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【読書ノート】『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論~ (光文社新書)』

歴史の流れを考える上で面白い箇所があり、書き留めておきます。

歴史家ウィリアム・ハーディー・マクニールは、多神教だった神が、一神教にアップデートされた原因について面白い仮説を提供してくれる。  集団の規模が上がり、中央集権国家が起こり、官僚が地方統治を行う時代が来たことで、土着の宗教を束ねたより次元の高い、より強い権力を持った神が必要になった。この中央集権的な神こそが一神教への発展だったとマクニールは主張する。  古事記や日本書紀でも、出雲地方の神を、天照大神などの皇祖神の流れと同化させる試みがなされている。日本は明確な一神教までには至らなかったが、大和朝廷の成立が土着の神を統合していった歴史は残っている。  さらに、奈良・飛鳥時代に仏教によって国を治め始めるが、これも多神教的な宗教である皇祖神崇拝から、相対的に神が少ない仏教が地方統治とさらなる中央集権化に利益をもたらしたと解釈することができるだろう。  そして現在は、宗教は世界中で紛争を生んでおり、その機能が限界を迎えている可能性が指摘されている。つまり、人類の集団規模が、宗教でまとめられるサイズを大きく超えてしまったのではないか?という指摘である。

『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論~ (光文社新書)』p.151

集団を統治するため、人は、宗教、度量衡、言語、貨幣、と様々なものを作ってきました。

その中で上記にある
「人類の集団規模が、宗教でまとめられるサイズを大きく超えてしまったのではないか?」
という問いは、非常に興味深い内容でした。

今、私たちの世界は、サイバー空間での結びつきや、非中央集権的な仮想通貨が生まれ、AIの同時通訳によって言語の垣根が低くなり、集団の規模がより拡大するツールが揃いつつあります。

国民国家という概念が生まれてきたように、今後、私たちは、国家の枠組みを超えた概念で、更に大きなコミュニティを構築することが出来るようになるのでしょうか。

世界の人口:81億人
世界のインターネット利用者数:53億人
世界で一番人口が多い国:インド/14億人
世界で一番信者が多い宗教:キリスト教/20億人
世界で一番使われている言語:英語/13億人
世界で一番従業員が多い会社:ウォールマート/220万人

現在、サイバー空間の特定のコミュニティに強い帰属意識を持つ人は少ないですが、今後、言語の垣根がなくなり、サイバー空間で特定のコミュニティに所属するという感覚が強まることはあり得る話しです。

私たちは、宗教や国家、企業とは異なるアイデンティティをサイバー空間上の持つ日はやってくるのでしょうか。


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