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When We Were Young -ver.N-

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【掌編小説集】あの頃、わたしたちは若かった―。かつて若かった女子たちへ、そして今若いさなかの女子たちへ贈る、「わたしたちはどう生きるか」。10代から40代まで、女子の生涯を織りな…
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#10代

光の粒をまぶしたみたいに/-sweet teenager 11-

「……観覧車、乗る?」
 いい加減に暗くなって、だけど別れがたくて、あたしと河野くん、どちらともなくそう言った。

 ショッピングモールと小さな遊園地が一緒になったような複合施設。放課後、制服のまま自転車で二人乗りして駆けつけて、バーガーショップでお昼を食べて、チックタックとエーグルとカラコとABCマートとユニクロを見て回って、スタバでお茶して、ゲームセンターでプリクラ撮ってユーフォーキャッチャー

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ねえハナ、聞いて/-sweet teenager 10-

ねえハナ、聞いて/-sweet teenager 10-

 朝から晩まで一緒にいたい。同じおうちに帰りたい。ねえハナ、そう思っちゃうのはどうしてなんだろうね。ハナはネコだし生まれたすぐ後からおかあさんとずっと一緒だから、そういうの分かんないかもしれない。ああ、でも昨夜初めてひとりの夜だったでしょ?分かる?そういうこと、あれが一晩限りのことじゃなくて、毎晩毎晩違うおうちで寝なきゃなんないの、そういう感じ。

 おかあさんとあの男の子は別々のおうちに住んでる

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腕時計/-sweet teenager 9-

腕時計/-sweet teenager 9-

 日曜日、あなたの家に腕時計を置いてきてしまった。くびきを解かれて、わたしの腕は、ふうわふわ。あなた、早くわたしを、縛めに来て。

 わたしの腕時計はあなたに買ってもらったもの。茶色い太い皮の、ごつい男物の時計。お付き合いを始める時に、その印に、店員さんはあなたにご自宅用でございますか、って尋ねて、あなたは店員さんにいいえ贈り物です、って答えて、店員さんはきょとんとした顔をしながら、訳が分からない

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シネマ、アローン/-sweet teenager 8-

シネマ、アローン/-sweet teenager 8-

 ひとりで観るエンターティメントがこんなに味気ないなんて。明るくなる映画館の座席で、わたしは少し呆然とする。

 ううん、つまらなかった訳じゃない。上映時間を調べて、ネットで座席を予約して、自分だけのためにお洒落をして、バスに乗る。入場券を発券して、席を確認してからポップコーンとダイエットコークを買い、さあ館内が暗くなって予告編が始まり、やがて本編がスタートする。それからの1時間数十分、時にくすっ

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晴れた日には空を仰いで/-sweet teenager 7-

晴れた日には空を仰いで/-sweet teenager 7-

(※12歳は teenager ではないんですけど、それはそれ、で)

 小学六年の夏休み最後の日に、初潮が来た。その日は水泳大会で、六年生クロールの最速一、二を争う大場のバカとの対決は、お流れになった。あたしはすごく不本意な気分でプールサイドにジャージ姿で座っていて(プールにいるのに水着じゃないなんて初めてだった!)、同じように(多分)生理中の何人かの女子と一緒に男子の冷やかしを受け(すごいムカ

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輝く日に/-sweet teenager 6-

輝く日に/-sweet teenager 6-

 待つのって嫌いじゃない。待ち合わせはいつものタリーズコーヒー、あの人今日はどんな格好して現れるのかなとか、わたしを見つけたらやっぱりさっさとお店を出るのかなとか、どこへ向かうんだろう最初はやっぱり中古レコード屋かなとかその後電気屋に行って新しい i phone のチェックかなとか、でもわたしもピアス開けたばかりだしピアス見るの付き合ってくれるかなとか、それからそれから、そう、一番最初に顔を見たら

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ピンヒールじゃなくちゃだめなの/-sweet teenager 5-

ピンヒールじゃなくちゃだめなの/-sweet teenager 5-

 意気揚々と出掛けた筈なのに、あたしはもうべそをかきかけている。道路の縁石の上、座り込んで。ヒロキが苦い顔で縁石を緩慢なリズムで蹴っている。知らない、ヒロキには分からない、今日、あたしが、ピンヒールを履かなきゃいけなかったことなんて。

 白い洗い晒しのTシャツとボーイフレンドデニム。だから足元は、ピンヒールのパンプスじゃなきゃいけなかった。男の子みたいだから、色気ないから、スニーカーでもなく、ぺ

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はちみつ/-sweet teenager 4-

はちみつ/-sweet teenager 4-

 ちいさな、口笛のような、ラインの通知音を待ってる。

 毎日毎日待っちゃう。学校で会うのに待っちゃう。たいした話もしないのに待っちゃう。5分くらいしか話さないのに待っちゃう。さっき別れたばかりなのに待っちゃう。

 なんにもない町なの。デートするところもないの。あたしたちは毎日学校に行って、顔を合わせて教室で過ごし、そして一緒に帰るの。彼は自転車を押してあたしはその左側を歩いて、時々彼はサドルに

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ハッピーバースディ /-sweet teenager 3-

 誕生日のプレゼントには公道で手をつなぎたいと思っているけどそれはフミちゃんには言ってない、去年の夏からあたしたちは付き合っているけどまだ一度も手をつないだことはない。フミちゃんと手をつないだり腕を絡めたりするのはカーテンの奥に閉じられたプリクラの機械の中で体を寄せ合う時とかコンビニのイートインコーナーで隣同士くっつき合ってひとつのスマホを覗き込む時とかそんなことしてもおかしくない時。とてもとても

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夕日・イン・ラヴ /-sweet teenager 2-

夕日・イン・ラヴ /-sweet teenager 2-

 夕暮れ、空が茜色に染まる頃、あたしの胸は高鳴る。部屋で遊んでいたウェルシュ・コーギーのペスを引っ張り出して(ペスごめん!)、
「おかあさーん、ペスの散歩行ってくるね!」
なんて言って、ペスのダイエット散歩にかこつけて外に出る。
 いや、コーギーが太りやすい体質なのはほんとだし、食事と運動の管理が必要なのもほんとだけど、だけど、目的は、それだけじゃない訳で訳で訳で。

 夕暮れの河川敷をペスと歩く

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ショッキングピンク・マグ /-sweet teenager 1-

ショッキングピンク・マグ /-sweet teenager 1-

 終業のベルが鳴る。あたしは職員室に突っ走る。今日は職員室の掃除当番の日。お盆を死守、先生たちの湯のみ洗い係死守、現国のオクガキの湯のみ死守。

 あたしはオクガキのことならなんでも知ってる。毎日缶ビールを三缶飲むくせに(コンビニでバイト中の澄ちゃん情報)、ジャージのポッケには味覚糖のいちごキャンディ忍ばせてること、いつも汚いカッコしてるくせに、去年のバレンタインディにはチョコ十六個もらってたこと

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