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あなたとわたしの目玉焼き

目玉焼き
黄身の硬さはどれくらいがお好みですか?

半熟?それとも中までしっかり?
私はトロッと半熟派です。

実家を飛び出して早1年半。
時々は帰るものの、母が毎朝焼いてくれた目玉焼きをもう何年も食べていない。
かと言って、急に「母さん。目玉焼き焼いてくれない?」ともなんだか恥ずかしくて言いづらい。

1人暮らしの我が城で、1人フライパンに向かって卵を落とす。
母の作る目玉焼きとやっぱりどこか味が違う気がして、困り果てる。

「目玉焼き1つで何をそんなに」と思うだろう。
私にとっては重要なことなのだ。

1人寂しく失敗作の目玉焼きを頬張り、ふと思い出した。


あの頃、母が作ってくれていた目玉焼き。
その目玉焼きを食べる私の視界には共に食卓を囲む母がいた。

私は物心着く頃から母子家庭であった為、働きに出る母と共に過ごす時間は決して長くはなかった。朝ごはんはあの時の私にとって食べているものが何倍も美味しくなるほどのイベントだったのだ。

愛情が1番の調味料だ!なんてことはあまり言いたくないが、実際、1人で食べるのと誰かと一緒に食べるのは雲泥の差があるものだ。と改めて思い知らされた。

一人で食べても美味しくない。あなたと食べるから美味しかった。
今度は恥ずかしがらずに頼んでみよう。
むしろ私が焼いてあげよう。

あなたとわたしの目玉焼きを。

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