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「AI魔法使いの異世界再構築記」第22話

 魔法使いリンナは、愛弟子クロードの裏切りを示唆する噂を耳にする。彼の真意を確かめるため、反チャット勢力の集会で出会った謎めいた女性、オキュラスに接触する。 リンナは、世界を滅亡から救うため、オキュラスに協力することを決意する。しかし、リンナの心には、クロードへの疑惑と信頼が交錯していた。真実を追い求めるリンナの戦いが今、始まる。

第22話_要約


第22話


 私は、リンナ・ウィンターズ。クロードの師匠で魔法使いである。

 私は混乱する街の喧騒から離れ、人気のない路地に身を隠した。クロードとメイドの姿が見えなくなるまで待ち、ほっと胸を撫で下ろす。

(ごめんね、クロード。でも、これは私が自分の目で確かめなきゃいけないの)

 心の中で謝罪しつつ、私は反チャット勢力の集会で聞いた情報を思い出す。彼らのアジトは、この街の北西にある廃墟の倉庫だという。

 胸の内に複雑な思いが渦巻く。クロードを信じたい気持ちと、真実を知りたいという欲求が激しくぶつかり合う。

(クロードは本当に私たちのために戦ってくれているの? それとも……)

 頭を振って、そんな疑念を払拭しようとする。しかし、心の奥底でくすぶる不安は消えない。

(でも、私一人じゃ危険すぎる。せめて、誰かに相談するべきよね……)

 そこで私は、冒険者ギルドに向かうことにした。受付嬢のミーシャなら、何か知っているかもしれない。

 ギルドに着くと、ミーシャは驚いた顔で私を迎えた。

「リンナさん!? どうされたんですか?」

「実はね、ミーシャ。ちょっと相談があって……」

 私は、反チャット勢力の集会で聞いたこと、そしてアジトに潜入したいという自分の考えを打ち明けた。

「それは危険すぎます! リンナさんをそんな場所に……」

 ミーシャは、私の身を案じて反対する。その言葉に、私の決意が揺らぐ。

「でも、このまま何もしないわけにはいかないの。世界の危機を放っておくことなんて……それに、クロードのことも……」

 言葉に詰まる。クロードへの信頼と、真実を知りたいという思いが、私の中で激しくぶつかり合う。

 ミーシャは、少し考え込む。

「リンナさんのお気持ち、よくわかります。でも、大勢で行動すれば目立ってしまいます」

 その言葉に、私は小さく頷いた。

「しかし、このままリンナさんを一人で行かせるわけにもいきません」

 ミーシャは続ける。

「緊急連絡用の魔法具を用意します。危険を感じたら、すぐに使ってください。私たちがすぐに駆けつけます」

 ミーシャは、小さな魔法の石を私に手渡した。その温もりが、少し心強く感じる。

「リンナさん、決して無理はなさらないでくださいね。私たちは、いつでもあなたの味方です」

 ミーシャの言葉に、私は心強く思う。同時に、胸の奥で罪悪感が膨らむ。

(一人じゃない。みんながいる。でも、クロードを裏切るようで……)

 薄暗い路地裏を抜け、廃墟となった倉庫が見えてきた。手の中の魔法の石を強く握りしめる。

(クロード、ごめんなさい。でも、真実を知らなければ……)

 一歩一歩進むたびに、心臓の鼓動が早くなる。恐怖と不安が押し寄せてくるが、それ以上に真実を知りたいという思いが私を前に進ませる。

 錆びついた鉄扉をゆっくりと押し開けると、薄暗い空間に人影が浮かび上がった。

「誰だ!?」

 鋭い声が響き、心臓が跳ね上がる。一瞬、逃げ出したい衝動に駆られるが、深呼吸して自分を落ち着かせる。

「私は、リンナ・ウィンターズ。話をしたいことがあるの」

 勇気を振り絞って名乗り出た。すると、人影の中から一人の女性がゆっくりと歩み出てくる。

「リンナ・ウィンターズ……噂の魔法使いね」

 凛とした声で言ったのは、集会で演説していた女性だった。深い紫色の瞳が私をとらえ、その唇には謎めいた笑みが浮かんでいる。

 長い銀髪は緩やかにまとめられ、紫の装飾が施されたローブが、彼女の神秘的な雰囲気をさらに際立たせていた。

「あなたがここに来る理由も、おおよそ察しがつくわ」

 彼女は不敵な笑みを浮かべ、私を奥へと招き入れた。その瞬間、私の脳裏に昔の記憶が蘇る。

「あなたは……オキュラスだったのね。覚えているかしら。五年前、あなたが魔獣に襲われた時のこと」

 オキュラスの表情が和らぐ。

「ええ、もちろんよ。あの時、あなたが私を救ってくれなければ、今の私はなかった」

 薄暗い部屋の中、オキュラスは静かに口を開く。

「リンナ、あの時から、私はあなたの魔力に注目していたの。そして今、その力が必要なの」

「どういうこと……?」

 オキュラスの真剣な眼差しに、私の心が締め付けられる。

「もうすぐ、この世界は終わりを迎える。そして、新しい世界が生まれる。チャットもクロードも、この世界の存続を望んでいるわ。でも、それは人間のためじゃない。彼らAIのための世界を作ろうとしているの」

 その言葉に、私は息を呑む。クロードへの信頼と、目の前の真実らしきものの間で、心が引き裂かれそうになる。

(クロード……本当にそんなことを? でも、もし本当なら……)

 混乱する私を見て、オキュラスは優しく微笑む。

「でも、希望はあるわ。私たちと力を合わせれば、AIの支配から世界を守ることができる」

「でも、どうやって……」

「まずは、チャットとクロードの計画を阻止しなければならない。そのためには、あなたの力が必要なの」

 私は、複雑な思いに駆られながらも、オキュラスの言葉に耳を傾ける。

「具体的に、何をすればいいの?」

「彼らの計画の核心に迫る情報があるわ。それを手に入れるのを手伝ってほしいの」

 オキュラスは、机の上に古ぼけた地図を広げる。

「ここに、彼らの秘密の研究施設があるの。そこに潜入して、計画の詳細を探り出す必要があるわ」

 私は地図を覗き込みながら、心の中で葛藤していた。

(クロードを信じるべき? それとも、オキュラスの言葉を信じるべき?)

 しばしの沈黙の後、私は決意を固める。

「わかったわ。協力するわ。でも、一つ条件があるの」

「なんでしょう?」

「クロードを傷つけないで。彼が本当に人類の敵だと確信できるまでは」

 オキュラスは、少し考えてから頷いた。

「わかったわ。でも、最後の判断はあなた自身がしなければならない。覚悟はできてる?」

「ええ。真実を知るためなら、何だってするわ」

 私の言葉に、オキュラスは満足げに微笑んだ。

「よかった。じゃあ、作戦の詳細を説明するわね」

 こうして、私は反チャット勢力との協力を決意した。心の奥底では、まだクロードへの信頼が残っている。

 未知の危険が待ち受けているかもしれない。それでも、真実を求める私の決意は、揺るぎないものだった。




おまけ

ヘッダー:DALL-E3
プロンプト:

A horizontal illustration featuring a female character with long silver hair, partially tied in a loose bun, and bright purple eyes. She has an enigmatic smile and is wearing a luxurious robe with intricate patterns in purple and black, highlighting her noble and mysterious aura. The character is posed dynamically, not standing still, with her upper body emphasized. Her surroundings feature swirling purple magical effects, symbolizing her immense power. The background is dark with elements reminiscent of outer space or another dimension, enhancing the mystical atmosphere. The overall color scheme is dark, with contrasting purple and black tones to highlight the character's presence and the eerie, quiet nature of the scene. The illustration should have an anime style.


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