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TRPGいきあたりばったり2:CY_BORGでエッジ/最先端の向こう側へ。

解説:TRPGデザイナー/ゲーム翻訳者/フリーライターの朱鷺田祐介が、TRPGの話をする連載。

 朱鷺田祐介です。「アナログゲームを主戦場にするフリーライター」で1987年秋の「ウォーロック」誌7号がデビューなので、だいたい30年ちょい、この業界にいます。アナログゲームマガジン主催の秋山さんからは「TRPGの歴史」の話をしてください、というオーダーがありましたが、あんまりそんな話にならないかもしれない。
 以下、以前の記事。


サイバーでパンクな昔話を少ししようか?


 まあ、昔話をしようや。

先日のゲーム学校でした昔話。
「30年ほど前、オレがネットを始めた頃の通信速度は1200bps、ビット・パー・セカンド。キロもメガもギガもつかんよ。」
まあ、MS-DOSの時代じゃからな。

 困ったことに、そんな環境の中で、俺は「シャドウラン」に出会った。
 大学時代、SFファンだった俺は、ギブスンも「ハードワイアード」も「重力が衰えるとき」も「スキズマトリックス」もダイレクトヒット。
 SF-TRPGがサイバーでパンクなハリウッド・アクションに進化して、魔法まで取り込んだことに、違和感がなかった。
 「大魔王作戦」も読んでいたしな。

 SFの世界とリアルなミートワールドの間にでかい差があるのは知っている。1990年春、やっと9800bps、ざっくり1メガの世界には到達したものの、ネットも電話も従量制で、毎月、電話代を4万も支払っていた平成初期だが、それでも俺たち、ネットワーカーは、ハードなサイバーパンクに憧れたものだ。作品の中ほど荒れた現代じゃないが、サイバー(=ネットワーク)+パンク(貧乏)とか、自嘲しながら、サブカルの先端を生きるために走っていた。
 サイバーパンク系TRPGにもいくつかあって、「サイバーパンク2020」が最初に翻訳された。最近「RED」になって帰ってきたヤツだ。
 PCゲームもあるし、Triggerのアニメは最高にCoolだ。
 マスト見ろ。泣ける。サイバーパンクだ。

Cyberpunk Edgerunner

 「サイバーパンクRED」を遊ぶヤツは、必ず見ろ。
 こいつが、近未来のボーイ・ミーツ・ガールで、最高のサイバーパンクだ。出てくる連中は最高にホットで、かっこよくて、みんな悲しい。ダークな世界も、味わいもある。レベッカやキウィ姉さんもいいし、フィクサーのファラデーの野心も印象的だ。

そして、CY_BORG

 ずいぶん、横道にそれたが、今、超カッコいい、最新のサイバーパンクTRPGがスウェーデンから届いた。

CY_BORG

 「CY_BORG」は、最近、オレが入れ込んでいるドゥーム・メタル・ファンタジーTRPG「MÖRK BORG」のサイバーパンクバージョンである。
 とにかくカッコいい。

MÖRK BORG

 「MÖRK BORG」は、「システムは軽量、だが、世界観はヘヴィィ」で、とにかくルールブックがカッコいい。D20系のライトなファンタジーシステムで、命が超・軽い世界だが、ドゥーム・メタルのダークな世界観をぎゅっと詰め込んだ「破滅的な終末世界」の味合いが最高だ。
 こいつに、どの位、入れ込んでいるかと言えば、この影響で、戦国ドゥーム・メタル・ファンタジーTRPG「信長の黒い城」を作ってしまったほどだ。
 クラウドファンディングで300%を達成、ゲームマーケット秋には先行発売するので、ぜひ、手に取ってほしい。バッカーのみんなに感謝!

信長の黒い城

You're Already Dead Avenger.
お前はすでに死人。復讐の死人だ。
 
時は天正、第六天魔王信長が世界を焼き払う。
 
NOBUNAGA Kill All People・
End is coming!
You're Already Dead Avenger.
Burn the Nobunaga!
Burn the Honnô-ji!

 すまない、また話がそれた。
 それより重要なのは、「CY_BORG」だ。

 ついに、物理版が届いたのだ。ヒャッハ。CY_BORG物理本到着 ガッツリ入って満足Cool! これは遊びたいぞ!

キャラシート、マップまで入ったAsset-PACK

 

で、どんなゲームなんだい?


 舞台になるのは、世界の終末を予感させる20X3年、「CY」と呼ばれる謎の電脳都市。ネオ資本主義の巨大企業群が支配する街のストリートに生きるパンクになるが、世界はすでに堕落と混乱と悪意に満ちている。

「我々は、この街を焼くべきだった。一世紀前にな」

 CYニュースのヘッドラインには街のあちこちで起こる事件が流れる。
 企業に見捨てられたパンクたちは、戦う。
 生きるために、スタイルを貫くために。

 OK、こいつはCoolだ。
 フルカラーのルールブックはキレキレのイメージで満ちている。

 だが、「CY_BORG」はそこで終わらない。

OSR/ ルールは軽量、世界観はヘヴィ

 世界観がヘヴィなサイバーパンクだが、システムは超軽量。ベースは世界的にも有名なD20系と同じく「D20+修正値」で難易度(DR)以上を出せばいいという、慣れ親しんだルール系の上、ACとかレベルとか存在しない「ショートキャンペーン向き」の設計なので、気軽に遊ぶのに向いている。
 例えば、戦闘だって、「白兵ならStrengthでDR12、射撃は単発ならPresence DR12、自動火器ならAgility DR12で命中。攻撃されたらAgility DR12で回避」というシンプルルール。
 出目20でクリティカル、出目1でファンブルもあるので、なかなか楽しい。

 ここはいわゆるOSR(オールド・スクール・ルネッサンス)と呼ばれるもので、肥大化した「世界最高のTRPG」へのレジスタンスでもあったりする。

パンクを作れ

 「CY_BORG」はいわゆるD20ファンタジーTRPGの流れであるぶん、PCの命は軽いが、キャラクター作成はおおよそランダムダイスで作成できるので、さっくり作成できる。

 まあ、1体作ってみよう。
 まず、持ち物を決める。金の単位は「¤」。いわゆる国際通貨記号で、適切な通貨記号(日本の¥とか、EUの€、アメリカの$など)を表記できない時に使う。どう読むのかは知らんが、「かね」とか「単位」でいいかと。
 初期の所持金は2d6×10¤。無記名の電子貨幣(クレッドスティック)だ。

 オレのパンクの財布に80¤。

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