とうとう見てしまいました……
真夜中の怪談です。
ささやかな話なので、期待し過ぎないで下さいね。
怪談仲間でもある 小池準さん @koi1999 と県外の山奥へ小遠征し、クワガタ狙いのライトトラップ採集に行った帰り道のこと。
真夜中、小池さんが運転する車で、特徴のある橋を渡っているとーー。
街灯が立った明るい橋の上で、向かって右側の歩道を歩く人の後ろ姿が見えてきた。
中背で痩せ型の女性である。
顔は見えなかったが、何となく、中年か、初老の女性と思われた。
午前2時近くのことだったし、田舎道なので、それまで歩く人と遭遇することはまったくなかったから、その姿はとても目立った。
しかも、杖を突いて歩いていたのだ。
「あれ、生きた人なのかな?」
と、小池さんが呟くように言った。
助手席にいた私も、その姿を確かに目にすることができた。
女性はブラウスを着て、黒っぽいズボンを穿いていた。
髪は黒くて短めか、後ろで束ねて留めていたように思う。
車で追い越した直後、小池さんがサイドミラーを覗いて、
「あっ、いない!」
と、大きな声で言った。
それで私も、すぐに車に取り付けられたバックモニターを見たのだが、本当に景色しか映っておらず、女性の姿はどこにもなかった。
「今の、生きた人じゃないですよ!」
と、小池さんが言う。
急に、ぞーっ、としてきた。
ただ幽霊を見た、というだけなのだが、なぜか数分間は震えが止まらなかった。
(ああ、〈見る〉というのは、こういうことなのか!) と、実感した。
その後は何事も起こらず、無事に帰ってくることができたのだが、幽霊に遭うと、それだけで寒気を覚えるものらしい。
そしてこれが、生まれて初めて体験した、幽霊の目撃談となった。
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