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資生堂とライト兄弟


歴史に関する数字が好きである。つまり、西暦20XX年みたいなものだ。

いつから好きになったのか定かではないが、たぶん、受験のときに日本史で色々な年号を暗記したことがきっかけだと思う。

たとえば、538年の仏教伝来や、1543年の鉄砲伝来。それと、我が国のターニングポイントである明治政府の樹立=1867年も捨てがたい。

このように、興味の有無を問わず、私は歴史にまつわる様々な数字を記憶してしまっている。これはもう、自転車の乗り方とか泳ぎ方みたいなもので、忘れようとしても忘れられるものではない。頭に染みついているのだ。

上記したものは割とお堅い日本史の出来事だが、その他エンタメ系で言えば矢沢永吉氏率いるキャロルが解散したのが1975年ダウンタウンのデビューは1982年『ガキの使いやあらへんで!』が始まったのが1989年有吉弘行氏がヒッチハイクに行ったのが1996年『千と千尋の神隠し』は2001年公開AKB48の『大声ダイヤモンド』発売が2008年など、「じゃあこれは?」と聞かれてサッと答えられるものが沢山ある。これらは生活に必要のない無益な情報なので、別に覚えていることに意味があるとは思えないのだが。

そうした、「年代の基準」みたいな数字の中で、私的ランキング上位に入るものがある。世界初の本格的な有人飛行の年だ。

これはみなさんご存じライト兄弟によるもので、当記事のトップ画像はライト兄弟のイラストらしい。ちなみにそれが1903年。今から110年以上も前のことである。

で、資生堂です

先日薬局をぶらぶらしていたところ、ふとシーブリーズが目についた。何となくボトルの淡い色合いが素敵で、手に取ってしまったのだ。

シーブリーズか…。

一体もう何年使っていないだろう。久しぶりにあの独特の匂いを嗅ぎたくて、気づいたら購入していた。ちなみに買ったのはボディソープだ。部活の後に使うあの謎の液体でなはいので、その意味では実用性がある。

早速その晩、全身をシーブリーズで洗った。鼻にシトラスミントの香りが舞い込んだ。ああ、やっぱりいい匂いだなあ。急に青春の記憶がよみがえった。いい気分だった。

改めてボトルをまじまじと見る。

すると、ボトルの下部に「sea breeze since 1902」とあった。思わず声が出た。

うそだろ。ということは、飛行機が飛ぶ以前からシーブリーズってあるのかよ…と。

ならば、それを発売している母体の資生堂は、一体いつから存在するのだ? まさか関ケ原の戦いと同じ1600年? いやいや、それだと世界初の株式会社、イギリス東インド会社の設立年と同じじゃないか。さすがにそれはないだろう。気になる、気になる。私は急いで風呂から上がった。

慌ててパソコンで検索すると、資生堂の設立年は1872年とのことだった。私はしばらく開いた口がふさがらなかった。まじで? 1872年って言ったら、太陰暦が廃止された年じゃん。あ、品川~桜木町間で鉄道が行き来し始めたのもそうだ。

日本という国が「これから頑張っていきまっせ!」というそんな時代から、資生堂は創業していたのか。そりゃあ汐留にバケモノみたいなビルも建ちますわな。納得。と、ひとり勝手に頷いていた。

自分だけの年表

こうして「私年表」にめでたく、シーブリーズと資生堂の生まれ年が追記されたわけだが、実は一番面白いのは、他人の年表を聞くことだと思う。

たとえばある友人の半生を聞きながら、「あ、この人は2005年に大恋愛をしたんだ。ということは、オレンジ・レンジの『ラブ・パレード』を聞いて気分を盛り上げていたに違いない」とか、「へえ、2014年に留学に行ってたのか。じゃあブラジルのサッカーW杯は海外で観たんだなあ」みたいな、自分がノスタルジーを感じる年と相手をリンクさせることで、相手の話に興味が湧きやすい気がする。

これの応用版と言っては少しずれるかもしれないが、自分の祖父母とお喋りすることは、「基準年号」を活用するのにとてもいいと思う。

私の祖母は82歳なので、彼女が新潟から18歳で上京したのは1957年だ。この年、コカ・コーラが日本で発売された。つまり現代で当たり前のように飲んでいるジュースはまだ未知の存在で、最近で言うところのレッドブル的な存在だったのではないだろうか。

当時の自分の祖母が、おそるおそるコーラに口をつけ、「何この黒い液体、おいしいじゃない。あ、この曲は石原裕次郎かしら?」などと銀座のロカビリー喫茶で楽しんでいる様子などを想像すると、なんともおかしくてしょうがない。年号は会話が楽しくなるツールでもあるのだ。

渦中を楽しむ

そんな風に考えると、我々が生きている今も、未来における関ケ原の戦いだし、将来語り継がれるおでんツンツン事件の時代になるかもしれない。

2020年なんかはコロナという大転換期だから記憶に刻まれやすいが、その他の取るに足らない年の出来事なんかも、覚えておくと他人との会話が楽しくなるんじゃないだろうか。

ちなみに個人的な年表では、2019年に初めて手術をした。転んであごの骨が折れたのである。同じ年に嵐の二宮氏、そして壇蜜氏が結婚したが、今のところそれにノスタルジーを感じるには至っていない。

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