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P294. 作品紹介『山田と田中-前編-』

司会「えー、と言うわけで。今年も年の瀬にこれだけ多くの山田さん、
そして田中さんにお集まりいただき嬉しく思います。
それではこれより・・2021年、山田と田中選手権を開催いたします!!」

今年もこの季節がやってきた。
俺の村では毎年この季節になると山田という苗字の人間と、
田中という苗字の人間を集めてそれぞれでコンビを作りナンバー1を決める「山田と田中選手権」が行われるのだ。

と言ってもバトルロワイヤルみたいな危険な戦いをするわけではない。
借り物競争とか2人3脚とか、さしずめ大人の運動会みたいなものだ。

昨年までずっとうちの親父がディフェンディングチャンピオンとして山田の頂点に立っていたのだが、今年はギックリ腰をやっちまって仕方なく息子の俺が我が家の代表としてこのくだらない戦いに挑んでいるという訳だ。

司会「それでは皆さん、コンビを決める抽選番号はお持ちですね?番号1番の方・・はい、ではあなた達がペアです。続いて2番の方・・」

こうして番号で振り分けられたペアの田中とコンビを組んで戦うのだが、
ここで勝負の50パーセントは決まると言っても過言ではない。
なにせ2人の共同戦線だからな。
俺の番号はもうすぐ、さてさてどうなることやら・・・

司会「21番の方・・・ステージへどうぞ」

来た、俺の番号だ・・・俺のペアの田中は・・

ぺこ「おー、山田君だー♪よろしくねー、イェーイ☆」

・・・・・・・・・終わった。そうか、こいつも田中だった。

俺の幼馴染で、いつもマイペースでのんびり屋の田中ぺこ
ハッキリ言ってこういう競技には1番向いていないタイプだ。
まぁ、優勝できなかったからといって死ぬわけじゃない。適当にやって、
さっさと帰って家の大掃除でもやろう。

武蔵「おーおー、ずいぶん鈍そうなコンビだなぁ。二郎」

げ・・・こいつもいやがったのか。山田武蔵
俺を目のかたきにしている、ジャイ○ンみたいなヤツだ。

武蔵「今日こそ白黒はっきりさせてやるぜ、山田二郎。俺が勝ったら二度とお前には山田を名乗らせねえ!ただの二郎だ。恥をかきたくなけりゃさっさと帰りやがれ。はっはっは・・・」

元々こんな名前にこだわりなんかないっつーの。
関わるとロクなことがないからこういうのは流すに限る・・・

ぺこ「二郎君を馬鹿にするなよー、絶対負けないぞ、バーカバーカ」

武蔵「何だと!・・・フン、いい度胸だ。本番覚えてやがれ!!」

うわー、思いっきり関わっちゃったよおバカ・・・ったく、仕方ねえな!!

こうなったらやるだけやってやる。親父がどうとか武蔵がどうじゃない、
俺の力で何ができるのか今年最後の挑戦だ。
ぺこ、足引っ張るんじゃないぞ!

ぺこ「オッケー、頑張ろう、イェーイ♪」

・・・うん、まだ可能性は50パーセントある、はずだ・・行くぞ!


明日に続く。


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