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「移動(mobility)」って何ですか?

TOKECOM新体制の各局面について教員が綴るエッセイ・シリーズ。今回は光岡寿郎先生に書いていただきました。それでは光岡先生、お願いします!

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前回のポストでは、「メディア×国際」の掛け合わせについて紹介したけれども、今回は国際コミュニケーション学科の学びのコンセプトである「移動」について少し考えてみよう。

2020年は新型コロナウイルスの流行の影響で移動が制限されたことで、逆に「動けないこと」がどれほど不便なことか感じた人も多いのではないだろうか。例えば、僕も国際学会に参加できなくなったし、昨年の今頃は海外からの供給に依存していたためにマスクや医療用ガウンがなくなったりしていたよね。このように、現在僕らの生活は、人、商品や情報の絶え間ない国境を越えた移動に支えられているんだ。

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それもあってか2020年、トヨタの豊田章男社長は年頭あいさつのなかで、トヨタはもう自動車会社ではなく、「モビリティ(mobility)・カンパニー」になるのだと発言している。これまで自動車メーカーは物理的な移動を支える良いクルマを開発していれば良かったけれども、自動車もインターネットやAIといった情報技術と一体化し、情報の移動と地続きになっていくなかで、移動を取り巻く環境そのものの提供が今後は生き残りに必要だという危機感を抱いたからだろう。だからAppleも電気自動車の開発に参入しているわけ。これは、自動車業界というより産業構造全体の変化だよね。

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顔認証に基づいて最適化された情報を提供するタクシー内のタブレットは、すでに進行している移動とメディアの一体化の事例だ。

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移動の隙間を埋めるため、空港には数多くのスクリーンが設置されている。

一方で、この移動というコンセプトは元々英語の「mobility」から来ているわけだけれど、この単語にはもう一つ「流動性」という訳語がある。これまで社会学では「流動性」というと、社会階層の流動性のことを意味してきた。分かりやすくというと、身分が原則士農工商に固定されていた江戸時代は社会的流動性が低く、現在は自身の努力や勉強を通じて、収入や社会的評価の高い職業に就けるので流動性が高まっているんだね。

一昔前までは、この社会的流動性は、国内での階層移動を意味してたわけだけれども、いまでは大学でコミュニケーションに十分な英語力と特定の分野の専門性を身につけることさえできれば、国を越えてより高い収入や社会的使命のある仕事に携わることができる。その意味では、社会的流動性もまた国境を越えて高まっているんだ。

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だから、大学で「移動」について学ぶってどうなんだろう、就職活動でどう説明すれば良いんだろうなんていう不安は多分いらない。なぜなら、皆さんが大学卒業後に巣立つ社会を生きることとは、移動を生きることそのものなのだから。言い方を変えれば、基礎的な英語力を背景に、移動についての専門性を持つこと、それは、これまでの経済や経営を学ぶことと同じか、それ以上に社会で、企業で必要とされる汎用的な能力になることは間違いない。関心を少しでももった方は、ぜひオープンキャンパスで会いましょう。

(光岡 寿郎)

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