【孤独で不安なあなたへ】自由からの逃走/フロム
自由は素晴らしい。こうしてnoteで考えたことを表現できるのも、好きなところに旅行できるのも、すべて先人たちが自由を獲得してくれたおかげである。
一方で、自由であるということは将来への不安が付き物である。周囲を見回すと、その不安につけ込まれて、転職や自己啓発や投資などに駆り立てられている人が多いように感じる。
フロムの著作『自由からの逃走』は、「自由」の功罪を見つめ直し、社会を逞しく生き抜こうと勇気付けられる名著であった。本作を読んでかんがえたことをシェアしたい。
内容の要約は至る所で目にすることができるが、改めてまとめると概ね以下の通りである。
二点内容の妥当性に疑問を感じたので、掘り下げたい。
1.社会システムの変革は現実的か
フロムは以下のように述べて、フロイトの理論を批判している。
しかし、これはフロム自身にも当てはまるのではないか?
反抗期という一過性の時期を、社会の一般的な法則として措定していること。歴史が一方通行的に進むという世界観や、人間と動物の違いを強調する記述から垣間見えるユダヤ教・キリスト教の影響。作中では当たり前のように書かれているが、必ずしも当然視はできないと感じる。
思うに、結論ありきな側面が多分にあったのではないか。フロムは、マルクスの資本主義批判にフロイトの精神分析の理論を融合させた人物である。文章で前面に押し出されてはいないが、資本主義に対する批判が本書の裏テーマとなっていると推測する。
しかし、資本主義というシステムに責任を負わせることは適切だとは思わない。人間の性質が変わらない以上、社会の仕組みは変わらないのではないか。土地を媒介として領主が支配する中世から、金銭を媒介として企業が支配する資本主義へと移行したものの、結局人が人を支配するという構造は変わっていない。社会システムを丸ごと入れ替えるより、個人の行動を少しずつ変えるほうが得策だと思う。
2.結論は実践可能か
本書も、社会の変遷に触れつつも最終的には個人の自助努力を勧める形で着地している。
結論である、自発的に自然や人と関わること(=愛)。これは全くの正論であると思う。しかし、窮乏している人ほど実践が難しい。卑近な例を挙げると、仕事の締め切りに追われている時は、目の前のタスクを処理することで精一杯だ。中長期的に業務を改善しようと考えたり、同僚と情報交換するどころではない。自発性の発揮には余裕が必要なのである。個人の努力に委ねてしまうと、豊かな人がより豊かになって、貧しい人がより貧しくなりかねない。だから、本書のメッセージは、本当に助けを必要としている人には届かないのではないか、というもどかしさを感じる。
低いハードルから始めよう
では、将来に漠然とした不安がある、希望が持てない、という閉塞した状態からはどう脱出すればよいのだろうか?
一日一つでいいから、気になることや新しいことをしてみることが一つの打開策となると思う。ハードルは低ければ低いほどいい。
例えば、こういったことでも十分である。
コンビニで新しい飲料を買ってみる
一本隣の道を通って通勤してみる
いつもの定食屋で、普段頼まないメニューを頼んでみる
始めは何も感じないかも知れないが、ああしたい、こうしたい、という思いがきっと少しずつ出てくるはずである。焦らなくていいから、その時を気長に待とう。それがフロムのいうところの「真の自由」の端緒である。
ぜひ実際に手にとって読んでみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?