会社とは自己実現のための道具なんだ
P.F.ドラッカーが最初にマネジメントについて触れたのは、1954年の著書「現代の経営」(ダイヤモンド社)においてです。
そしてこの本は私がはじめてドラッカーの思想にふれた「入門書」のような本で、もはや表紙は色褪せ赤ペンやマーカーだらけでボロボロに近い状態になっています。
そしてその後、体系的にマネジメントを書き上げたのが、1973年に出版した「マネジメント 課題・責任・実践」という全3巻、1,058ページの大作です。
その本の最後の下巻の、最終章「結論」にこのようなフレーズがあります。
「組織は自己実現のための手段だ」というのは、「主人公は人であり、組織は人が幸せに生きるための道具にすぎない」ということになります。
これこそが、哲人ドラッカーの教えの根源にある思想です。
そもそも人類は、社会的な目的を達成するための手段として組織を発明したのであり、その基盤にある原理は「私的な強みは公益となる」ということです。
すなわち「人の強みを生産的なものにする」ことこそが、マネジメントの正統性の根拠だと述べています。
さらにその基盤にあるのは「自由」です。
これに代わるものは「全体主義」です。
あらゆる活動、あらゆる個人、組織が同じことを繰り返し、一つの集団によって支配され、同じ価値観と教義を強要されるという体制は、人間の精神を滅ぼす醜悪なものです。
こうして書くと、自由で民主的な国家と全体主義的社会主義国家の対比のように見えますが、同時に、「人間の自己実現のための手段としての組織」なのか、「組織の目的達成のための手段としての人間なのか」の対比として捉えることができます。
みなさんが働く組織はどうでしょう。
社員のみなさんの自己実現と幸福のための手段として機能しているのか、それとも、組織の目標達成にための手段として社員が存在しているのか。
そして皆さん自身はどうでしょうか。
組織(会社)に貢献することで自己実現を手にするための道具(場)として会社を捉えているのか、それとも、会社の目標実現のための一員としてのみ自身を捉えているのか。
一人ひとりの人間の自己実現による幸福の追求と、組織の目的達成を両立させるのがマネジメントであり、すなわち、人の強みを生産的なものにすることこそが、マネージャーの仕事であり経営者の仕事だということになります。
ここにおいて、マネージャーがドラッカーマネジメントを学ぶことは、社員の幸福の実現と組織の目的達成を両立させるために必要不可欠なことになると思います。
そして、組織で働く一人ひとりも、会社に隷属することなく自立した存在として、会社を自己実現の場としてとらえ、自分の強みを最大限発揮して貢献できる場所にしていただきたいと切に願っています。
もしどうしても、それが手に入らないときには、働く場所を変える勇気を持つべきです。
あくまでも主体は自分自身です。
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