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「変わる組織」はどこが違うのか? 34

ビジョンが抱える「マクロ≠ミクロ問題」

 リーダーにとって、どこに行こうとしているのかを明確に示すビジョンはフォロアーを惹きつける重要な要素です。なので、このブログ(15回目)でも紹介したでんでん太鼓モデルでは、ビジョンを「創造」と「徹底」の2つに分けて強調しました。 
 しかしこのビジョン、組織やタスクが小さいときには効果的なのですが、組織が大きくなるほど効力が薄れていきます。
 その理由を考えてみましょう。
 まず小さい企業、たとえばベンチャー企業を考えてみてください。「3年後に上場する」というのは社員のモチベーションにも効くビジョンです。私の知っているベンチャー企業の社員はとてもハードワーカーで、私生活は大丈夫かなと思うのですが、みなさん元気で楽しそうです。
 しかし大企業はどうでしょう。大手自動車メーカーや総合商社、アメリカのGAFAMのような大企業が、ひとつのビジョンで全社員を引っ張るというのは無理があります。組織が大きくなると、社員のモチベーション維持をビジョンに頼るわけにはいかなくなっていきます。全体のビジョンがマクロすぎて、個人の思い(ミクロのビジョン)と整合しなくなるからです。
 国や社会を考えてみるともっとわかりやすいでしょう。先進国は、みんな少子高齢化に悩んでいます。移民受け入れは必須ですが、最近はそれに反対する声が世界的に強くなってきました。「移民を受け入れないと社会が保てない」という課題と、移民が来ると自分の職を奪われるというミクロの問題が整合しないからです。経済学でいう合成の誤謬がビジョンにもおこるのです。
 では、どうするのか?
 二つの方法があります。一つは、部・課、チーム単位で、マクロなビジョンと整合しつつ、個人の思いとも整合するビジョンをつくってモチベーションを高めること。
 もう一つは、モチベーションのドライバーをビジョンからバリュー(行動規範)にシフトすることです。
 どちらが簡単かというと、後者です。ということで、大組織では人を動かすドライバーとして、ミッション・ビジョンからバリューに重くを置く傾向があります。それだけに、老舗のエクセレントカンパニーほど、バリューの浸透に時間とエネルギーを注いでいます。


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