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〖短編小説〗言葉にしたからには。

小さい頃から、言葉にしたことは絶対に曲げたくない人間だった。
決めたことを覆すことが嫌いだったのだ。

そう教えられたわけではなく、気づいたらそう感じるようになっていた。

「ピーマン食べれる」

その言葉を初めて口に出した時から、ピーマンは嫌いなんて言わなくなった。

学生になって、部活動を決める時。
バスケットボールに興味があって、やりたいと両親に言った。
レギュラーにはなれなかったし、練習だって恐ろしく苦しかったが、やりたいと言った限りには辞めなかった。

社会人になった。
「明日までには、やりきります。」
任された仕事は、いつまでに終わらせるのかを宣言し、確実にやり切った。

全ては自分が決めたことで、覆すなんてありえなかった。
それが自分の美徳だと思ったし、そう生きていれば正解だと思っていた。

だから、人生で初めて好きな人に告白した時。

「ずっと一緒にいてください。」

こう言ったから。
僕は絶対にずっと一緒に生きていけると思った。
最後まで助け合って、ずっと一緒にいようと決めた。

だけど昨日、僕は初めて知ったんだ。
自分1人で決められることばかりじゃないということを。
自分1人が決定権を握っている訳では無いということを。

「一緒にいる」ということを選択出来るのは、僕一人だけじゃなかったんだ。

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