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しらすとズッキーニのアーリオオーリオ

先日、ペペロンチーノを「アーリオオーリオ・ペペロンチーノ」って言う人、ちょっと苦手なのよね。
みたいな話を書いたら、
唐辛子入ってたら「ペペロンチーノ」
唐辛子入ってなかったら「アーリオオーリオ」
って言う派です。
っていうコメントをいただいた。
やっぱそうよね。私もそれ派である。

オシャレな雰囲気に耐性のない私だが、
「にんにく油のパスタ」なんて言っちゃったら、逆にわざわざ感があって嫌だ。
そんな世代でもないのに、ハンガーを「えもんかけ」って言ってたらなんかアレだし、
比較的新しいカタカナ語の「ソース」なんかも、ここまで定着しちゃうと、
急に「情報源は?」とか言われたらちょっとビクッとする。
わしゃ新米刑事か、みたいになる。

言葉の印象も時代の流れとともに、
日々移り変わっていく。
軽薄な流行り言葉が定着して普通になったり、
定着したと思っていた言葉がとうに時代遅れだったり。
いやー、やっぱ言葉って難しいなあ、なんて思ったけれど、
そういや難しいのは言葉ではなく、
いちいち細かいことを気にする私の人間性のほうであった。
まったくもってぴえんと言わざるを得ない。

てなわけで今回は、しらすとズッキーニのアーリオオーリオのご紹介である。

コメントを見て、久々に唐辛子入ってない「アーリオオーリオ」が食べたくなり、
帰りにいつものスーパーに立ち寄る。
でっかいズッキーニと安売りのしらすに目が留まる。

スーパーで食材見ながら、料理の完成系をあれこれイメージする時間が好きだ。
料理の上達の秘訣は、まず完成系をイメージすることだという。

ズッキーニはスライス。塩をふって水気を出しておく。
にんにくの香りを油に出して、しらすとズッキーニを入れて、パスタも茹でておいて。
硬めで上げて、茹で汁入れて、ソースと合わせて乳化して。
うむ、うまい。決定。

これをいろんな食材を見ながらできるから、スーパーはとても楽しい。
なんせイメージではお腹はいっぱいにならないので無限に食べられるのだ。

さて、食材を購入し、帰って実際に作り始めたのだけど、
完成したと思っていたイメージに迷いが生じてきた。
なにかが足りない。
あとひと味、なにかが足りない。

パスタの塩加減もいい。
にんにくの香りもある。
ズッキーニの食感もある。
しらすのうま味もある。

あとひと味、そこにアクセントになる、
ピリッとした刺激で全体を締めてくれる何か。

なんじゃろな、とスパイスの棚をあさって、
目に留まったのは。

ピリッとした刺激の、例のあいつ。
あーちくしょう。やっぱりペペロンチーノではないか。

ここまで定番になったメニューというのは、
やっぱりよくできているもので、
「アーリオオーリオ」が食べたいという当初の目的は達成ならず。

ただ、料理は一度完成系がイメージできたら、
そこからは状況に応じてアドリブを効かすのも大事だという。
そしてなにより、最終的に美味ければOK。

もはやこれ人生。
なんかもはやこれ人生。

出来上がったパスタを食べる。

パスタの塩加減もいい。
にんにくの香りもある。
ズッキーニの食感もある。
しらすのうま味もある。
そして、唐辛子がピリッと全体を締める。

当初のイメージとは違うが、
当初のイメージよりはるかに美味い。

「あんたもはやく見つけなさいね、自分の完成系。
ピリッと唐辛子も効かせてね。」
なんて脳内で謎のおばはんが語りはじめる。

「しらすとズッキーニのアーリオオーリオ」
改め、
「しらすとズッキーニのペペロンチーノ」

思わず人生を感じる味となっておりますので、
みなさんも自分を見失う時などありましたら、
ぜひ作ってみられたし。

知らない食材を買ったり、知らない美味しいものを食べたりしております。ありがとうございます。