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TRPGいきあたりばったり0:とりあえず、TRPGの話をしようか?

解説:TRPGデザイナー/ゲーム翻訳者/フリーライターの朱鷺田祐介が、TRPGの話をする連載。それほど「ざつ」にはしないつもりですが、まあ、あまりストロングスタイルにもならない予定。

 とりあえず、TRPGの話をしようか?


 朱鷺田祐介です。自己紹介は媒体によって色々あるのですが、解説のようにTRPGデザイナーと名乗る一方で、最近、翻訳監修が多く、オリジナル作品が出ていなかったり、媒体がTRPGから遠くてもう少しわかりやすい説明が必要だったりすると、「アナログゲームを主戦場にするフリーライター」と名乗ることもあります。まあ、1987年秋の「ウォーロック」誌7号がデビューなので、だいたい30年ちょい、この業界にいます。

 アナログゲームマガジン主催の秋山さんからは、「TRPGの歴史」の話をしてください、というオーダーがありましたが、朱鷺田は、D&D育ちでもないし、国産でもかなり抜け落ちがある(買ったけれど遊んでないとか、読めてないのが積まれている)ので、俯瞰的にTRPG史を語れる立場にはありません。黎明期の件は、安田先生の本を読んでください。

 海外ゲームの翻訳によく関わっていますが、そこも偉そうには言えません。例えば、今年の春に「ザ・ループTRPG」(グラフィック社)が刊行されました。私も翻訳監修という形で参加しています。2年ほど前に、4Gamerで紹介記事も書いていますが、4Gamer編集部に、海外TRPG大好きの編集さんがいて、アナログゲームの面白いネタがあると話を振ってくれるのです。「ザ・ループTRPG」もそのひとつで、確かに読んでみると面白かったので、記事を書きました。その縁がぐるりとつながって、翻訳監修まで行けたのですが、これは翻訳チームを率いてくれた塚越冬弥さんの存在あってのことでもあります。そういう部分があり、今は、歴史とか語りたくないんですよ。そういうのは老後に取っておくか、誰か偉い人に任せます。

 私の基本スタンスは、その時の衝動で、面白そうな物をかじっていく、と、まあ自分が遊びたいゲーム(できれば、TRPGのGM)をやるなので、まあ、いきあたりばったりで話をさせていただくのがよいでしょう。その中で、老人性の迷走が始まったら、そこは笑って流してください。

 その上で、Twitterでお題募集しましょう。

ザ・ループTRPG、MÖRK BORG、Vaessen

今、スウェーデンのTRPGが熱い!


 個人的に、今、熱いのは、「ザ・ループTRPG」のフリーリーグ(Fria Ligan)社ですね。スウェーデンのメーカーということで、「ザ・ループ」以前のことはよく知らないし、日本語で翻訳が出るのは今回が初めてです。ナラティブ系の独自システム「Year Zero Engine」で新境地を切り開いているメーカーで、「ザ・ループTRPG」の英語版が大成功し、最近では「エイリアン」「ブレードランナー」のTRPG化権を取得、その他、「指輪物語」と「ホビット」の間をつなぐ「The One Ring」など話題が続いています。「ザ・ループ」のシモン・ストーレンハーグが所属しているためか、グラフィック全般が強く、ルールブックがカッコいいのもよい。北欧ホラーRPG「Vaesen」は超美麗で、ため息しかでない。

 フリーライター出身のさがと言いますか、こういうエッジっぽい会社が好きです。という訳で、この会社でも一番キレたTRPG「MÖRK BORG」を読んでいます(ヘッダーを参照)。ヘヴィメタル・ドゥーム・ファンタジーで、ダークな世界観。背表紙の紹介がこれ。いい感じにキレている。

 A doom metal album of a game.

 ゲームによるドゥーム・メタル・アルバム。

 A spiked flail to the face.

 おめえの顔に棘付きフレイルで一撃(すげえショックだ!)

 Rules light, heavy everything else.

 ルールは軽量、でも他は全部ヘヴィだ。


 おいおいおいおいおいおい。かっこいいな!

 まあ、問題は、私のヘヴィメタル経験値が少なすぎることで、端から参考バンドの曲を聞いていますが、GNOLL - Mörk Borg(2019)で、開発資金集めの際に作られたイメージ曲アルバムに到着、ダンジョン・シンセなる新境地にただ震えておりますよ。いやあ、遊びたい! GMもしたい! そのためにはちゃんと読まにゃあ。

TRPGデザイナーになりたい?


 仕事柄、こういう質問をいただくことがありますが、まあ、その場合、ジョジョの台詞で答えます。

 (本物の)ギャングは『ぶっ殺すぞ!』とは言わない。

『ぶっ殺しちまった』だ。


 これは汎用性の高い台詞です。

 TRPGデザイナーはこれからなるものじゃなくて、なっちまうものです。

 だから、まず、好きなTRPGを作ればいいんですよ。完成したら、あなたもTRPGデザイナー。その作品を持ち込むなり、自分で作って売るなりすればいい。TRPGデザイナーの大半は、「作ってからデビュー」した人です。

 作ってもデビューできませんでした?

 そういうものです。クリエーターなんて、作ったものの、日の目を見なかった原稿や作品、アイデアを山程、抱えているのが当たり前です。そこから先が勝負です。運もコネも覚悟もみーんなひっくるめて使い倒しても、商業デビューできればラッキー。それで飯が食えればラッキー。その上で3年生き残れるのは半分以下。そういう戦場への道ですよ。

 その作品はオリジナリティがありますか?

 その作品をユーザーがチョイスする理由はなんですか?

 ぶっちゃけ、提供する楽しみが、D&Dやソード・ワールド、クトゥルフ神話TRPGで出来ることなら、勝ち目は薄い訳ですよ。

 例えば、ファンタジーなら、デカブツのシリーズはたくさんあるんで、ルールはライトにして、切り口のエッジさで行きましょう。ファンタジーパンクはもうウォーハンマーがやっているので、もう一歩進めてデスメタル! それもノイズがりがり決めた奴で、ルールブックのデザインも、あれだ、デスメタルのアルバムみたいにしちまいましょう。

 いや、それ、「MÖRK BORG」だから!

 じゃあ、ミリタリー物にクトゥルフ神話だ。それ、「Delta Green」があるし、ナチスも乗っけた「Achtung Cthulhu!」もあるな。

 では流行りのナラティブ系にして、少年少女が過酷な戦時下のワルシャワで青春を送るんだ。「青灰のスカウト」ですね、わかります。

 まあ、でも、こういうゲームがそれなりに売れる可能性はある訳です。

 最近、驚いたのは、アメリカのLion Wing Publishingが、日本の同人TRPGを翻訳してPDFで販売するようになったこと。資金調達はKickstarterで行われており、すでに、「ピカレスク・ロマンTRPG」が発売されている。同様に、Silver Vine Publishingから「サモンスケートTRPG」「森と魔法のナチュラルRPG 翠緑のフローリア」などが翻訳出版されている。こういう日本の特異な作品を翻訳して欧米に持っていくのは、10年ほど前から、ボードゲームで発生しているが、TRPGというかなり言語依存が強いゲームにまでやってきたのが面白い。

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