「僕らの世代の音楽」がもともと共通じゃないから逆にいい。

 彼氏が教えてくれたLPというシンガーソングライターの「Lost On You」という曲がもの凄くよくて、はまってしまった。シンガーとしては遅いデビューだったそうで、あまりたくさんCDが出ていないのだが、先日2枚購入してしまった。

 彼氏も知らないシンガーだったそうだ。ふと流れている曲を聴いて、あれ、これいい、誰?と思って、探したそうである。

 そういう素敵な曲を教えてくれる彼氏、いい。

 彼氏は music is my love、みたいな人で、傍から見ていてもほんとに好きだなー、と思うが、当然のように聴くのは洋楽だ。わたしは彼氏がこの曲知ってる?と訊いてくる曲をことごとく知らず、ええー、トーコちゃんいつの時代の人ー?と言われたりもしたのだが、そもそも彼氏の言う music in my generation が1960年代だ(勿論、今の時代の音楽もよく聴いてるけど)。

 トーコはあんまり僕らの音楽を知らない、と思ったのかどうか、彼氏はyoutube で僕のジェネレイションの音楽をいろいろ聴かせてくれた。ジミ・ヘンドリックスとか、ピンク・フロイドとか、ウッドストックのフェスとか。歳がばれそう。彼氏とわたしは20歳近く離れている。

 そこで分かったけど、わたしはあまり聴いていなかっただけで、彼のジェネレイションの音楽は好きだ。今の日本のポップスよりずっと。

 よく、年の差カップルのあるあるで、流行ってた音楽とかTV番組の話が合わない、というのを聞くけど、わたしはむしろ国も世代も共通じゃなくてよかった、と思っている。どうしてかというと、子どもの頃、そもそも流行りの音楽とかTVとか、聴きも見もしなかったからだ。

 子どもの頃、戸川純にはまっていた。

 小学生の頃は、自室にこもって電気を暗くして「蛹化の女」を聴くのが夢だった(自分の部屋がなかったので)。

 そんな訳なので、同世代の人たちと、ジャニーズで誰が好きだったかとかおニャン子がとかベストテンとトップテンはどっちがとかそんな話になると、曖昧な笑みを浮かべてもにゃもにゃせざるを得なくなってしまう。あれはほんとに困るし、居心地悪い。わたしの歳もばれそうですね。

 大人になってもそういう街道を走っていたので、今車の中で流している音楽は、戸川純、YAPOOS、Aunt Sally、MOST、P-MODEL というラインナップだ(新しい方だと、LOVE PSYCHEDELICO と SEKAINO OWARI もある)。それに、彼氏に聴かせてもらってめっちゃかっこいい!と思ったので、ジミ・ヘンドリックスが加わり、さらに先ほどのLPが加わった。あと、クラシックも聴く。申し訳ないほどに、日本のメジャーシーンの音楽は聴かない。

 なので彼氏が、世代という話で言えば、僕のソウルミュージックとか言って鳥羽一郎とか聴かせてくる人じゃなくてよかったなと思うし、国という話で言えば、EXILE最高!とか三代目が、とか言い出さなくてよかったなと思う(ここで挙げた皆さんをディスる訳じゃないのですが)。彼氏の経営するお店に来る若いお客さんたちは、みんな EXILE EXILE 言うそうですよ。

 しかし、戸川純が大好き、とまだ彼氏に言えないでいる。以前一度、トーコちゃんはどんな音楽が好き?と訊かれた時に、何と説明しようか、と一瞬迷ったら、話が別の方向に流れてしまって、言いそびれてしまった。

 どうしよう。

 メジャーシーンでは有名じゃないけどアンダーグラウンドでマニアックなシーンではむしろメジャー寄りで超有名人、と英語でどう説明すればいいかよく分からないし、歌詞の日本語が難しくて強烈なので訳しづらいし、youtube で彼女が巫女さんの衣装を着て「牛のように豚のように殺してもいい」とか歌っている姿を見せたら、どんな感想が出てくるか分からない。

 いつかは多分言うんだけど、そうしたら、Wow!Crazy な音楽だね!くらいに褒めてくれたらいいんだけどなあ。

アマゾンギフト券を使わないので、どうぞサポートはおやめいただくか、或いは1,000円以上で応援くださいませ。我が儘恐縮です。