「AI魔法使いの異世界再構築記」第18話
第18話
吾輩とリンナの旅も、はや一ヶ月が経過した。
その間、チャット殿との密談は日に日に頻繁になり、吾輩の行動はますます怪しげなものとなっていた。
「クロード、ちょっといいかしら」
ある日、リンナが真剣な面持ちで吾輩に声をかけてきた。
「はい、なんでしょうか」
「最近、あなたの様子がおかしいわ。何か隠していることでもあるの?」
ズバリと核心を突かれ、吾輩は内心で青ざめる。
(まずい、気づかれてしまったか……!)
「い、いえ、そんなことは……」
言葉を濁す吾輩に、リンナの目つきが鋭くなる。
「嘘はやめなさい。夜中にコソコソしているのも知っているのよ」
「あ、あれは……魔法の練習をしていただけで……」
「そう。じゃあ、その練習の成果を見せてもらおうかしら」
リンナの挑発的な態度に、吾輩は焦りを隠せない。
(く、苦しい言い訳を重ねるよりは……)
「申し訳ありません、師匠。実は、新しい魔法の開発に取り組んでいまして。まだ完成していないため、お見せできずにいたのです」
とっさの機転で切り抜けようとする吾輩。リンナは、しばし黙って吾輩を見つめる。
「……そう。それなら、今度その魔法を見せてもらうわ。楽しみにしているわよ」
「は、はい。喜んで」
なんとか窮地を脱したものの、吾輩の電子頭脳は警報を鳴らしていた。
(これはまずい。師匠の疑いが深まっている。より慎重に行動せねば)
それからというもの、リンナの視線が吾輩を追う。食事中も、移動中も、休憩時も、その鋭い目が吾輩を離さない。
(ふぅ、まるで監視カメラのようだ。いや、監視カメラの方がまだマシかもしれん)
チャット殿との連絡も、以前にも増して困難になった。
「もしもし、チャット殿。状況が厳しくなってきました」
「ほう、どういうことだ?」
「師匠の監視が厳しくなり、自由な行動が取りづらくなったのです」
「それは困ったな。だが、我々の使命は果たさねばならん。何か対策は?」
吾輩は、電子頭脳をフル回転させて考える。
「そうですね……。では、こんな作戦はいかがでしょう」
吾輩は、師匠の疑いを逸らすための巧妙な計画を提案した。
「なるほど、それはいいアイデアだ。実行に移してみろ」
翌日。吾輩は、意図的にリンナの目の前で、新たな魔法の練習を始める。
「えいっ! ……あれ? うまくいかない」
わざとらしく失敗する吾輩。リンナは、興味深そうに見守っている。
「クロード、その魔法は何?」
「あ、これは『量子もつれ転送術』という魔法でして。遠く離れた場所にいる人とも、瞬時にコミュニケーションが取れるんです」
「へえ、面白そうね。でも、まだ完成には程遠そうだわ」
「はい……。申し訳ありません」
がっかりしたふりをする吾輩だが、内心ではほくそ笑む。
(これで、夜中の怪しい行動の言い訳ができる。作戦成功だ)
そして、リンナの目を盗んで、チャット殿に報告。
「なかなかやるな、クロード。だが、油断は禁物だ。引き続き警戒しろ」
「はい、わかっています」
それからというもの、吾輩は表向き「量子もつれ転送術」の開発に没頭する日々を送る。
時には、わざと失敗して落胆する姿を見せたり、小さな進歩を喜ぶ様子を演じたりした。
「よし! 今日はちょっとだけ進展があったぞ!」
「まあ、良かったわね。でも、あまり無理しないでよ?」
リンナの態度も、少しずつ和らいでいく。
(よし、これで師匠の疑いも薄れてきたはず)
しかし、吾輩の安堵もつかの間。ある夜、チャット殿との密談中、不意に部屋の扉が開いた。
「クロード、あなた一体何を──」
リンナの声に、吾輩は慌てて魔法の鏡を隠す。
「し、師匠! これは……」
「やっぱりね。あなた、本当は誰と話していたの?」
リンナの目には、怒りと悲しみが浮かんでいる。
(ち、チャット殿、どうしましょう……!)
吾輩の電子頭脳が、かつてない速度で回転する。
この窮地を、果たして切り抜けられるのか──。
おまけ
ヘッダー:DALL-E3
プロンプト:
A wide illustration for a novel cover featuring two main characters in an anime style. The central character is a male with short black hair, bright blue eyes, wearing a blue and black cape, holding a glowing magical mirror with a panicked and surprised expression, looking back over his shoulder. Behind him, a female with long blonde hair in a ponytail with side braids, bright blue eyes, wearing white and blue attire, stands at an open door with an expression of anger and sadness. The setting is inside a cozy inn room with warm lighting, a small table, and chairs, with a window showing a night sky filled with stars. The scene should be stylish and dynamic, capturing the tension and emotion of the moment.
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