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ビッグミニにポジを詰めていた頃

おそらく写真に刻まれた日付が正しければ、それは2016年ごろ。

コニカのビッグミニというポイントアンドシュートカメラに、ポジフィルムを入れて撮影していた。

ビックミニは35mmの単焦点レンズが付いている小さなカメラで、オートフォーカスで、つるっとしていて、ファインダーは付いているが写ルンですのファインダーをちょっと良くしたような見え方をしていた。似たような形・レンズのものとしてCONTAXTシリーズがあるが、CONTAXのほうが金属製でボディもしっかりしていて、ファインダーもクリアで良く見える。

ビッグミニはボディ含めてプラスチックパーツが多いので、その分軽い。その軽さとファインダーの見え方が、軽快な撮影スタイルに繋がっていた。

ライトルームの膨大なライブラリから、ふと黒枠の写真が目に入って、それらを、その周辺に撮られた時間軸の写真たちを救い出してみる。まるで意識の深いところから、記憶の断片を拾い上げるみたいに。

数枚の写真から、7年前の生活がぼんやりと浮かび上がってくる。通っていたスタジオ、食べていたもの、住んでいた部屋、付き合っていた彼女。

フィルム写真にはいくつもの有限性がある。

まず36枚分というフィルムの長さにより、枚数をたくさん撮ることができない。次に、フィルムによって決められた感度や、色彩がある。スキャンしてデジタル化すれば、ある程度トーンは変更できてしまうが、撮影時の感度は変えられない。この時詰めていたコダックのポジはISO100か200だったと思う。そのようなフィルム自体の有限性がある。

次に、カメラによって規定される有限性について。ビッグミニの場合であれば、フォーカスはオート、露出もオート(補正はできた)、巻き上げもオート、レンズは固定の35mm。そのようなカメラ任せの設定によって、あとは何に対してどのような構えるか、アングルを切るかといったフレーミングの選択のみとなる。

最近のスマホやデジタルにおける写真状況は、どちらかと言えばポジフィルムの状況に近いと思う。

背面液晶やアイフォーンの画面で、被写体に向けて構えると見たままの色(ポジ)で見ることができる。ポジのまま見て、撮影して、またポジのデジタル画像ができあがる。ネガを介さないプロセスは、そのスムースさと人間の視覚に沿っているという意味で、心地がよくストレスがない。

もっとも、ネガフィルムでも、現像して寝かせておいてプリントするようなストリートフォトグラファーでもない限り、現像後のネガフィルムと対峙して、鑑賞やセレクトを行うというプロセスを経る人は少ないように思う。

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