞いたわけでもないのに口ずさんでしまってたりするんですが、あれって何なんでしょうね。夢の中でその頃に戻ってたりするんかな。覚えてないだけで。

以上、読んでくださった方ありがとうございました。

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