2024.03.26 「フマキラー v. アース製薬」 知財高裁令和5年(行ケ)10057 ― 優先権主張の効果、補正・訂正要件、実施可能要件の交差点 ―
Summary
本件は、フマキラー(原告)が、アース製薬(被告)が特許権者である特許第6539407号に対する無効請求不成立審決の取消しを求めた事案であり、実施例補充型の国内優先権主張の効果が認められるかどうかが実質的な争点であった。
知財高裁は、「人工乳首事件」東京高裁判決の説示を踏襲しつつ、「後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨とする技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項を超える」ものか否かという判断はその関係において「実施可能であるかを判断するものと解される」と一歩踏み込んだ。
本記事は、本件判決を簡単に紹介しつつ、優先権主張の効果は、補正されたものであると仮定した場合に「新規事項の追加となる場合」は認めないとしているプラクティスが定着しているところ、「実施可能であるかを判断する」との本件での判示や、他の事件判決も取り上げながら、優先権主張の効果、補正・訂正要件、実施可能要件のそれぞれが絡み合って複雑に交差している状況の交通整理が必要なのではないか・・・とまとまりのない思いついたままの感想を述べるものである。
珈琲☕一杯分?の暇つぶしにいかがでしょうか。
※ 当記事は法的助言を与えるものではありません。全ての情報はその正確性と現在の適用可能性を再確認する必要があります。
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