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文章力を上げる方法

読書の秋、創作の秋、文章力の秋。
突然ですが、みなさんは文章力上げたくないですか?
私は上げたいです、切実に。


でも、文章力と言われても、数値や表であらわせるものでもなく……
ただ、誰が読んでも分かりやすい文章、美しい文章というものは確かに存在するんですよね。
そういう素晴らしい文章を書けるようになりたい、なるべく早い方法で。

ということで、最も効果的かどうかは分かりませんが、古より確実だと言われている方法、文章の「模写」をしてみたいと思います。
せっかくの秋ですし。何か、新しいことをやってみたい。
文章の模写、初体験。
ちょっと面倒臭そう。

うーん、どんな文章にしようかなあ。
模写するなら、やっぱり文章の上手い人。
好きな作家、好きな作品、興味のあるジャンル、etcetc.
きりがないので今回は、我が国の誇る名作を模写してみたいと思います。
文豪の作品を模写すれば、文章が上手くなるご利益もありそうだし。


名作を模写しよう

・誰もが知っている名作
・自分が好きな作品

この二つの条件で作品を選び、文章力の向上を目指したいと思います。
私の理想としては、誰が読んでも分かりやすい、読みやすい文章を目指したいところ。
この場合、近代文学とかがいいのかな。
だとすると、「誰もが知っている名作」は、インターネットがあれば誰でも閲覧可能な「青空文庫」から探そうと思います。


(長考)


よし。
インスピレーションで、森鴎外の『舞姫』を模写してみることにします。
優雅で華麗で格調高そう。


手書きとパソコンどちら?

これは、おそらくどちらでもトレーニングの効果としては、変わらないと思います。
模写で大事なのは手書きかパソコンかということよりも、いかに真剣に一文に向き合えるのか。
文章の構造、表現方法などを理解しながら模写していけるのか。その辺りがポイントなんじゃないかと思います(本当は、手書きで腱鞘炎になりたくないだけ)。

そう。
大事なのは、どれだけ真剣に名文と向き合えるかなのです!!


画像は藤城清治さんの作品


森鴎外『舞姫』

石炭をば早や積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと靜にて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ來る骨牌仲間も「ホテル」に宿りて、舟に殘れるは余一人のみなれば。

森鴎外『舞姫』(青空文庫より)

うん、うん……。なるほど。

 五年前の事なりしが、平生の望足りて、洋行の官命を蒙り、このセイゴンの港まで來し頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、當時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、

森鴎外『舞姫』(青空文庫より)


……森鴎外やめます。

名文なのは分かるのですが、ちょっと古い。
令和のライター向きではない。
舞姫好きだけど。
主人公はクソ野郎だけど。
これ、名作なら何でもいいわけでもなさそうですね。

現代人でも違和感なく読めるような、
文章の癖を盗めるような、
そんな作品が模写には適していそう。
私に、森鴎外は格調が高すぎました。


画像は藤城清治さんの作品


宮沢賢治『銀河鉄道の夜』


我ながら、いいチョイスではないかと思います。
昔のアニメ映画も好きなんですよね、銀河鉄道の夜。
プラネタリウムも良かったです、銀河鉄道の夜。
ではでは、レッツゴー。

一、午后の授業
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊るした大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。
 カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジョバン二も手をあげようとして、急いでそのままやめました。たしかにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろはジョバンにはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(青空文庫より)


おお、いい感じ。
現代でも通じる名文、表現の美しさ。音読すると、さらにロマンティック。
一文は結構長め。句読点は多めなんですね。

でも、文書力が身に付くかは、まだ分かりません。
パソコンだと早い速度で入力してしまうので、もっと時間をかけて嚙み砕くように模写していくのがスキルアップに繋がりそう。
手書きでやった方が、有効かも。でも、腱鞘炎にはなりたくない。

 ところが先生は早くもそれを見附けたのでした。
「ジョバンニさん。あなたはわかっているのでしょう。」
 ジョバンニは勢よく立ちあがりましたが、立って見るともうはっきりとそれを答えることができないのでした。ザネリが前の席からふりかえって、ジョバンニを見てくすっとわらいました。ジョバンにはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまいました。先生がまた云いました。
「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」
 やっぱり星だとジョバンニは思いましたがこんどもすぐに答えることができませんでした。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(青空文庫より)


先生いいキャラですね。
雰囲気があります。この先生の授業は、きっと面白い。

1985年制作の劇場用アニメもおすすめ


勢いに乗って、もう一作品。

芥川龍之介『蜜柑』


 或曇った冬の日暮である。私は横須賀発上り二等客車の隅に腰を下して、ぼんやり発車の笛を待っていた。とうに電燈のついた客車の中には、珍らしく私の外に一人も乗客はいなかった。外を覗くと、うす暗いプラットフォオムにも、今日は珍しく見送りの人影さえ跡を絶って、唯、檻に入れられた小犬が一匹、時々悲しそうに、吠え立てていた。これらはその時の私の心もちと、不思議な位似つかわしい景色だった。私の頭の中には云いようのない疲労と倦怠とが、まるで雪曇りの空のようなどんよりした影を落していた。私は外套のポッケットへじっと両手をつっこんだまま、そこにはいっている夕刊を出して見ようと云う元気さえ起らなかった。
 が、やがて発車の笛が鳴った。私はかすかな心の寛ぎを感じながら、後の窓枠へ頭をもたせて、眼の前の停車場がずるずると後ずさりを始めるのを待つともなく待ちかまえていた。ところがそれよりも先にけたたましい日和下駄の音が、改札口の方から聞え出したと思うと、間もなく車掌の何か云い罵る声と共に、私の乗っている二等室の戸ががらりと開いて、十三四の小娘が一人、慌しく中へはいって来た、と同時に一つずしりと揺れて、徐ろに汽車は動き出した。一本ずつ眼をくぎって行くプラットフォオムの柱、置き忘れたような運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を云っている赤帽――そう云うすべては、窓へ吹きつける煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行った。私は漸くほっとした心もちになって、巻煙草に火をつけながら、始めて懶い睚をあげて、前の席に腰を下していた小娘の顔を一瞥した。

芥川龍之介『蜜柑』(青空文庫より)


龍之介もいいですね。
さすが。冒頭を書き写すだけでも、テンポの良さが伝わってきます。
この心地よいリズム、天性のものなのでしょう。
やはり、令和の世でも読み継がれる文豪は違う。



ふむ。
名作の模写、なかなかいいかもしれません。
始めたばかりですが、抑えるべきポイントとしては

○ただ写すのではなく、噛みしめるように模写をする。
○声を出しながら、書き写すのも有効。
○意識的に、ゆっくりと時間をかけて写す。
○文章の構造や、比喩表現などを理解しながら写す。


こんな感じで、しばらくやってみたいと思います。
しかしこれ、一日何文字くらい模写するのがベストなんだろう。
多ければ多いほど良さそうだけど、頭が疲れてきて機械的に書き写すだけになったら意味がない。


よし。
とりあえず、一日十五分模写をしていこう。
やり続ければ、文章力は確実に上がりそうな予感。
ポイントは、手と頭を同時に使って模写すること。
目指せ、賢治と龍之介の文章力!!


読書の秋、創作の秋、文章力の秋。
みなさんも、良かったらやってみてくださいね。


※文章力についての別記事になりますが、
この3つをおさえれば、とりあえず小説は書ける!!の方も何卒よろしくお願いいたします!!それでは、また!!!!


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