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バックパッカーとドラック体験と頭の回路のはなし

下記はBGMに選びました

オレはかつてヨーロッパでドラック体験をした事がある
30年前だから、もう時効だろう。許してもらえると嬉しい。

マリファナの特性のひとつに〈最初は必ずバットに入る〉というのがある。

実はあれ、脳が新しい回路を作る時に起こす現象なのではと思ってみた。
頭の中に新しいスペースをつくるため、場所を押しのけたり、場所をキープしたり、トンネル工事みたいな事するから、頭がグルグルになるのではないか。

アルコールも中学生の頃、初めて経験した時は、バイオレットフィズさえゲロゲロになっていた。他のドラックもそうだと思う。最初は非常にマズかった。

精神と別次元を繋ぐトンネルは、小さなスコップでサクサク掘るのか、どデカいドリルでガリガリ削るのか、硬い岩盤をダイナマイトで爆破するのかしてるんだ。きっと。

気軽に行ける次元もあれば、大工事が必要な次元もあるという事だ。

アルコールで楽しめるようになるには、結構なゲロゲロを体験しないと、あの〈楽しい次元〉には行けない。

実はオレ、30年前の大学時代、パリに6ヶ月、ロンドンに1ヶ月滞在していた時期がある。
ロンドンで、あらゆるドラックを体験した。

しかしその殆どが、最初の1回目はバットトリップするモノだった。
特にLSDは酷かった。

ドラックはその種類ごとに、〈体験する次元〉が違う。〈世界〉と言ってもいい。

そして、それぞれの次元に行くための〈回路のトンネル〉を一番初めに作らなければならず、トンネル工事が必要で、時にそれが〈バット感〉を出すのだ。

スピードやエクスタシーは、比較的〈バット感〉は少なかった。
話しに聞くには、〈ヘロイン〉が一番酷いらしかった。
オーストラリア人のジョシュエル君(2個うえ24歳)が全部教えてくれた。
「ヘロインはかなりキツかったよ。アレだけは絶対やるもんじゃない!あんなんやるの頭おかしい奴だよ。サイコ野郎だよ!」
とプンプンしていたが、(お前もな)…とオレは思った。

ロンドンのクラブにも連れて行ってもらった。

行くときは、B&B(1泊千円4人部屋)で同室だったケン(34歳金髪青目アメリカ人)と3人だった。
2人とも世界を旅するバックパッカーだった。

余談だが、ロンドンは大陸の西端なので、バックパッカーの旅人が集まる。

そのクラブでジョシュくんが、みんなの金を集めてエクスタシーを買ってきてくれた。
店員さんから買ったのかも知れないし、秘密の暗号とかあるのかも知れない。

オレはその日のクラブで、生まれて初めて逆ナンされた。
人生最初で最後のたった一度の経験だ。

後で気づいたんだけど「トイレに行かない?」って言われてたみたいだ。
音もうるさいし彼女のネイティブ英語は早いし、理解出来ないで戸惑っているうちに、彼女は〈ダメだこいつ〉的なアクションを残して去って行った。
ジョシュくんが
「なんでお前行かなかったの?ゼン、アレはもったいないでしょ!マジかよ!オレが行きたいくらいだよ!」
と半ギレしていたが、俺たちはそれでもハイになっていたから、笑い転げていた。
周りの男の子も女の子も、みんながドラックでハイになっていた。
とても楽しかった思い出のひとつだ。
話のタネになるやつだ。

ある日3人でマリファナを買いに行く事になった。
行く途中、ケンとジョシュがなんか険悪なムードになっていた。2人とも早口で何を言ってるのか分からなかった。

「ゼンも困ってるよ、もうやめよう」
「いや、どうせ、彼は聴き取れていない」
…とだけ、ちょっと言ってる事が分かった。

普段から50%くらいしか分かってなかったから、彼らは気を使って〈子供に話すようなスピードで〉話してくれていた。
優しいお兄さん達だった。

向かったのは、コベントガーデン?場所が思い出せない。のみの市が開催されるような、渋谷のような有名な場所だった。

ジョシュくんが、道でとても気軽に女の子達に声をかけて、場所を聞いていた。
オレはそこで、声をかける時は「エクスキューズミー」じゃなくて「へい!ガイズ!」だと言うことを覚えた。
普段使いのカッコいいオレになれる英語だと思った。

センター街みたいな所を歩いていると、突然ジョシュが、知らない誰かと目で合図しながら、軽く首を上下に振った。

よく見たら、その通りには不自然に停止している人がチラホラいて、〈誰かと目が合うのを〉ずっと待っていて、キョロキョロしていた。

彼らと目を合わせてうなずくと、ドラックが買えるのだ。
オレはこの日〈ドラックの買い方〉を初めて知った。生活に全く使用しないムダな知識ではあったけど、とても面白いことを知ったように感じた。

ついて来い的なアクションと共に、ゆっくり歩き去る黒人男性。その後をついて行く。住宅地まで5分ほど歩くと、バイヤーは「男3人じゃブツは渡せないから、代表1人が来い」的なことを言う。
そこはやっぱり手慣れたジョシュくんの出番だ。
なんか、映画に出てくる人みたいにカッコよく見えた。トムクルーズに似ていた。

1週間ほど3人でバカ騒ぎしたあと、ジョシュはその後パリ経由の陸路で、地中海方面に向かうと言っていた。特に決めていないそうだ。
ケンは、空路でカナダを経由してアメリカに帰って行った。みんな、となりの県に遊びに行くような感覚で、国と国を軽々とまたいでいた。スゴい感覚だと思った。英語圏生まれはずるいなぁ…と思った。
彼らには地球が小さく感じられるのか?…いや、そう見せかけて、とても大きく感じでいるはずだ。
知れば知るほどその大きさが広がるものだからだ。

回路の話しに戻ると、友人がこんな事を言った。

…確かにロッククライミングでも、最初はとても怖かった。慣れるまで、回路ができるまで、日数がかかった。

「怖くない」という次元に行く為の、トンネル工事の振動が〈怖い〉の正体だ。

友人はネガティヴな〈失恋〉とかの悲しい状態も、ふっ切る為の、悲しくない次元に行く為の〈トンネル工事〉なのではないかと言う。

オレもそう思う。
暴力や離婚や奥さんや子供達の悲しい出来事を、ずっと思い出して消化している期間は、確かに辛かった。
だか、この辛い期間がなければたどり着けない次元があって、オレは今、そこに立っているんだと思う。

この世界は、いろんな次元が重なり合っていて、それぞれが自分独自の次元に立っていて、それが人の数だけ重なったレイヤー構造になっている気がする。

元奥さんが憎い次元もあれば、元奥さんに感謝している次元もあって、別の次元に移るにはそれなりの大きさのトンネルが必要で、人によって簡単に出来る人もいるし、大変な思いが必要な人もいる。
オレは結構大変だった。
もともと、そういう人間だ。しょうがない。

でも、わかった事がもう一つ。
一度大きなトンネル工事を経験すると、ノウハウが出来るので、次のトンネル工事がスムーズになるという事。

今なら国と国を軽々とまたげる気がしている。

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