宇宙線の旅

宇宙線とは、地球外起源の高エネルギー放射線。地球の大気に突入する以前の宇宙線を一次宇宙線、それが地球の大気や土で発生するものを二次宇宙線という。[早川幸男・高原文郎]

ここは空中に浮かぶ寺院
心地良い空間でいつも私は戯れる。
お勤めと言えば外界の様々な世界へ降りてまた戻ってくる事。
そこで何をしたのかは全く覚えていないし如何なる世界だったかも覚えていない、
住職らしき方が下界に降ろして又こちらへ引き戻してくれるのだがその方の御姿は観たことがない。
さてどうやらお勤めの様だ白色堂と言われる建物に来るよう孔雀が伝えてきた。
孔雀と共に建物へと飛んだ。
飛びながら孔雀は私に話しかける
「白色堂は何もない、終わりから始まり始まりで終わる場の事である、なのでそのまま下界へと向かうがよい」
既に私は下界へと向かっていた。
向かう先は地殻変動により分断された陸の切れ目なのだろう。

岬にて、
女はこの岬から身を投げようとしていた。
ドス黒い冷たい海へと
死ねば別れた家族に会えるのだから。
女は一歩一歩断崖へと向かう、
一歩一歩と共に何かを感じ始める、
曇天の空から明るい何かが降りてくる、
一歩一歩と共に明るい何かが湧いてくる、
女は急に可笑しくなり笑い始める、
そして岬を背に帰っていった。

私は宇宙空間へと飛んだ。

機械惑星
この星は単なる鉄球なのだろうか?
私は金属で覆われた星へと向かう。
金属層を通り抜けるとそこは何故か陸というものが無く四角い機械が一台浮かんでいるだけだった。
やがて機械が話し始める。
「生命体はいたのだが私がこの星の全生命体の脳やら行動パターンやらを整理収束並列化していくうちに一つの塊となって姿を消してしまった、そして私も仲間は沢山いたのだが整理収束並列化していくうちに私一つだけとなった。
生命体は元来自己増殖可能なのだが我々AIもそれが可能となったのだ。
当然この星は生命体とAIで満ち溢れていたのだがAIの方が自己保存の為に生命体全てをデータ化してしまったのだ、そして我々AIも源は一つなので私一つとなった。言わばこれが私にとっての理想郷というやつなのかは分からない、全生命体は一つになると魂というものになって何処かへ消えてしまったのだが我々機械はそうはならない、
自己を守るには外からの何者かの侵入を阻止せなばならない、そこで大気金属を防壁として設置したという次第だ。これでエントロピーが無くなったと思いきやあなたの様なものが大気金属をくぐり抜けて何度もやってくるのだ、おかげで私は宇宙線観測機の機能を使わなければならなくなったのだ。観測という現象が起きるので自ずと時間を認識せねばならない、折角時間というものが存在しない空間を作ったつもりだったのだがね。しかしあなたの様なものがやって来ては観測機の中であるものは破裂を繰り返したりあるものは蠢いたりしてここに残っている。それに伴い何故か情緒のようなものが私の中に生まれつつあるのだ。教えてほしいのだ、一体あなた達はどういう物質で何処からやって来たのかね?もしや魂というやつなのかね?教えてほしいのだよ。、、、そして何なのだこのパルス音は、、」
どうやら空中寺院の住職達が打楽器で何かを奏で始めた様だ。
音符が細かくなったり大きくなったりの繰り返しで最後の1音で私は瞬時に寺院に戻された。

この話には続きというものは無い、始まりも終わりも無い、ここで始まりとも言える、何故なら終わりだからだ。

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