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コンテンツasプラットフォーム~コンテンツかプラットフォームか、という議論の終焉~

こんにちは。VRスタートアップMyDearest代表の岸上健人です!
久しぶりのnoteで、はじめての方に自己紹介します。
私は「東京クロノス」というVRミステリーアドベンチャーゲームの総合プロデューサーを務めております。

大変ありがたいことに、この「東京クロノス」がOculus(FacebookのVRプラットフォーム)でベストセラー入りしたり、Oculus Essentialsという数千作品の中から8つだけ選ばれるカテゴリに日本のVR作品として初選出されました。そんなことをやっており、手前味噌ながらVRのエンターテインメントの分野では先頭を走る人間の一人だと自負しております。


そして早速、本題に入るのですが今回のnote「コンテンツasプラットフォーム~コンテンツかプラットフォームか、という議論の終焉~」という割と刺激的なタイトルの記事を書こうと思ったきっかけがあります。

先日、7月の上旬開催されたIVSというスタートアップ企業のカンファレンスのセッションに登壇することがありました。

そこで以下のようなエンターテインメント系スタートアップの若手経営者が登壇者となり、「次世代コンテンツの創り方」というセッションが開催されました。

Session. 次世代コンテンツの創り方
BitStar 代表取締役 渡邉 拓 氏
FOWD 代表取締役 久保田 涼矢 氏
MAKEY 代表取締役 中村 秀樹 氏
+私

これからの時代を築く豪華な方々と登壇でき大変学びが多く、セッション内容を詳細にレポートしたいくらいなのですが、今回のnoteの本題と逸れる恐れがあるので、その中から私が考えたことに焦点を当てて述べさせていただきます。

様々な話の中でも私が特徴的だと思ったのが、「自社でコンテンツも作るし、プラットフォームも展開する」とおっしゃっている方が多かったことです。

つい数年前までは「プラットフォーマーの時代」と言われて、スタートアップはプラットフォーマーとしての役割に集中し、コンテンツは他社に作ってもらえばいいという雰囲気が支配的だったと思います。

しかし、その流れが最近変わり始めているように感じます。

「自社コンテンツを持ち、そのコンテンツを最適なタイミングで様々なプラットフォームに出し、ファンを広げていく。自社プラットフォームはコンテンツの育成場になる」

そういう考え方が主流になり始めているな、と印象を受けました。

私自身もその考え方に賛成であり、さらにそれを推し進めた「コンテンツasプラットフォーム」という戦略を持っています。

そもそも、プラットフォームが乱立し、コンテツも大量に作成されている現在です。そして「お金よりも時間の価値」が高まっている世の中。その中で、「自分の時間を投資するにたりえる確かなコンテンツ」に高い熱を持つファンが生まれ、ファンコミュニティが形成される。

コンテンツを中心として生まれたファンコミュニティは、もはやプラットフォーム的な意味合いを持ち、そこから様々なものが生まれ始めている。

これが「コンテンツasプラットフォーム」という私の捉え方です。

以前、私が新年早々に書いた「ヴァーチャルリアリティ的」というnoteで、VR時代の到来という観点から、ここの具体例を深ぼった部分があるため以下に引用いたします。

---------------------------以下、上記noteの一部を引用----------

VR時代には、コンテンツはプラットフォームになる、コンテンツ アズ プラットフォームの時代が来ると予想しています。

さらに言葉を変えるなら、コンテンツと呼ばれるものは「世界」になります。

先ほどから言っている通り、VRは「空間(存在)のインターネット」です。つまり、創作物の空間に、世界に、入り込んで、ほぼ現実と同じような体験ができるのです。

ちなみに、コンテンツという言葉は、プラットフォームという言葉に対応したモノで、「プラットフォームの内容・中身」という意味です。

しかし、今エンターテインメントの世界で、少しずつその図式が壊れ始めているような気がしてなりません。

分かりやすい事例でいうと、「FGO(Fate/GrandOrder)」です。


FGOは最も人気のあるスマートフォンゲームの一つで、元々はPCゲームであったFateという作品を拡張して、壮大な世界観を築いています。

FGO単体で生み出す利益はとてつもない規模であり、FGOという世界観の中から、たくさんの新たな人気キャラクターや物語が生まれているほどです。

さらには、AAA(トリプルエー)クラスのゲームとなってくると、もはやプラットフォームよりも遥かに大きな影響をユーザーに与えます。

ユーザーはFGOや、AAAタイトルの世界にどっぷりとつかり込んでいるのが現状です。

ちなみに、AAAタイトルのゲームについて、世界最大のゲームプラットフォーム「Steam」離れが進んでいるのではないか、という考察が2018に起こりはじめました。


こちらについては、現状ではSteam離れは進んでいない、と結論付けながらも、その兆候が見える内容が書かれています。

さらには、2018年末頃から始まったプラットフォーム手数料30%という常識の崩壊の始まり、が非常に面白い現象であると私は感じています。


上記の記事にも述べられている通り、ここ最近Epic Gamesが手数料12%、Discordが手数料10%のPCゲーム販売ストアを立ち上げました。

これは、コンテンツと呼ばれる創作物がプラットフォームより力を持ち始めた、さらには、コンテツ自体がプラットフォームのように、それ自体で完結させてしまう世界を形づくり出している、という現状が生み出した流れなのではないかと思っています。

かねてからオンラインゲームには、ゲーム内通貨もあり、一つの経済圏さえ築いてきた流れがありますが、VR時代にはまさにこれが加速するのではないでしょうか。

さらには、この現象は近頃「コミュニティ」と呼ばれ注目され始めたモノにも合致すると感じています。

人びとの嗜好は細分化し、創作物は、大規模ではないがらも熱狂的なファンが作り出すコミュニティにより収益を上げていくという考え方です。

「コンテンツ」アズ「プラットフォーム」アズ「コミュニティ」

という図式がVR時代の大きな流れになるのではないでしょうか。

ちなみに、VRエヴァンジェリストのGOROmanさんは著書で、「VRでバーチャルな国」が生まれる、とおっしゃってます。VR時代の創作物のコミュニティも、まさに国のようなものなのかもしれません。

-----------------------引用終了------------------------------

今年の1月に上記の内容を書いたのですが、今見返して、この半年でこの流れは加速しているな、という気がしています。

そしてもちろん、「コンテンツasプラットフォーム」という考え方・戦略について、私自身が自社のコンテツである「東京クロノス」で実践していこうとしているため、具体例として述べさせていただきます。

「東京クロノス」はVRゲームです。しかし、VRスタートアップをやっている私から見ても現状では、まだVRゲームをプレイする敷居は高いです。

そこで、実は「東京クロノス」はVRだけに閉じず、先週7/19になんと小説「渋谷隔絶」を発売いたしました。

しかも、この小説「渋谷隔絶 東京クロノス」はVRゲーム「東京クロノス」と全く違う脚本で作られています。

一応は、VRゲーム「東京クロノス」の過去の話、ではあるのですが、それを超えて、「東京クロノス」という世界観のみを根底に共通させた、小説という媒体への最適化を考えた物語なのです。

従来の考え方であれば、あくまでVRゲーム「東京クロノス」が原作であり、そこからのスピンオフとしての過去話、というある意味でファングッズのような扱いをしていたと思います。

しかし、私はこの小説をファングッズとして出すことは死んでも嫌でした。私自身が小説好きであるため、ゲームのノベライズかつファングッズ的なアイテムであると自分の時間を投資する意義が感じにくい、とまで思っていたからです。

そのため、この小説は『「東京クロノス」という世界観、そしてある意味では「東京クロノス」というプラットフォーム』、の上に存在するメインコンテンツの一つである物語、『小説「渋谷隔絶」』であるという捉え方をしています。

そもそもVRゲームと小説では、かなり離れた位置にあるメディアであり、ユーザーはかなり被りにくいと思います。

そこで、「東京クロノスというプラットフォーム」上で、小説というメディアに最適化させた小説好きのための物語という位置づけで小説「渋谷隔絶」は作られたのです。

小説「渋谷隔絶」からファンになってくれた方が、VRヘッドセッドの普及とともに
3年くらいかけてVRゲーム「東京クロノス」の方に流れてくれたらバンザイです。

VRゲーム「東京クロノス」がメインなのではなく、「東京クロノス」という世界観(プラットフォーム)上で、小説や漫画・VRゲームなどの、それぞれのメディアごとに最適化された数種類のIP・コンテツを作っていく、という戦略なのです。

これが私の考えるコンテンツasプラットフォームという戦略です。

VRゲーム「東京クロノス」というコンテンツ(原作)から派生するメディアミックスプロジェクトというよりは、「東京クロノス」という世界観(プラットフォーム)上で繰り広げられる、各メディア(小説・VR・漫画)に最適化されたコンテンツを生み出す戦略、なのです。

そういう考え方で生み出されたものであるため、小説「渋谷隔絶」は、VRゲーム「東京クロノス」を全く知らない、小説好きの人にこそ楽しんでいただきたい作品だったりします。小説自体がメインコンテンツです。「閉鎖空間の中で繰り広げられる、政治家一族のコロシアイ選挙」、という小説好きに向けた「ダークサスペンス・ミステリ」の物語です。(Kindleもあります)

今後、この「コンテンツasプラットフォーム」という考え方がエンターテインメント業界の標準になっていく、むしろ私が標準にしていく旗振り役の立場なのだ、と使命感すら持っています。

その第一歩目として、私が代表を務めるVRスタートアップMyDearestの「東京クロノス」という作品を、VRゲームは無理でも、まずは小説から触れてみてはいかがでしょうか。小説が気に入りましたら、VRゲームも是非。以下、実はVRゴーグル付きのレンタルセットもございます(宣伝恐縮です)


小説「渋谷隔絶」とVRゲーム「東京クロノス」を通じて、コンテンツasプラットフォーム、という考え方を実感していただけると、強い自信をもってお勧めいたします。

これから、エンターテインメント業界は、プラットフォームとコンテンツという対立軸を超えた、激変の時代がやってきます。その中で「コンテンツasプラットフォーム」という考え方が、未来を切り開くことになればと強く思っております。

最後までお読みいただき本当にありがとうございました。少しでも、皆さまの考えの一助になりましたら幸いです。

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