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地方銀行の行員は、メガで通用する

こんにちは、常盤三千太(ときわみちた)です。
昨年、約10年間務めた第二地銀を退職し、某メガバンクへ転職しました。

この記事では、
地銀に勤めていてメガへの転職を考えている方はもちろんですが、銀行以外の業界への転職を考えている方、
地銀でのキャリアにモヤモヤを感じている方にとっても、ご自身の「価値」を感じて頂けるものとなっていると思います。
最後までお読みいただければ、必ずや今後のキャリアに役立つと思いますので、お付き合いいただければと思います。

・・・

1.はじめに


約10年前、私は第二地銀に新卒で入行しました。

学生時代はそこそこの大学で、部活も一生懸命やっていたので、就職活動もなんとかなるだろうと気楽に構えてました。第一志望は銀行業界で「どこかメガバンクに引っ掛かればいいや」と、舐め切った態度で選考を受けました。

結果は全敗。
その後苦し紛れに受けまくった証券会社も面接でことごとく落ち、自分の甘さを痛感しました。7月に入り内定は無し。蒸し暑さとリクルートスーツが心身を疲弊させていきました。

そんな時「まだ選考やってる銀行あるみたいだよ」と、
部活のOBが教えてくれました。まさに藁をもすがる想いで選考を受け、どうにか内定をもらったのが、
新卒で入行した第二地銀です。

入行初日こそ「せっかく入行したし、役員目指して頑張るぞ…!」と意気込んでいましたが、支店配属から1か月もすると、毎日辞めたい日々が続きました。

外回りの営業になってから辞めたい気持ちは加速していきましたが、5年目くらいから「どうせ辞めても行くところなんてない」「大した働きをしていないのにこれだけ給料をもらっている、転職したら絶対給与が下がる」などと同期と話しながら、”この銀行に入った自分”を正当化しようとしていました。

振り返れば、この時期は精神的に最も危うく、完全な思考停止状態に陥っていました。毎日、いかに上司に怒られないようにするか、案件をとってこれない理由をいかに説明するか、の繰り返しでした。

胃はキリキリするし、日曜の夜には息が上がり、
無心で布団から這い出て、無心で通勤する日々でした。

しかしある時、ある小さい、本当に些細な気付きをきっかけに、仕事に対して、ほんの少し前向きに取り組めるようになりました。(これはまた別の機会に記事にしたいと思います)
そこから徐々に「自分が銀行で実現したいこと」の解像度が上がっていきました。自然と自分が望むキャリアも定まり、公募で有力地銀のデジタル部門へ出向したりもしました。

そして、ついには「自分の居場所はこの銀行ではない」と思い転職活動を始めました。

転職活動では、ネット銀行・政府系・メガを中心に受けました。理由は2つで、
①自分がやりたいことは、「銀行」が最も適した環境
②地銀での営業の経験は、他業態の銀行で活かせる

という想いがあったからです。

そして、某メガバンクに内定を頂き、入行することになりました。転職して日々働く中で感じるのは、小さな地銀での営業と企画の経験が、思った以上に”価値”があるということです。

前置きが長くなりましたが、ここからは「地方銀行」での経験がメガバンクは勿論、様々な所で「価値」を発揮できるということを、お伝えしたいと思います。

2.幅広い業務経験

何といってもこれです。
一言に「幅広い」と言っても、この経験はとても強いです。なんせ、幅広く銀行業務全般を経験している人間なんて、日本全国見ても地銀・信金の行員くらいだからです。

「だからなに?」と思われるかもしれないので、具体的にどのように価値があるかご説明します。

まず、「営業」についてです。
小規模であればあるほど、営業担当者は「法人」「個人」関係なく担当を持つことになります。また、中小零細企業を担当していれば、必然的に社長と家族の「個人取引」もついてきます。法人融資も投資信託も事業承継も相続税対策も法人保険も住宅ローンも、広く浅く経験していればしているほど良いです。これは、”職域”の領域でも非常に役立ちます。

メガバンクは従来、大企業や富裕層向けのビジネスに絞っていましたが、非対面のオンラインチャネルが拡大するにつれ、中小企業やオーナー企業取引に着目しています。しかし、メガバンクの行員はこの領域での営業経験が多くなく、お客様の解像度が決して高くありません。

ここで貴重なのが、地銀での現場経験です。中小零細企業の社長はどのような考え方を持っているのか、従業員とはどのような関係なのか、どのような悩みを抱えているのか。こういった「地銀行員ならだれでも知っている」ようなことが、異なる業態では価値が出てくるのです。

次に、「事務」についてです。
地銀では役割分担がされておらず、本部集中化も不十分なため、1人の行員が受付からチェックリストの起票、
オペレーションまでおこなうことも多くあります。

一方メガバンクでは、事務が担当職務ごとに細分化されすぎて、事務全体を俯瞰して把握することが非常に困難です。

例えば、従来は紙と手作業でおこなっていた事務をシステム化する際に、機能を決めるための「要件定義」というものをおこないます。この際、事務フローの開始から完了までを把握していないと、「要件定義」はできません。

「自分の銀行以外の事務フローなんて分からない」と思う方も多いと思いますが、心配ありません。むしろ、それも「価値」のひとつです。

たとえメガバンクでも、無駄が一切ない洗練された事務をおこなっているわけではありません。改善の余地が十分あります。「地銀ではこのような事務フローでおこなっていた」という経験が、改善のヒントとなることも多々あります。また、全体の事務フローが見えていると、気を付けるべきポイントや調整しなくてはならない事などを、高い視座で気づくことが出来ます。

メガバンクのように、多くの関連部署とコミュニケーションをとりながらおこなうプロジェクトでは、非常に重要になってきます。これも業務が細分化されたメガバンクの行員は、気づきにくいポイントです。

3.コスト意識


こちらは、特に本部行員の企画におけるコスト意識についてです。地銀では、限られたリソース(人・カネ)の中で、効果を求められます。そのため、”いかに効率よく効果を出すか”という面において、非常にシビアに向き合っています。

システム化の際も、なるべく要件を絞って必要なものだけに洗練させ、効果を最大化することに長けています。
メガバンクでは、大規模なプロジェクトに関与することが多いですが、予算に比較的余裕があるため、あまり使われない機能なども盛り込まれてリリースされるシステム・サービスもあります。

その点で、地銀のシビアなリソース管理経験は、メガバンクでも十二分に活かすことができます。

4.最後に


地銀の行員の方は、
決してメガバンクや他の大手地銀に引け目を感じる必要はないと思います。その銀行の規模でしか経験できないことが、きっとあるはずです。一筋縄ではいかないような、泥臭い経験が、きっと他の業態・業界で役に立つはずです。

この記事を読んで「結局、ITのポジションでないとだめなのか」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
私自身が銀行の営業職からデジタル企画の部門へキャリアチェンジしたので、どうしてもそこにフォーカスしている点は、ご容赦ください。

ただ、特に幅広い業務経験については、必ずしもITの領域だけで役立つものではないと思います。近年、他業界の金融業参入にともない、”銀行業務全般に詳しい人”のニーズは確かに高まっています。その点においても、必ずやいまのご経験は役に立つはずです。

最後に、ビル・ゲイツの有名な言葉をご紹介します。
「Banking is necessary, but banks are not. 」
ー銀行機能は必要だが、銀行は必ずしもそうではない。

皆さまが「銀行」ではなく「銀行機能」をつかさどる希少な人材として、キャリアを築いてくことを心より願っております。

以上、常盤三千太でした。

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