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部下育成に関する5つの基本

部下の育成は、多くの上司が抱える課題です。
「部下がなかなか育たない」
「何度も同じ間違いをする部下がいる」
「うちの部下は自分の頭で考えようとしない指示待ち人間だ。」

このような悩みを抱える上司の方、多いのではないでしょうか。
今回は、業種業態問わず使える部下を育成するにあたっての5つの基本的な考え方について、部下をお持ちの上司の方に向けてお伝え致します。

上司と部下の間での信頼関係の醸成(誰もが守れる約束の設定と順守)

みなさんは部下のことを信頼していますか。
そもそも部下に対する信頼はどのように醸成されるのでしょうか。

信頼は「小さな約束を守ること」の積み重ねで出来上がってきます。

小さな約束を常に守ることが出来る部下であれば、上司であるあなたも、その部下のことを信頼できるのではないでしょうか。

会社の中では、業務状、上司と部下の間で様々な約束が交わされます。

「明日の15時までに、提案書を作成し、自分の承認を得て下さい」
「朝礼終了後、15分、各自担当する場所を掃除すること」
「今月は、売上3000万円の達成を目指して下さい」
「毎日18時までに日報を提出して下さい」


部下は、それぞれに能力や経験が異なるため、確実に達成できる約束と、確実に達成出来るかどうか不明瞭な約束に、違いが出てきます。

上司と部下の間で信頼関係を醸成する上で、一番初めに実施頂きたいことが、『上司が、誰もが守れる約束(ルール)を部下に設定し、それを100%守らせる』ことです。

例えば、上記の例で言えば、以下の2つが「誰もが守れる約束(ルール)」となります。

「朝礼終了後、15分、各自担当する場所を掃除すること」
「毎日18時までに日報を提出して下さい」


一方、以下の2つは、その人の能力や自分以外(お客様等)の存在によって「守れないことが発生する約束(ルール)」です。

「明日の15時までに、提案書を作成し、自分の承認を得て下さい」
「今月は、売上3000万円の達成を約束できますか」


上司と部下の間における信頼関係を醸成する上で、まずは「誰もが守れる約束(ルール)」を明確に設定し、100%その約束を守れる状態を作ることが、極めて重要です。

この時、「誰もが守れる約束」を守ろうとしない部下がいるとすれば、その部下は、上司である「あなたとの約束を守ろうとしない部下」すなわち「あなたのことを上司として認識していない部下」です。

部下があなたのことを上司として認識していなければ、当然、上司部下の信頼関係を構築することが出来ません。

上司であるみなさんは、上司と部下という組織内における役割を認識させ、この役割に基づく信頼関係を醸成するためにも、まずは「能力に関係なく誰もが守れる約束」を明確に部下に対して設定し、それを部下に守らせることから始めて下さい。

これが出来て、次のステップに進むことができます。

明確なゴール設定

上司と部下の関係性が構築された後、部下育成に必要となることが、部下に対して明確なゴールを設定することです。

「部下には、出来るだけ早く一人前になって欲しい」

と考える上司がほとんどですが、『出来るだけ早く』とは『いつまで』なのか、『一人前』とは『どのような状態』を指すのか、明確に部下に伝えている上司は多くありません。

部下に『いつまでに』『どのような状態に』なって欲しいのか、上司は、これを明確にする必要があります。

企業によっては、「スキルチェックリスト」や「星取り表」という名称で、仕事において必要なスキルや知識を分解した上で、能力の「見える化」を行っていることがありますが、このようなゴールの見える化の仕組みを構築することが必要です。

部下が自分自身で、『一人前』に至る工程を認識し、いつまでにどの段階までスキルや知識を向上させることが求められているかが理解できていれば、部下は自ら考え、自らの能力を高めるための動きを採ることが可能となります。

一方で、上司が部下に求めているスキルや知識が明確になっていない中、『わからないことがあれば、いつでも聞いて欲しい』や『上司や先輩の働く姿を見て、そこから業務ノウハウを吸収して早く一人前になって下さい』という指示では、部下は、自分が求められていることが不明確になり迷ったり、思考停止に陥り、自分の頭で考えなくなります。

上司部下の関係性を構築するための『誰もが守れる約束』の設定の次に、部下育成のために必要な要素は、この『明確なゴール設定』になります。

ゴールに対する進捗確認

『明確なゴール設定』が部下育成のために必要だとお伝えしましたが、ゴール設定後、部下がゴールにどれだけ近づいているのか「進捗確認」を行うことも重要です。

進捗確認には、大きく分けて2つがあります。

それは、「部下が自ら認識できる進捗確認」と「上司がフィードバックすることで部下が認識できる進捗確認」です。

進捗確認における理想は、上司が明確なゴールを設定した後、「部下が自ら進捗確認」を行える状態です。そのためには「明確なゴール設定」の後、「常にゴールに対する進捗が計測できる状態」と部下が自ら「達成状況が常に確認出来ている状態」が求められます。

しかし、上司から見て明確なゴールを設定したと思っていても、部下の経験や能力によって、明確さの度合いが異なるケースがあることを上司は見落しがちです。

例えば、「今月の営業活動において売上3000万円の達成を約束すること」という明確なゴール設定を上司が行ったとしても、そもそも営業経験がない部下、業界経験がない部下には、売上3000万円達成の難易度や、そこに至るプロセスが見えずに、目標に対する進捗を「部下が自ら進捗確認」することが困難となります。

このような場合、「部下が自ら進捗確認」が困難となっている状況(ゴールに至るプロセスについて迷いがある状況)を上司が把握し、ゴールに至るプロセスに対して、手前のゴールを設定し、部下が自ら進捗を確認できる状況を構築する必要があります。

「今月の営業活動において売上3000万円の達成を約束する上で、まずは、1週間で20件の商談を約束すること」といった、部下が自らの進捗がイメージしやすいゴールを最終的なゴールからの分解で明確にしていくことが求められます。

「誰もが守れる約束」「明確なゴール設定」、その次は、上記「ゴールに対する進捗確認」が部下育成の要諦です。

プロセスに介入しない(部下に自ら考えさせる)こと

「ゴールに対する進捗確認」とは、設定されたゴールに対して、現時点で〇なのか×なのかを部下自身に認識させることになります。
 〇であれば、そのまま進み、×であれば、出来ていないことを認識し、なぜ出来ていないのか、どのようにすれば出来るようになるのか、部下が自ら考え、次のゴールを目指して進んでいくことで、部下は×を〇に変えることが出来る、すなわち、『出来なったことが、出来るようになる』=『成長する』ということになります。

この時、上司が部下に対する姿勢として重要なことは「部下のゴールに向かうプロセスに介入しない」ということです。

上司は、経験があるが故に、部下の仕事のプロセスを見た際に、このままだと部下がゴールに到達できないことに気付くことが多くあります。
期限を向かえる前に、部下がゴールに到達できないことに気付く上司。

そんな時、上司が部下のプロセスに介入してしまうことがあります。

「なんでそんなことやっているんだ。こうやればいいじゃないか」
「それじゃだめだ。もっとこうしたほうがいいだろ」
「今のままだと目標に達成できないだろ。そのやり方はダメだ。」

上司のみなさん、このように上司が部下のプロセスに介入することで、『上司から言われた通りにやっておけば、とりあえず目標達成できなくても許されるだろう』という思考に部下を追いやっていませんか。

上司は、部下に対して「明確なゴールを設定」した後、期限を向かえた際の「ゴールに対する進捗確認」をするまで、部下の「プロセスに介入しない」ことが大切です。

上司が部下の「プロセスに介入しない」ことで、進捗確認の際、進捗が悪かったことを、自分のやり方が悪かったせいであると受け止めることができ、自分でプロセスを考える責任を感じることが出来ます。
一方、上司が部下の「プロセスに介入する」と、「上司から言われた通りにやったのにできなかった。これは上司のプロセスに関する指示に問題があったからで、自分の責任ではない」という思考となり、自分で次の改善プロセスを考える責任が生じなくなります。

上司が部下の「プロセスに介入しない」ということは、部下の成長機会を作る上で、上司にとって必要な姿勢であり、かつ、上司にとって我慢が求められることです。

部下の成長のためには、上司の「プロセスに介入しない」という我慢が必要であること、上司のみなさんは認識頂ければ何よりです。

適切な教育を行うこと

上司は部下の「プロセスに介入しない」ということをお伝えしましたが、もちろん、知識も経験もない部下に対して、業務に関する必要な情報を与えない中で部下に仕事を進めさせることは、部下の迷いにつながります。

「明確なゴール設定」の後、ゴールに向かう上での必要な情報については、教育によって部下に与えることは必要です。

業務マニュアル、勉強会、各種研修により、業務上必要な情報を体系立てて部下に伝え、テストで部下の教育に対する理解度を判定する仕組みを整えると、育成スピードが上がります。

この時、「ゴール設定」「進捗確認」が実施されない中で、「教育」だけを行ったとしても部下の育成は行えません。

「教育」はあくまで部下がゴールにたどり着くための「手段」「武器」であることを上司は理解した上で、必要に応じて実施することが求められます。

部下育成に関する5つの基本的考え方(記事のまとめ)

これまで
(1) 上司と部下の間での信頼関係醸成(誰もが守れる約束の設定と順守)
(2) 明確なゴール設定
(3) ゴールに対する進捗確認
(4) プロセスに介入しない(部下に自ら考えさせる)こと
(5) 適切な教育を行うこと

という5つの部下育成に関する基本的考え方をお伝えしました。

上記5つの項目について改善を繰り返すことが、部下育成力向上となりますので、あらためて上司のみなさんは上記5つについてチェック頂き、部下がみるみる育つ環境を作って頂ければ幸いです。

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