見出し画像

SL2Sを1年半使い込んでみてのエイジング報告

そもそもSLはエイジングするのか。

結論を言えばエイジングする。それはこの後たっぷり写真と共に説明するとして、まずはエイジングについて。

ライカ、特にM型を使う人は経年変化する物体が好きだったりする。それは例えばレザーのバッグだったりシューズだったり、あるいは使い込んだオーク材のテーブルや椅子、さらにフェチ的な人であれば、色褪せたカーテン、背表紙の焼けた本。

巷で流行中のクラシックカメラやオールドレンズといった類も、大きく括ればそのような「古いモノ好き」の流派の中にあるし、経年変化するものはアナログなものであるので、他のアナログ好きも同様の傾向があるとみている。デジタルは劣化しない。

アナログ好きと、エイジング好きは相似している。

ではなぜ人はエイジングが好きなのか。

人の数だけ意見がありそうなものだが、時間の可視化と見た目に集約される気がする。

カメラの場合、使った時間や使い方が傷やスレといった形で現れる。共にした時間が視覚的に現れることによって、さらに愛着が増すといったことが起こる。そして、そのような細部を発見した時かっこよく思うというわけだ。

道具というのは何であれ、使う人と一体化している時が最もかっこよく見える気がする。道具を使いこなすということが、エイジングとして現れるというわけだ。一方で時間によって物質が自然変化することも同時に起きる。日光による退色やレザーの硬質化。使う人の癖と自然変化。両者が相まって、エイジングとなる。そういう意味では、同じ道具でも使う人によって異なるエイジングをみせるのも、また魅力なのだろう。

そういえば、昨年2021年夏に、LeicaM10-Rというカメラが発売された。こちらはブラックペイントという塗装で、エイジングしやすいカメラとなっている。フィルム時代は技術のせいかペイント塗装のカメラが多かったようだ。しかしデジタルになると塗装のテクノロジーも進歩して、長く使っても剥がれにくい塗料が使われるようになった。

米国やEUでは剥がれにくいクローム仕上げカメラが売れるのに対して、日本ではブラックペイントの方が売れ行きが良いらしい。文化として根底にある侘び寂びだったり、畳や襖といったような工芸的なものに、その繊細さが似ているのかもしれない。

僕が最初に買ったM型もM-Pというブラックペイントのフィルムカメラだった。ペイントのカメラは剥がれるまで使ってやろうという気持ちが湧く。

さて、前置きが長くなったが今回のSLについて。

SLはM10系と同じようなクローム塗装が採用されている。サラサラとした手触りのブラックで、エイジングもしなさそうに見える。

新品で購入してから(noteやブログの読者はお分かりのように)ほぼSLだけを毎日使ってきた。およそ1年半、どのようなエイジングをしたかディティールを見ていきたい。

まずは比較対象として購入時の写真から。

2021年春

うん、パッキパキ。どんなカメラにも新品の気持ちよさというのはありますね。

そして現在の写真はこちら

ここから先は

905字 / 11画像
この記事のみ ¥ 300

いつも応援してくださる皆様に田中常丸は支えられています.本当にありがとうございます.