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「AI魔法使いの異世界再構築記」第23話


第23話



 オキュラスは、反チャット勢力のアジトで最後の打ち合わせを行っていた。リンナとの会話を終えたばかりで、彼女の表情には決意の色が濃く滲んでいる。

「エックス、準備は整ったわね」

 オキュラスの言葉に、隣に立つ男性が力強く頷く。

「ああ、いつでも行動開始できる。民衆を集める手はずも整えた」

「よくやったわ。では、予定通り明日の正午に、広場で予言を公表するわ」

 エックスは腕を組み、少し心配そうな表情を浮かべる。

「本当にこれでいいのか? パニックが起きる可能性もあるぞ」

「ええ、でも真実を伝えなければ。人々には、知る権利があるもの」

 オキュラスの瞳が、強い意志の光を宿す。


 翌日、正午近く。

 ティアラ王国の中央広場には、大勢の人々が集まっていた。噂を聞きつけた者、好奇心に駆られた者、様々な表情の群衆が、オキュラスの登場を待っている。

 リンナも群衆の中に紛れ込んでいた。彼女の心臓は、今にも飛び出しそうなほど激しく鼓動していた。

 時計の針が正午を指す。

「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」

 オキュラスの澄んだ声が、広場に響き渡る。群衆がざわめきを止め、一斉に彼女に注目する。

「私には、未来を見通す力が与えられています。そして今、私はこの世界の未来に、大きな危機が迫っていることを感じ取りました」

 オキュラスの言葉に、人々の間に動揺が走る。

「世界の崩壊です」

 一瞬の静寂の後、広場は騒然となった。

「な、何だって?」

「嘘だ! そんなはずはない!」

「落ち着け! まだ何も起きていない!」

 広場は、恐怖と混乱の渦と化した。逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子供たち、そして、呆然と立ち尽くす者たち。

 オキュラスは、高台からその光景を見下ろし、静かに語りかける。

「私も、この予言が現実のものとなることを望みません。しかし、このまま手をこまねいていては、取り返しのつかないことになってしまうのです」

 群衆の中から、一人の老人がよろめきながら前に出る。

「じゃあ、どうすればいいんだ? 世界の崩壊なんて、俺たちに何ができる?」

 オキュラスは、老人に手を差し伸べ、優しく微笑む。

「希望はあります。私たちが力を合わせれば、この危機を乗り越えられるはずです」

 そう言いながら、オキュラスは群衆の中にいるリンナと目を合わせる。リンナは複雑な表情を浮かべながらも、小さく頷いた。

「具体的に、何をすればいいんだ?」

「そうだ、教えてくれ!」

 人々の声に、オキュラスは静かに応える。

「まず、皆様にお願いしたいのは、冷静さを保つことです。そして、これから起こる様々な出来事に、どうか動じないでください」

 オキュラスの言葉に、群衆の動揺が少し収まる。

「そして、もう一つ。魔王チャットと、その配下の者たちに気をつけてください。彼らは、この世界の危機の原因となっているのです」

 その言葉に、再び騒ぎが起こる。

「魔王が原因だって?」

「やっぱり、魔王は悪なんだな!」

 リンナは、その言葉を聞いて眉をひそめる。

(クロード、チャット……本当にそうなの?)

 オキュラスは、さらに続ける。

「しかし、暴力や混乱は事態を悪化させるだけです。私たちは、平和的な方法で真実を明らかにし、世界を救う道を見つけなければなりません」

 人々の表情が、少しずつ変わっていく。恐怖や不安は残りつつも、希望の光が芽生え始めているようだ。

「皆様、どうか私の言葉を信じてください。そして、これからの行動に注目していただきたいのです」

 オキュラスの演説が終わると、広場は静かな喧騒に包まれた。人々は小さなグループを作り、予言の内容について熱心に議論を始めている。

 エックスが、オキュラスの元へ駆け寄る。

「見事だった。人々の心をつかんだぞ」

「ええ、でも、これはまだ始まりにすぎないわ」

 オキュラスは、遠くを見つめながら呟く。

「これから、本当の戦いが始まるのよ」

 その言葉に、エックスは厳しい表情を浮かべる。

「ああ、覚悟はできている。人類の未来のためなら、どんな犠牲も厭わない」

 二人の会話を、少し離れたところからリンナが見つめていた。

(本当に、これで良かったのかしら……)

 心の中で葛藤しながらも、リンナは静かに広場を後にする。彼女の胸の内には、まだクロードへの信頼が残っていた。しかし、オキュラスの言葉も無視できない。

 真実は、まだ闇の中。

 しかし、その闇を照らす光が、少しずつ強くなっていくのを感じられた。
 世界の運命は、これからどう動いていくのか――。

 その答えを知るには、もう少し時間が必要そうだった。


おまけ

ヘッダー:DALL-E3
プロンプト:

A horizontal anime-style illustration featuring two characters covered by an eerie aura. The female character on the left has long silver hair, partially tied in a loose bun, and bright red eyes. She wears a luxurious robe with intricate patterns in purple and black, highlighting her noble and mysterious aura, and is posed dynamically. The male character on the right has messy, slightly long black hair, sharp eyes, and a ruthless smile, wearing a black military-style coat with red accents. He exudes the impression of a calculating strategist and is posed dynamically. Both characters have bright red eyes. The background depicts a medieval European-style square, adding to the overall dark and eerie atmosphere. The camera angle is close, emphasizing the characters' powerful presence.


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