転職エントリ③|DeNA to ナレッジワーク|ナレッジワークという船が持つ4つのコンパス
はじめに
2014年に新卒で入社して8年間勤めたDeNAを退職し、ナレッジワークという会社に転職する。
退職エントリではDeNAでの経験も中心に自己紹介もさせて頂いているので、興味があればご一読願いたい。
転職エントリについては長文となるので、以下のように3つの記事に分けて書いている。
僕の個人的な転職活動経緯に興味がある方は記事①を、イネーブルメントという概念・市場に興味がある方は記事②を、ナレッジワークという会社に興味がある方は当記事③を中心に読んで頂ければ幸いだ。
これまで、どのようにナレッジワークと出会ったか、ナレッジワークがどのような市場に挑戦しているかを書いてきたが、最後に、僕がなぜナレッジワークを選んだかを当記事で書き残したい。
なぜナレッジワークを選んだか
最終的になぜナレッジワークを選んだか。
一言で言えば、「ナレッジワークなら遠くへ行ける」と確信したからだ。
そして、もちろん、自分がナレッジワークという船をより遠くへ届けるように汗水垂らして漕いでゆくことに、気持ちが奮い立ったからだ。
転職活動では3社ほどご縁を頂いたが、困ったことにいずれも当初の転職活動軸(ドメイン・フェーズ・カルチャー)を満たしていた。身に余る素晴らしいご縁に恵まれた。
それでも最後にナレッジワークを選んだ理由は、大別すると2つだ。
この2つの要素を以て、冒頭の「ナレッジワークなら遠くに行ける」という確信に至った。
1もさることながら、僕はことさら2に感銘を受けてナレッジワークに入社を決めたので、ここでは2について綴らせて頂きたい。
ナレッジワークという船が持つ4つのコンパス
一丁前に語るのも恐れ多いのだが、僕は経営のサステナビリティとスケーラビリティの維持・向上には、経営チームのバランス感覚の高さが極めて重要なファクターだと考えている。
そして、ナレッジワークはそのバランスを高い次元で保つために重要な4つのコンパスを有していると僕は思った。
そのコンパスは、何か唯一の方向を示すものではなく、常にそのバランスが高い次元で保てているのかを僕らに気づかせてくれる。
その4つのコンパスの極に書かれているのはそれぞれ以下の言葉だ。
資本市場に引っ張られ顧客を置き去りにする、ビジネス偏重でものづくりに投資出来ない、合理に走り組織感情をおざなりにする、世のためと耳触りの良い言葉を掲げるも世に出すプロダクトの美学にこだわりきれない etc…
何度も述べるようにまだ僕には経営を語るのはおこがましいが、少なくともそういった歯車のズレで破綻した事業や組織は皆さんも頭に浮かぶのではないだろうか。
このコンパスは、企業が健全かつ持続的な成長を実現するべく経営のバランスを取る構造という意味で、少し拡大解釈するとガバナンスの重要機関とも考えている。
以下、ナレッジワークで機能する4つのコンパスについて、かいつまんで紹介する。
第1のコンパス: 商品市場・資本市場・労働市場
商品(生産物)市場・資本市場・労働市場の3つの市場といかに対峙するか。
いわずもがな、ステークホルダーと共存共栄の良好な関係を維持・向上するためのガバナンスの話だ。
経営チームを筆頭にメンバーも含めて、各市場をおざなりにせず真摯に向き合うスタンスは重要だ。しかし、スタンスだけでなく、各市場とwin-winな関係を築く仕組みの構築にこそ、そのスタンスは表れると思う。
まず、商品市場との対峙姿勢・構造については、SaaSというビジネスモデルそのものが、ソフトウェア業界において顧客との共存共栄のために取りうる現段階での最善の手段だと思う。
顧客の中長期的かつ本質的な価値と、提供側のインセンティブが美しく連動しているからだ。そこに提供側の欺瞞が忍び込む余地は限りなく小さい。
続いて、資本市場との対峙姿勢・構造についてだ。
まさにこの点にこそ、ナレッジワークのガバナンスへの強いこだわりを見出した。
徹底的に資本市場とフェアに向き合い、保身を許さない構造を自ら構築しているのだ。
まず、ナレッジワークは役員の過半数を社外取締役が担っているとのことだ。グローバルではスタンダードになりつつある一方で、国内ではまだそのようなガバナンス体制を敷いている企業は多くないと認識している。そんな中で、ナレッジワークは創業day1から資本市場に厳しい視線を向けて頂くことで、高い自浄機能を実装しているのだ。
そして、何より驚いたのが、もしも創業CEOの麻野さんが代表取締役を解任された場合は、その持ち株を後任に譲渡する投資契約を締結しているとのことだった。
つまり、資本市場の要請にきちんと応える必要性・インセンティブ構造を強固にすることで、ガバナンスの徹底度を上げているのだ。
最後に、労働市場との対峙姿勢・構造についてだ。
まず、SOを上限20%まで発行出来るように投資契約を結んでいる。一般的にSOプールは10-15%程度と言われている中で、とりわけ労働市場への還元を志向していると言える。(※これは株主の理解あってこそ実現していることもでもある)
さらに、まだ構想ともいえないような話ではあるが、「従業員が取締役を解任・選任出来るような仕組みを構築したい」というのだ。論点は多く慎重に検討する必要があるアイディアだが、それほどまでに労働市場とのフェアな関係性にこだわっていることに驚いた。
以上のように、経営チームの保身の仕組みを廃し、各ステークホルダーとwin-winな関係を構築することへの並々ならぬ意志と、そのためのインセンティブ設計がナレッジワークにはあった。これほどガバナンスにこだわりを持つスタートアップが他にあろうか。
第2のコンパス: Business・Technology・Creative
ナレッジワークはBusiness・Technology・Creativeが三位一体となってバランスしていることに強くこだわりがある会社だ。
こだわりというのは以下2つだ。
まず、プロフェッショナルを集めることについて。
ビジネスパーソンでありCEOの麻野さんの名が目立つが、Google出身のCTOの川中さんや、Goodpatch出身のデザインマネージャー小川さんを筆頭に、Technology・Creativeのハイレベルなプロフェッショナルがとても多い会社だ。
前の記事でも紹介した通り、ナレッジワークはワークエクスペリエンス(働く体験・体感)の向上をプロダクト開発の重要なコンセプトにしている。
全世界で使われているto Cサービスのような体験・体感を届けるには、Technologyはもちろん、いわんやCreativeが抜きん出て秀でた能力を発揮する必要がある。
ゆえに、職人のようなプロフェッショナル達に惜しみない待遇と、その力を発揮出来る環境を用意している。
続いてBusiness・Technology・Creativeのコラボレーションについて。
SaaSビジネスは、プロダクトとビジネスのバリューチェーンが連なることで顧客に高い価値を提供することが出来る。
ゆえに、ことさらにBusiness・Technology・Creativeの連携・連動が重要だ。
だからこそ、プロダクト開発においてもビジネスと開発を分断することなく、企画の早い段階から膝を突き合わせて議論している。
また、全社のMonthly Sessionや、四半期に一回すべての事業活動・開発活動をストップして実施する2dayの全社四半期Kick Offなど、高いコミュニケーションコストを払ってでも、全社が連動することに意志を込めている。
第3のコンパス: 情理・合理
続いては、情理と合理というコンパスだ。
特に、ナレッジワークではその2つはそれぞれ以下のように強く発揮されていると感じた。
まず合理を利かせている事業作りの領域においては、記事①でも記載した通り、『Zero to One(ピーター・ティール著)』に記されているような圧倒的なイノベーションを実現するための戦略を忠実に組み立ている。
また、SaaSビジネスならではだが、ARRを中心にKPIを分解し、事業数値ベースで緻密に業務のPDCAを回そうとしている。
一方、情理を利かせている組織作りの領域においては、「イネーブルメント」という大義に、高い活力で向き合えるようにオーバーとも思えるほど社内でコミュニケーションを交わしている。
合理なくして事業の成功なく、情理なくして組織を動かすことは出来ない。
その両輪を常に意識しながら動かそうとする意志をナレッジワークからは感じた。
そして、ナレッジワークではそのバランスをきちんと保つために、以下の4象限のフレームワークに則ってマネジメントが為されているとのことだ。
マネジメントが美しく体系化されたこのフレームワークを実践的に扱えていることに大変感銘を受けた。
第4のコンパス:真・善・美
最後のコンパスが真・善・美である。
僕は不勉強なので受験勉強以来長らく記憶の果てに去ってしまっていたが、プラトンのイデア論に起源を持ち、人間の理想状態を示す言葉だそうだ。
僕の浅い理解だが、真・善・美とはそれぞれ、嘘がなく正しいこと、倫理的に良いこと、調和が取れて美しいことを指す。
そして、図らずしてナレッジワークは概念的に近しいStyle(≒行動指針)を有している。それが以下の3つだ。
このStyleの"ABC"は事業と組織の特性から導き出したものとのことなので偶然ではあるが、Act for peopleは「善」、Be trueは「真」、Craftsmanshipは「美」と対応しているように感じられる。
これらは日常行動レベルでは一見当たり前なことを示す。
しかし、その徹底度合いは入社前ながらナレッジワークメンバーと触れる中でも感銘を受けた。
また、経営判断レベルになると以下のような解釈になる。
語感を含めて非常にシンプルだが、本質的だと感じた。
そして、シンプルゆえに経営からメンバーまで本当に深く浸透している。
(人事の身からすると、全社員が行動指針をそらで唱えられることがどれほど奇跡的なことか)
このStyleの徹底が、ナレッジワークの長きに渡る成長を支えると信じている。
ナレッジワークという船は遥か遠くへと届く
「4つのコンパス」と称して、僕が感じたナレッジワークの極めて稀有なバランス感覚を紹介してきた。
やや抽象的でイメージしづらいとは思うが、欠けると冒頭でも述べた通り必ず以下のような歪みが生まれるはずだ。
どんなスタートアップも、迎える課題は未知で想像は付かないが、少なくともナレッジワークはその課題に対して高いバランスで適応し、必ずや乗り越えていけると信じている。
最後に、未来の仲間へ
3つの記事にまたがって駄文を書き連ねてきたが、以上が僕がナレッジワークに出会い、入社を決めた経緯だ。
ここまで読んで下さったあなたにとって、何か琴線に触れるものがあったなら、世に類を見ない偉大なプロダクト・組織を一緒に作ることに興味を持って頂けたら嬉しい。
そして、「イネーブルメントのモデルケースを示す」ことが、僕がHR Managerとして入社後に取り組むミッションだ。
実は入社に先立って業務委託でjoinしているが、既に取り掛かりたいお題に溢れ、どうしたものかと呆然としている(笑)。
新卒採用や中途採用を中心に、一緒にHRの仕事に取り組んでくださる方を探しているので、ご興味があれば是非お声掛け頂きたい!
スタートアップは1年も経てば大きくフェーズも移ろいゆく。組織規模20名余りというこの希少な"チャプター"を経験出来るのは今だけだ。
HRに限らず、そして、僕と久々に話したいという知人も含めて、是非お話出来れば嬉しい。
それでは、また。
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