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楽天王国の民として生きていく

 スマホデビューした。

 いや、正確には再デビューだ。2011年に初めてスマホを買った私は、2018年にガラケーの世界へと舞い戻った。何度も割れるスマホ画面に嫌気がさし、頑丈な携帯電話が欲しいと思ったからだ。結果はガラケーにして大正解だった。落としても壊れない。濡らしても壊れない。とにかく電話がしやすい――。

 私はガラケーと過ごす毎日に満足していた。LINEは標準装備されている。ネット関係はパソコンで事が足りる。何よりも、このスマホ時代に「逆に」ガラケーを使っているのがクールだと思っていた。初対面でガラケーを見せると笑いもとれた。別に問題はなかった。

 しかしnoteを始めて事情が変わった。私はパソコンで投稿や編集を行っていたのだが、どうやらスマホとパソコンでは画面の見え方が違うらしい。私がパソコンを使い、「こんな風に見て欲しい」と思って作成する画像は、スマホ画面だと予想外の切り取られ方をするのだ。これはちょっと残念だと思った。

……モバァーイルッ

 上記の理由から、スマホへの移行を決心する。どのキャリアにしようか。どうせなら安いのがいい。今はキャリア各社が低価格競争の最中にいることは知っていた。色々とプランを調べる。だが記載事項が複雑で比較するのが面倒くさかった。どうしよう。どのキャリアが正解なのだろうか…。よくわからんな。私は一旦YouTubeで動画でも観ることにした。適当に再生リストの曲をクリックする。そのとき広告が流れた。普段ならば目に留まることのない、携帯キャリアの広告だった。

「日本のスマホ代は高すぎる!」

 米倉涼子氏が怒っていた。これも何かの縁だと思い、楽天のウェブサイトへのリンクボタンを押した。楽天モバイルのプランを確認する。サイトはシンプルで見やすいデザインだった。ふむふむ、安いとは聞いていたけど、最初の3か月無料だって? しかも端末とクレジットカード同時申込で27,000円分のポイント還元? さらに契約手数料が0円。国内通話かけ放題!? 私は驚きを隠せなかった。自宅なので隠す必要もなかった。もう、楽天モバイル以外ないと思った。早速申込を行う。もちろんクレジットカードも同時に。せっかくもらえるポイントならば、もらっておこうと思った。

踏み込んだ「王国」の地

 申し込んだスマホは翌々日に届いた。信頼できるスピード感だった。心を躍らせて段ボール箱を開封する。およそ3年ぶりのスマホなのだ。初めてスライド式のケータイ(SH-02D)を手にしたときぐらい楽しみだった。

 初期設定を終え、スマホが始動する。さあて、どんなアプリをブチ込んでやろうか――。ガラケー時代の3年間、「アプリ」は手の届かない高嶺の花だった。ゆえに、友人が楽しそうなアプリを使っていると羨ましく眺めていた。その蓄積した知識を今こそ発揮するのだ。私はスマホにかじりついた。

 しかしよく考えてみると、使ってみたいアプリは特に思い浮かばなかった。それはそうだろう。Twitterだってinstagramだってその他のアプリだって、大抵はWeb版が存在するのだ。気になるものは既にパソコンで利用している。なあんだ、じゃあ生活が激変する訳じゃないのか。少しガッカリした。スマホが到着した途端、デジタルネイティブ世代としての底力が発揮されると考えていたからだ。

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 しかしそのとき、1つのアイデアが浮かんだ。キャッシュレス――。そうだ。キャッシュレスだ。このガラケー3年間で、私が興味を持ちながらも敬遠していた経済活動。これしかない。せっかくスマホにしたのだし、やたらポイント還元が多いと噂の楽天がキャリアなのだ。これを機にキャッシュレス生活を始めようと思った。ついでにデジタル庁の中途採用にも応募しようと考えた。

 急いでApp Storeに駆け込み、「楽天Payください」と注文をする。すると威勢のいい店主が、厨房の奥に向かって「ラクペイ1丁!」と叫んだ。楽天Payは2分と経たずに私のテーブルに運ばれてきた。とても安心感のある店だと思った…。

止まらない楽天スパイラル


 楽天Payのアプリを開き、口座を登録する。ええと、引き落とし元はゆうちょ銀行かな…。カードは財布の中だっけ。ああ、あったあった。さて、支店名は、と――。スマホで番号を打ち込もうとした。しかし私の手は止まった。あることを思い出したのだ。楽天って確か、銀行もあったよな、と。いてもたってもいられなくなった。大勢の客で繁盛するApp Storeへ再び駆け込む。先ほどの店主に声を掛けた。

「あの、楽天銀行アプリってありますか…?」

 店主が不敵に笑った。

「あるよ」

「じゃあそれを1つ…」

「あいよ」

 店主が厨房の奥に向かって「ラクギン1丁!」と叫んだ。

 楽天銀行アプリがすぐに運ばれて来る。私は震える手を抑えて各種情報を登録した。カードは後日、自宅に郵送されるとのことだった。私は歯を食いしばった。くそっ。また数日待たなければいけないのか。一刻も早く、楽天のスマホ楽天銀行から引き落とされる楽天Payを使って楽天市場で買い物をしたかった。しかし今は耐えるときだ――。自分にいい聞かせた。楽天銀行のカードが到着するまで、楽天クレジットカードのデザインに採用されたイニエスタを見て気分を落ち着かせることにした。

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 それから数日が経った。私はもう、楽天を知る前の自分とは別人だ。街をあるけば楽天ポイントが貯まる店を自然と探しているし、プロ野球も当然楽天ゴールデンイーグルスのファンとなった。Jリーグはヴィッセル神戸だ。なぜなら楽天がスポンサーだから。王国の民として当然の行動である。規律に背く者は打ち首だ。楽天王国の臣下たちは、それほど忠誠心が高い。

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 私は今、将来のことを考えている。もし結婚し、子宝に恵まれたとしたら、子供の名前をどうしようか、ということだ。
 希望は2人で、出来れば息子がいい。その場合、上の子は楽太郎、下の子は天太郎という名前にしようと思っている。もちろん、結婚相手の楽天状況も調べるつもりだ。クレジットカード、銀行は楽天を使っているか、家のエネルギーは楽天でんき楽天ガスを使用しているか。また、フリマアプリは楽天運営のラクマを愛用しているか、その他、旅行の際には楽天トラベルで予約を取っているか、スポーツ観戦の席は楽天チケットで購入しているか、書籍は楽天ブックスから取り寄せているか――。そういった楽天への貢献度で、これからは人間を判断することになるのだろう。なぜなら私は楽天王国の民なのだ。王国の繁栄を願い、憂い、未来に向けて進まなければならない。今日も今日とて、楽天Payで夜食を買うことにしよう――。明るい楽天王国の未来に万歳!



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