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私はどこで生きていく?【飯綱町の夜喫茶・消灯珈琲「問い会」第0回イベントレポート】


長野県・飯綱町で、2024年4月にオープンした夜喫茶「消灯珈琲」。

みんなの場所ではなく、あなたにとっても特別な場所。居場所。この場所が、あなたの何番目でも良いので居心地の良い特別な場所になれたら。
ー店主のnote 『生まれたまちで、喫茶店を開いた。』より

店主の中嶋彩花(なかしまあやか)は、飯綱町出身の20代。コロナ禍をきっかけに地元にUターンし、「誰かの居場所になる場所をつくる」ことを目指して、シェアハウス、宿屋、喫茶店を運営しています。

喫茶の名前は「消灯珈琲」
火〜木の17時から22時半、土曜のモーニング営業をしている。

そんな彼女が、とある夜にお客さんから投げかけられた「私はどこで生きていけばいいんだろう。あなたはどうして『ここで生きていく』と決められたんですか?」という「問い」。

自分と同世代の人たちが、「いま」をどう選択して行きているのか。モノゴトをどう捉えているのか、聞いてみたい。話してみたい。そして自分自身にも”問い”を投げかけたい。

そうして生まれた「問い会」。2024年5月28日(火)に開催された第0回のテーマは、「私が生きていく場所」。夜の喫茶店を舞台に、ゆったりと流れる時間の中で紡がれた言葉たちをレポートします。

あなたはどこからきて、いまどこにいるの? 


「問い会」の定員は7人。参加者たちは、「消灯珈琲」の二階に用意された椅子に腰掛け、ちいさな輪を作ります。参加者が揃ったら、まずは主催の彩花さんから挨拶があり、「問い会」の趣旨が説明されました。

彩花さん 「『問い会』は、”生きにくさ”を軸に、毎月ひとつの“問い”をテーマに話をする会です。『こうじゃなきゃいけない』を言い合う場ではないし、“問い”に対する結論を出すことが目的ではありません。同世代の人たちが、『いま』をどう選択して生きているのか、モノゴトをどう捉えているのか。話したり聞いたりして、そんなのもいいよね、こういう考えもあるんだ、と知りながら、自分自身が“問い”の答えを見つけていく場になればと思っています。」

彩花さん 飯綱町出身。地元にUターンし「消灯珈琲」をオープン。シェアハウス『Ringo荘』、まちやど『丸為旅館』の運営など、「居場所づくり」に取り組む。

挨拶のあとは、参加者たちの自己紹介。それぞれが、自分のこれまで過ごした場所と、いまいる場所、いま考えていることを話します。

陸斗さん 飯綱町出身、飯綱町在住。長野県内のハウスメーカーで営業をしており、日々お客さんと、「どういう暮らしをしたいか」という対話をしている。

桃子さん 飯綱高原で幼少期を過ごし、各地を放浪し飯綱高原に帰ってきた。「momo」名義で音楽活動を行う。

ずっとこのまちにいる。地元に帰ってきた。やりたいことを追ってここに辿り着いた。次の行き先を探している。

参加者のいまの「居場所」や、今回の会に参加した目的もそれぞれです。一分に満たない自己紹介を聞くだけでも、「この人はどんな人なんだろう?」と、もっと話を聞いてみたくなります。

私が生きていく場所ってどこだろう?


さて、いよいよ「問い」に移ります。
第0回のテーマは、「私が生きていく場所ってどこだろう?」

彩花さんの進行に沿い、一人ひとりの話を聞いていくかたちで会が進んでいきました。

彩花さん 「あなたが今生きている場所はどこですか? 今の暮らしで気持ちは満ちているのか、それとも悩みを抱えているのか。悩みではなくても、なにか抱えているものはありますか?」 

彩花さんからの「問い」に対し、こんな言葉が紡がれました。

配られたメモ用紙に、自分の気持ちを書き出す参加者も。

「百人近くいた同級生はみんな町を出て、地元に残っている人は数えるくらいしかいません。ほかの町の方が楽しいことはいっぱいあるかもしれない。でも、僕は飯綱町にいた方が幸せな気持ちになれるんです。この町の良さを共感できる仲間がほしいです。」

「自分はもともと田舎の方の出身なので、まさか自分が飯綱で暮らすことはないだろうと思っていましたし、なんなら暮らしたくないとさえ思っていました。でも、飯綱町に知り合いが増えれば増えるほど、この町に愛着が湧いてきて。」


宏樹さん 長野県上田市出身。飯綱町で活動する同年代の彩花さん、陸斗さんと出会い、自分達で地域にアクションを起こそうと一般社団法人「わけしょ」を立ち上げる。

「俺にとっての『生きる場所』は物理的な『場所』じゃないのかも。これまで2年半海外を放浪していたんですが、いろんな国や町を転々としすぎて、そして、どこもいい場所すぎて、逆に俺はどこで生きたいのかわからなくなって、日本に帰ってきました。今の仕事も暮らしも楽しいですが、100%ハッピーじゃないというか、『本当にここでいいのか?』という疑問がずっと自分の中にあります。」

「新しい仕事、新しい土地、一人暮らし。ワクワクした気持ちで、地元を離れて飯綱町に飛び込みました。でも、思っていた通りにはならなくて、自分がいまどこで生きているのかずっとわからなかった。そんな時に、消灯珈琲ができたんです。そこで同年代の仲間に出会えて、ようやく、ここにいてよかったなと思えた。この町での暮らしが、やっとおもしろくなりそうな気がしています。」

その場でぽつりぽつりと紡がれていく言葉に、参加者たちは静かにうなづいたり、微笑んだりしながら耳を傾けます。

りおさん 埼玉県出身。ログハウスの事業に携わるため、一年前に飯綱町に引っ越してきた。飯綱町の雰囲気と町並みが好き。

「私は、みんなによく『いまどこにいるの?』と聞かれます。いまの私は、一年間の半分は長野、残り半分は渡鳥のようにその時の自分が行きたい場所で暮らしています。移動してばかりだから、その土地にいる人とはたくさん話せるけれど、自分自身が定まっていない感じがします。でも、それを良くないことだとは思っていなくて。」

「どこかに根を据えて生きる生き方を、今はしたくない。どこででも生きていきたいんです。遊牧民になりたい。でも、『ホーム』だと思える場所はほしい。私にとっての『ホーム』は、『ただいま』と言いたい人がいて、『おかえり』と迎えてくれる人がいる場所です。」

萌乃さん 神奈川県出身。今年の3月に長野市に移住。おにぎり屋でアルバイトをしており、「消灯珈琲」では「萌乃の朝ご飯」を企画。今は「したいことをしている時期」。

「私はこれまで、サラリーマンとしてずっと同じ会社に勤めていました。でも、転職して長野にやってきて、どこかに勤めつつ自分のやりたいことをしている人たちや、自営業の人たちと出会う機会が一気に増えました。いまの私は、サラリーマンと、『やりたいことをしている人』の半々で生きています。これからはもっと、好きなことを頑張っている人の方に傾きたい。」

「居心地のいい場所」ってどんな場所だろう?

最初の「問い」について話したあとは、そこから派生したさらなる「問い」について参加者たちが語り合います。

彩花さん 「どんなところに何があれば、その場所を好きになりますか? あなたにとって、居心地のいい場所ってどんな場所ですか?」

「東京では、近所の人が誰なのかもいまいちわかっていなかったし、コミュニケーションをとってしていなかった。でも、信濃町に来てからは、近所の人が『玉ねぎ、玄関に置いとくね』と家を訪れるようになって。『地元』ってこういうことなのかな、心地いいな、と感じています。」


詩恵さん 東京で生まれ育ち、今年の3月に信濃町に移住。飯綱町を訪れるのは今回が初めて。クラウドファンディングの会社で営業職をしており、積極的に交流の場に出るようにしている。

昔は地元のありがたみがわからなかったし、社会人になってからは地元を出てみたいなと思っていた。ずっと同じ場所にいたから分からなかったけど、移住してから新鮮な気持ちで『当たり前』の有り難さを感じることができています。

「僕にとっても、居心地の良さと人との関係性はイコールですね。ずっとここで暮らしているから、近所の人と会った時に自然と会釈をする。その関係性が心地いいです。」

「いつもいろんなところに行くけれど、気の許せる人さえ周りにいれば、『場所』は問わないですね。それはパートナーかもしれないし、バイブスが合う人かもしれない。そういう人に出会えれば、その場所に長くいたいと思えます。」

武利さん 京都府生まれ埼玉育ち。今年の4月に飯綱高原に移住してきた。飯綱高原の山の中にある学校で先生をしている。

「今の暮らしに不満があるわけではないんです。でも、ずっと同じ場所にいると決めるのが怖い。たとえば、『最低5年はそこにいてください』と言われるとその準備はできない。どちらかというと、遊牧民的に生きたいのかも。」

「私も、すこし前まではいつもすぐどこかに行くつもりでいました。今でも、どこでも生きていけると思っています。人が好きだから、どこにでも飛び込んでいける自信があった。でも、それは同時に不安でもあって。」


主催の彩花さんも、進行役として参加者に話を振りつつ自分の気持ちを参加者たちに打ち明けます。

彩花さん「飯綱に帰ってきて、最初に出会った人が、私だから頼みたいことがあると言ってくれた。目の前にカードを出してくれた。ただそのカードを選び取るか取らないかで、私はいまここにいます。『ここにいる』って制約を設けた方が、いまの私は生きやすかった。」

彩花さんから「〇〇さんはどうですか?」「〇〇さんの考え方も知りたいです」とマイクを手渡されることもあれば、誰かの話を聞いた参加者がそっと手を挙げて「自分は……」と話し始めることも。

「問い会」で行われるのは、「対話」のもう少し手前。いつもの暮らしから少し離れた場所に自分を置いてみて、投げかけられた「問い」に対して自分の中にモヤモヤと生まれてきた言葉をそっと紡いで、声に出してみる。そんな時間です。

自分の中に生まれた「問い」を抱えて、それぞれの暮らしに戻っていく

「問い会」が終了してからは、参加者たちは一階に移動し、「消灯珈琲」のドリンクや特製の夜食メニューをいただきながら交流会に移ります。話しきれなかったことや聞きたいこと、気軽な雑談や近況をそれぞれが自由に話します。

今回の交流会では、飯綱町はもうすぐ田植えの季節に入るという話から、県外から長野に移住者してきた武利さん、萌乃さんの二人が田植えに参加することになったり……、

恐る恐る田んぼに足を踏み入れる二人
青空の下、飯綱の人たちに混ざって田植えに挑戦


「momo」名義で音楽活動を行う桃子さんのライブの告知から、早速翌月に「消灯珈琲」でも弾き語りLIVEが企画されたりと、それぞれの参加者が飯綱町に新しい「居場所」やつながりをつくるきっかけになったようです。

momoさんの弾き語りライブは今後も不定期で開催予定

「問い」に対してはっきりした答えを出すのではなく、いまの自分に向き合い、同じように悩んでいる人の暮らしや考え方をちょっぴり覗き見て、「じゃあ、自分はどうしよう」と自分の暮らしに戻っていく。

「問い会」から生まれた言葉や出来事は、参加者それぞれの中に残り、その先につながっていくはずです。

撮影:中嶋真也
執筆・構成:風音

「問い会」主催・企画:一般社団法人わけしょ


<次回の「問い会」>

問い会 第1回《 (未定) 》…消灯珈琲のInstagramにて随時更新

問い会とは…
“生きにくさ”を軸に、毎月ひとつの“問い”をテーマに話しをする。結論を出すのではなく、同世代が今をどう選択して生きているのか、モノゴトをどう捉えているのか、話したり聞いたりして自身が“問い”の答えを見つけていく。

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日にち 2024/7/30(火)
時間 19:00-21:00(1hトークセッション、1h茶話会)
場所 消灯珈琲
参加費 1000円(ワンドリンク付)

※席数が少ない為、定員に達し次第募集は締め切ります
※当日、通常の喫茶営業はしておりません
※分からないことや質問等気軽にDMでご連絡ください

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「一般社団法人わけしょ」では、飯綱町で行われる若者向けのイベントや取り組みを発信するLINEオープンチャット「わけしょのつながり」(※本名での登録をお願いしています)を運営中です。飯綱町に興味がある、関わりたい20代の方は、HPのフォームからお問合せください。

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