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「Hi」の日本語がないワケ

Hi!How are you?
やぁ、みなさんお元気ですか?

実際にそんな風に話しかけられたら、どこかむず痒くなってしまう。にも拘わらず英和辞書には平気な顔してそんな和訳が載っているのだ。
英語などの外国語に触れていて、とても便利だなと思う言葉がいくつかある。その中でもナンバーワンは圧勝でこれ。

Hi


スペイン語でも同じ意味の Holaと言う言葉がある。
何がどう便利かっていうと、挨拶をする状況の時に、

・誰にでも使える
・いつでも使える
・とりあえず使える

とにかく何も考えずに「Hi!」と言っておけばいいのである。よっぽど敬意を払わなければならないロイヤルの人などには使えないが、友達には当然の事、初めて会う人やお店、学校の先生もまぁ使える。人に会ったら何も考えず「Hi]と言っておけばいいのだから、顔を合わせて「なんて声をかけようか?」と悩むのをとりあえずは避けられる。

イギリスのカレッジ*に行っていた時に、クラスメイトに聞かれた。
「日本語でHiってなんて言うの?」
そう聞かれた私は考え込んでしまった。やぁ、なんて物語のセリフでしか使わない、ねぇ、というのも違う。色々考えた末、私の出した答えは、
「ない」だった。その答えを受けて、驚くと同時に新たな疑問が生まれたクラスメイト。
「じゃあ、会った時になんて挨拶するの?」
これまた考え込んでしまった。向こうからしてみたら、なんでこんな言葉の基礎みたいな質問にこの人は考え込んでいるのだろうと思っただろう。
適当に辞書に載っているような言葉で誤魔化す事も出来た。
因みにネットの辞書で調べると、おい!、やあ!、こんにちは! などと出てくる。こんな言葉、人生においてほとんど使ったことがない。自分でも使ったことがない言葉を、毎日毎回の頻度で使う「Hi]の日本語訳として教えてしまう事にどうしても抵抗があった。
そして考え抜いて出した私の答えは、「状況によって異なる」だった。

*カレッジ=イギリスで高校を卒業し、大学へ行く前に行く準備学校のようなところ。1~2年間通う。

自分でも今まで深く考えたことがなかったが、日本語は挨拶言葉に限ってはなんて不便なんだろう。朝はまぁいい。「おはよう」や「おはようございます」で大体いける。仕事関係の相手もまぁいい。「お疲れ様」という便利な言葉がある。あと久々にあった知人も「久しぶり~!」で行ける。一番困るのは、よくあう知人に昼以降に会う時。「こんにちは」なんて実際に日本人が使っているのをあまり見たことがない。たまに私に何かを売りたいような人が「こんにちは」と言ってくることがあるが、むず痒くてたまらない。まだ言葉の選択肢が少なく、先生から挨拶は「こんにちは」と言うのよ、と刷り込まれた幼稚園児が使うのをたまに見るくらいだ。
今まで自分はどうやってその場を切り抜けてきたかを考えた。待ち合わせをする際に遅く着いた方が「お待たせ」と言ったり、無言で手をあげる(振る)、何も言わないで会話に突入。大体こんなところではなかろうか?「Hi」のような決まり文句は思いつかない。

ただ例外はある。身分関係なく皆共通で時間も関係なく使える言葉。
それは「押忍」。最近はその風潮はその業界内でも薄くなってきたが、空手をやっている人同士は、身分に関係なく挨拶も返事も、いつ何時でも「押忍」で事足りる。


Hiに代わる言葉が日本語にない理由はなぜなのか?自分なりに考察してみた。
日本語は状況に応じて、細かく使用すべき言葉が用意されている。
さらに敬語の種類も多く、丁寧語、尊敬語、謙譲語と相手に応じて使い分けしなければならない。
日本語を使う時は常に、年上を敬い、身分の差をわきまえ、場を考え、状況を考え、時間を考え、適した言葉を選ばなければならない。

買い物に行ってくるぜ、って時にも

上司には、、、買い物に行かせていただきます。
同僚には、、、買い物に行ってきます。
友人には、、、買い物に行ってくるよ。
赤ん坊には、、、買いものに行ってきまちゅよ。
ネコには、、、買いものに行ってくるにゃ。

といった感じで、使い分けなければならない。

つまり、日本語は日本の季節が細かく微妙に変化するように、言葉においても、よりTPOに準じて言葉を使い分けなければならないように出来ているからであり、そこには日本人の相手を重んじる配慮に満ちた気持ちから生まれた文化故の事なのだ。

でも今からでも遅くないから、いつでもどこでも誰にでも使える挨拶言葉があれば、自分みたいな話下手にはコミュニケーションに困らないので、誰か作ってくれないかと願っている。

押忍

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