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「変わる組織」はどこが違うのか? 21

プロセスデザイン3 収束の方法

 収束ができない、という相談が多いと前回書きました。今回はこの問題を取り上げます。
 ここでは2つの基本的な方法を紹介しましょう。ひとつは多数決です。選択肢がそれほど多くなければ、これが一番簡単です。丸型のカラーラベルを用意して、たとえば赤は5点、青は3点、黒は1点などと色によってポイントを変えると、楽しみながら投票できます。
 この場合よく訊かれるのが、ひとつの選択肢に自分が持っている票をまとめて投じてもいいかどうかです。OKです。ダメにする理由がありません。もちろんばらばらに投票してもかまいません。こうして獲得票数の多いアイデアから採用します。
 ラベルを用意し忘れたときは、「正」という字を書く要領で投票してもらいます。私はラベルを忘れがちなので、こちらを多用しています。ラベルを使うか「正」を書くかには、ちょっとしたワクワク感の違いがあります。なぜかシールを貼るのって、楽しいですからね。

丸型カラーラベル

 アイデアの数が非常に多いと、投票では決まりにくいですよね。そういときは、ペイオフ・マトリクス(Pay-Off Matrix)を使います。下図のように、縦軸に効果の大きさ(リターン)、横軸に実現の難しさ(コスト)を取ったマトリクスです。横軸のコストを、右に行くほど小さくなるように取ると、右上の象限 A がローコスト・ハイリターン、つまり一番良いゾーンとなって感覚的に座りが良くなります。

ペイオフ・マトリクス

 このマトリクスを壁に描いて、付箋に書いたアイデアを参加者全員で、話し合いながらマトリクスのどこにくるかを貼りだしてもらいます。参加者全員が、マトリクスの前に立って、「これは、それよりローコストかな?」「ハイ・リターンかな?」などと話し合ってもらうのです。こう説明すると時間がかかるような感じがするかもしれませんが、100件ぐらいアイデアがあっても、15分程度で優先順位をつけることができます。不思議とスムーズに進むものです。
 さて、図の A ゾーンに残ったものは、即実行です。ローコスト・ハイリターンですから、グズグズする理由がありません。数が少ないはずですから責任者を決めてすぐスタートしましょう。D ゾーンに入ったものは議論する値打ちがありません。棄却。
 ここまでは簡単なのですが、悩ましいのは B と C です。私は、チームに勢いがあるときは、少しチャレンジングな B ゾーンから選ぶことをお勧めしますが、チームに元気がないときには、できるだけ早く成功体験をして自信をつけた方がいいので、C ゾーンから選ぶことをお勧めしています。

 こういう収束の仕方については、事前に了解を取っておくのが定石です。というか、ワークショップ全体の手順・時間割、プロセスをはじめに説明する。その時に収束方法も説明します。
 お遊び的なワークショップなら、そういう説明は不要。むしろプロセスは秘密にしてお楽しみの方がいいということがあるかもしれません。しかし、生活がかかっているような真剣勝負の場合には、全体説明の中で収束方法も説明して、始める前にしっかり納得してもらっておくことが後で揉めないためにとても重要です。


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