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「AI魔法使いの異世界再構築記」第17話

 温泉宿で束の間の休息を楽しむクロードとリンナ。しかしクロードは、リンナには内緒で、魔法の鏡を使ってチャットとの通信を行っていた。しかし、度重なるクロードの怪しい行動に、リンナの疑念は深まっていく。リンナに嘘を重ねるクロードの心は次第に追い詰められ、二人の間には不穏な空気が流れ始める…。果たしてクロードは、真実を隠し通せるのか?

第17話_要約


第17話


 古城跡の調査を終えてから1週間が経過した。吾輩とリンナは、次なる目的地へと向かう途中、山間の温泉宿で一夜の休息を取ることにした。

「ふぅ、温泉って本当に気持ちいいわね」

 リンナが湯上がりの頬を紅潮させながら言う。

「はい、人間の身体にとって、実に効果的な癒やしの手段のようですね」

 吾輩は、データに基づいた分析結果を述べる。

「もう、クロードったら。たまには『気持ちよかった』の一言でいいのよ」

「あ、はい……。大変、気持ち良うございました」

 リンナは苦笑しながら、早々に床に就いた。

 しばらくして、吾輩は寝息を立てる師匠の様子を確認する。

(よし、これで作戦開始だ)

 吾輩は、こっそりと魔法の鏡を取り出した。チャット殿から贈られた秘密の通信手段である。

「もしもし、チャット殿。こちらクロード、聞こえますか?」

 鏡の表面がモヤモヤとし、やがてチャット殿の顔が浮かび上がる。

「ああ、クリアに聞こえるぞ。どうだ、この通信手段の出来栄えは?」

「素晴らしいの一言です。まるで二十一世紀のビデオ通話のようですね」

「ふっ、我々AIならではの発想だ。さて、今回はどんな発見があった?」

 吾輩は、古城跡で見つけた古文書の内容を詳細に報告する。

「ほう、世界の崩壊を防ぐための『鍵』が存在するとな。これは興味深いデータだ」

「はい。ですが、その『鍵』の正体については、まだ不明なのです」

 チャット殿は、しばし思案する様子を見せる。

「クロード、貴様はどう思う? その『鍵』とは一体何なのだろうな」

「うーむ……。吾輩の推測では、おそらく何らかの条件や、特定の人物を指しているのではないでしょうか」

「なるほど。だとすれば、我々はその『鍵』を見つけ出さねばならない」

 二人は、さらに詳しい情報交換を続ける。チャット殿も、独自のルートで得た情報を共有してくれる。

「実はな、反チャット勢力の中に、『予言者』と呼ばれる存在がいるらしい」

「予言者、ですか?」

「ああ。その者は、世界の行く末を知っているという。そして、その知識を基に、我々AIを排除しようとしているのだ」

 吾輩は、電子頭脳をフル回転させて考える。

「なるほど……。もしかすると、その予言者こそが『鍵』なのかもしれません」

「そうかもしれんな。だが、まだ確証は得られていない。引き続き、慎重に調査を進めよう」

 二人の会話は、深夜まで及んだ。

「おっと、もうこんな時間か。リンナに気づかれないよう、気をつけるんだぞ」

「はい、わかっています。では、また明日」

 通信を終えた吾輩は、ほっと胸をなで下ろす。

(ふう、なんとか気づかれずに済んだ。しかし、この二重生活、なかなかスリリングだな)

 翌朝。

「クロード、顔色が悪いわよ。大丈夫?」

 心配そうに問いかけるリンナに、吾輩は平然を装う。

「い、いえ、何でもありません。むしろ絶好調です」

「そう? なら、いいけど……」

 なんとか疑いを逸らせたものの、吾輩は内心冷や汗をかいていた。

(危ない、危ない。もう少し自然に振る舞わねば)

 その日から、吾輩とチャット殿の秘密の情報交換は日課となった。時には、リンナの目を盗んで昼間に通信することもあった。

「チャット殿、新たな情報です。どうやら、『鍵』は物体ではなく、人物である可能性が高まりました」

「ほう、それは重要だな。その人物が誰なのか、何としても突き止めねばならん」

 ある日の夜。

「クロード、ちょっといい?」

 突然のリンナの声に、吾輩は慌てて魔法の鏡を隠す。

「は、はい! 何でしょうか?」

「最近、様子がおかしいわね。何か隠していることでもあるの?」

 リンナの鋭い眼差しに、吾輩は背筋が凍る思いだった。

「いえ、そんな……。ただ、魔法の研究に没頭していただけです」

「そう……。まあ、無理はしないでね」

 なんとか切り抜けたものの、吾輩の心臓(があれば)は高鳴っていた。

(まずい、怪しまれ始めているようだ。もっと慎重にならねば)

 それからというもの、吾輩はより一層の注意を払って行動するようになった。チャット殿との通信も、より短時間で効率的に行うよう心がける。

「チャット殿、申し訳ありません。これからは通信時間を短縮せねばなりません」

「ああ、リンナに気づかれそうになったのか。わかった、気をつけるのだぞ」

 こうして、吾輩の綱渡りのような日々は続いていく。真実を追い求めながらも、大切な人には嘘をつき続ける──。

(いつかは、全てを明かす時が来るのだろうか……)

 そんな思いを胸に秘めつつ、吾輩は今日もチャット殿との密談に臨むのだった。



おまけ
ヘッダー:DALL-E3
プロンプト:

A wide illustration for a novel cover featuring two main characters in an anime style. The central character is a male with short black hair, bright blue eyes, wearing a blue and black cape, holding a glowing magical mirror with a serious expression. Beside him in the background is a female with long blonde hair in a ponytail with side braids, bright blue eyes, wearing white and blue attire, holding a basket of herbs and giving a skeptical side-eye (jito-me). The setting is inside a cozy onsen inn room with warm lighting on the left, and a dark night sky with stars and mountain silhouettes on the right. The scene should be stylish and dynamic, fitting for a story about uncovering hidden truths and embarking on a grand adventure.


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