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004:「産める年齢のうちに結婚しなきゃ!」と焦るより、「子どものいない人生」について考えてみよう。【スピ婚】

 前回の【スピ婚】、『003:「婚活していることがバレたら恥ずかしい」より、婚活をしていることを隠したまま結婚を決めてしまう方が怖ろしい。』から大分時間が空いてしまいました。お待たせしました、【スピ婚】再開します!今後、基本的に週1回、土曜日に更新していきたいと思っています。今日は日曜日ですけどね!

 さて、「結婚するならどんな人を選べばいいの?」の前段階、「そもそも、あなたにとっての結婚とは何か、考えてみよう」を延々とやっておりますが、もう少し続けます。今回のテーマは「結婚と子ども」。おそらく女子の人生、特に30を越えたくらいの時、わたしたち一度はこの件で心騒がすのではないでしょうか。「子どもを持つんなら、そろそろ結婚しないとやばいのでは……」というやつ。「年を取ると妊娠しづらくなる」、最近のわたしたち、相当叩き込まれていますからね。ですが「妊娠できるうちにできるだけ早く結婚!じゃあ婚活しなきゃ!」と走り出す前に、ひとまず立ち止まって考えてみたい。「急いで結婚して子どもを産むのが目的か?」ということを。

 まず、「急いで結婚したら子どもを持てるのか?」について考えてみたいと思います。「年齢を重ねると妊娠しにくくなる」ことのデータは、皆さんもどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。例えば、一般社団法人日本生殖学会は、不妊に関するデータを公表しています(「不妊症Q&A」)。ここでは、年齢と妊孕力の変化のデータや、生殖補助医療を行った時の妊娠率や出産率、流産率と年齢の関係、母親の年齢別の死産や新生児死亡の件数のデータなどが示されています。

「妊孕力」というのは「妊娠できる力」「妊娠する能力」という意味です。わたしたち、一番知りたいところはそこなのではと思います。こちらの「不妊症Q&A」では「妊孕率」のグラフを示していますが、これは、「避妊法が確立されていない17~20世紀のアメリカ、ヨーロッパ、イランなど10か所における女性1000人あたりの出生数を元に、20-24歳の出生数を100として計算した値」をグラフ化しています。「えっ、それ現代日本の女性に、『年齢と妊孕力の関係です!』って示しちゃうの」と素人ながら若干心配になりました。また、2015年高校向けに全国配布された保健科目用の副教材で、22歳をピークに妊娠しやすさが急激に低下するというグラフが掲載されましたが、このグラフの信用性は専門家から疑念を示されています(「非科学的知識の広がりと専門家の責任−高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと」田中重人2017)。

 またこれらのデータは、年齢の区切りごとにその年代の女性を母集団にとって「全体として、年齢が上がると妊娠・出産がしづらくなる傾向がある」ということを言っている訳であって、例えばあなた個人に当てはめて、「あなたは20代のうちはほぼ100%妊娠するが、40代になると4割の確率でしか妊娠できない」と言っている訳ではありません。

 要するに、実際生物学的な意味で女性の妊孕力が年齢にどれだけ左右されるかは、まだ科学的に証明されていませんし、あなたに限って言うと、あなたの一生を年齢で区切ってどの年齢の時にどのくらい妊娠する確率が高いか低いか、みたいなことは、誰にも当てられないのです。あなたは20代でも妊娠が難しい可能性はありますし、同時に40歳を過ぎても妊娠する可能性もあります。

 振り返ってみますと、わたしが38歳で結婚した時、妊娠可能性についての意識は薄らぼんやりしていて、避妊しなければ簡単にできるような気がしていました。今にして思うと薄らぼんやりしすぎだったと痛感しますが、ともあれ、やっと焦りだし病院に行き、排卵検査薬を使ったタイミング法を始めたけれどもなかなかできず、そうこうしているうちにすったもんだがあって、結局間もなく離婚してしまいました。もっと若いうちに結婚しとくんだったなあ、と痛切に思いましたがその一方で、自分がそういう羽目になってみると周りで妊娠に苦労している人たちの姿が見えてくるもので、そうやって気づきだすと、若けりゃできるというものでもなかったりするのですよね。結婚が遅かった訳でもないのに長いこと不妊治療してやっと授かった友人もいますし、かと思うと、年上のお友達からは、姪っ子さんが晩婚で40歳で初産した、という話も聞きました。

 結局、現代の医学では、こうすれば確実に妊娠できます、ということは断言できません。避妊の方は、きちんとやれば100%に近い数値で妊娠を防げるのですが。ならば「子どもが欲しい!急いで結婚しなきゃ!」と焦るよりも、とっとと産婦人科に行って自分の不妊因子をチェックした方がよくないか。それに自分に問題がなかったとしても、不妊には男性側と女性側の相性の問題もあるし、男性側の原因も50%程度はあるし、検査してもよく分からない原因不明の不妊もある。それだけ不確定要素も多いのですよ。

 そこでむしろ、ここからが本題です。わたしは、「じゃあ少しでも子どもを持つ確率を上げるためには、どうしたらいいんだ」という方向には持って行きたくありません。結局はここに行きつく。「子どもを持つために結婚するのですか?」というところ。結婚したら子どもが欲しい、と思うのは自然なことだと思います。でも、ここまででお話してきたように子どもができないことも起こりますし、それに、子どもができたとしたって、子どもと一緒にいる時間より、夫と一緒にいる時間の方が長いんですよ?子どもが独立したら、晩年は必ず夫と二人っきりになる。だとしたら、「急いで子ども!」と思うあまり、人生の長い時間を一緒に過ごす相手かどうかを深く考えずに結婚してしまったら、それは不幸なことではないのでしょうか。

 わたしの申し上げたいことはまず、「自分の年齢」「子ども欲しい願望」「婚期」そこいら辺を一直線に結び付けて、結婚を焦るのはやめよう、ということです。そこいら辺は一度、分けて考えよう。若いうちに結婚したって、子どもができないこともある。また、晩婚してもできることもある。

 そして何より強く申し上げたいのが、結婚する前に「子どものいない人生」を考えておいた方がいい、ということです。あるいは、「子どもができなかった時どうするか」ということ。

「もし子どもができなかったら」を考えると、いろいろな選択肢が出てきます。不妊治療をするのかしないのか。するとしたらどこまでやってどこから引き返すのか。夫婦二人で生きていく道をとるのか。養子縁組を考えるのか。勿論、そういうことを考えておくと、いざそういった事態に直面した時に、がっくり心折れてしまったり途方に暮れてしまったりといった辛さを軽減できるとは思うのですが、だからあらかじめ対処法を決めておけ、と言いたい訳ではありません。「子どもができなかった時のことを考えること」、それは取りも直さず「自分は結婚に何を求めているのか」「どんな家族を作りたいと思っているのか」をあらためて考えてみることに繋がるのではないでしょうか。「当然結婚ってこういうものでしょ?」それを考え直してみること。わたしはそこが一番大事だと思います。

 そしてあなたに既に結婚を考えている男性がいる場合、一度二人で話題にしてみることをお勧めします。その時相手の男性が、「え、フツーできるでしょ」「俺は大丈夫」「やりたければ不妊治療(君が)やってもいいよ」「今はそんなこと考えたくない」などという反応だったら、そこはあなたの対処の考え時です。事と次第によっては、別れてもいいんじゃないかと、わたしは思いますよ。

 とはいえうちの元夫、結婚前に「病院でチェック済みで、20代の精子って言われた」と申告してきたんですけど、まあそれはそれで立派な行いだとは思うけど、まだ子どもを持つことについて話し合ってもいないのに単独でブライダルチェックに出かける中年男もよく考えるとキモいっていうか……それに、結婚後に子どもがなかなかできなくてわたしが産婦人科に出かけた時の無反応を考えると、その「病院でチェック済み」っていうの、どうも嘘だったような気がするんですよね。そう考えると、そのわざわざ「自己申告」っていうのがますますキモい……。その辺の目、昔のわたしは曇っていた訳ですけど、これからの女子の皆さんは賢く見分けてくださいね。

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あなたの考える「ケッコン100箇条」、是非「#スピ婚」でお寄せ下さい!

カバーフォトは、「みんなのフォトギャラリー」より、ワダシノブ/Illustrator さんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございマス!ワダさんのイラストはむしろ、「子どものいる人生」なのですけど。

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