婚活してスピード婚するのはリスクも大きいと申し上げたい。

 なんで元夫と結婚したのか?という疑問について少し取り上げたい。

 端的に言えば、多分、「結婚」したかったからだったんだろうな、と思う。

 その頃のわたしは本当にぐだぐだな女だった。体調は崩すし、仕事は失うし、小説は行き詰るし、しかも、大失恋した。好きな人に、絶縁された。

 この好きな人について、少しお話ししたい。その人のことは本当に好きで仲良しでしょっちゅう一緒にいた。そして今になれば分かるのだが、すごく、依存した。恋人にしてはいけないといわれることは全部した。嫉妬するとか、束縛するとか、別れ際に帰らないでと言い出すとか、夜中に来てと言い出すとか、それはもういろいろ。そしてこの話の一番まずいところは、わたしたちは付き合ってはいなかったというところだ(※不倫ではありません)。

 相手の負担はどんどん重くなっていき、そんな果てに仕事を辞めて東京から地元に戻ってきて、そのタイミングで縁を切られた。その頃ラインはなかったが、あったらブロックされていた案件だ。

 打撃が大きすぎて打撃だということも自覚できないくらいだったので、早く次の人を見つけなければ、と思った。もうそこそこご高齢の域に足を踏み入れていて、さらに弟が結婚を決めたので、急に結婚したくなった。

 それまでまったく結婚願望もなく生きてきて、母が持ち込まれた縁談をわたしに言わずにお断りしたくらいのレベルだ。それでも結婚したい欲は出てくるから、人生は分からない。

 そこで、婚活をした。ネットの婚活サイトを利用して、1、2か月くらいで元夫と出会い、半年くらいでプロポーズを受け、1年後には結婚した。大成功だ。

 ここで、若いお嬢様方には申し上げたい。婚活で大成功を収めても結婚には大失敗、ということもあるのだ。結婚は決してゴールではない。

 婚活というものは、えてしてスピーディであることを奨励される。ちょっとネットを検索してご覧になるといい。1年くらいで決めるのが望ましいとか、ぐずぐずと婚活市場に残る奴はいつまでも残るとか、出会って半年でゴールインして幸せとか、いくらでも出てくるから。

 しかし、ここにもうひとつの真実がある。DVは、もうこいつは自分の手の内だ、と思われないうちは、表面に現れてこないのだ。スピード婚してしまうと、相手が仮面を被っているうちに結婚する羽目になる。

 そして、その仮面を被っている期間に相手の発するDVのサインは、とても微かだ。結婚を前提に出会い、付き合いを始めたら、とてもじゃないけどその程度の違和感ではストップできない。お嬢様方、あなた方は、デートでイオンスーパーセンターに連れていかれてそこのクロックスで相手が自分のサンダルだけを買ったことに引っ掛かりを感じたからといって、婚約を破棄できますか?

 元夫の場合、DVが本格的に発現してきたのは、結婚して1年経った頃からだった。もちろんそれまで仮面を被り続けていた訳ではなくて、一緒に暮らすようになってから徐々に地が見え出していたのだが、それについてわたしは、取り繕っていたメッキが剥げていくのを見て、逆に安心した覚えがある。結婚前の元夫は「いい人」を演じてもどこかちぐはぐで違和感があって、「???」という気持ちが常に薄いヴェールのようにかかっていたのだが、結婚して素が出てくるにつれ、「ああ、実はこういう人だったのね」と腑に落ち、それで逆に好きになった。

 結婚して初めて自覚したのだが、バカで子どもっぽい男が好きなのだ。

 なので、離婚したばかりの頃は、「バカでダメでワンマンで子どもっぽくて、それでDVじゃない男がいたらなあ」と思っていた。これではむしろわたしの方がバカだ。

 そこで若いお嬢様方に申し上げたいのは、スピード婚もいいけれど、まずは相手が安心して素を出すまでお待ちなさい、ということだ。素を出した相手とこの先一生一緒にいられるか、結局、それが結婚ということだ。

 そして、もし結婚に至らなかったとしても(もしくは結婚しちゃって後で撤回したとしても!)、自分がどんな男が好きなのか、ということを自覚できると、次に生きる。

 今の彼氏は、「バカで子どもっぽくて、でもDVじゃない」キュートでファニーな男なのであります。

 

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