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冷凍の餃子

ツイッターで旦那さんの愚痴を言う主婦がバズっているのをよく目にする。

奥さんが夕飯に冷凍食品の餃子を出したところ、うまいうまいと食べる息子に、
旦那さんが「手抜きだよ。これはれいとうっていうの。」
と言ったという。

これには主婦のみならず、いろんな人達から怒りと励ましの声が寄せられまくった。

「冷凍餃子だって焼いて皿に盛り付けてる時点で手抜きじゃない。」
という人が多かったが、
もし手抜きだったとして、手抜きで美味いものを用意できて何が悪いのか。
楽をして減るような愛情ならば、
手間をかけたところで大してこもりゃせん。

まったく料理をしない旦那さんで、
料理にかかる手間を想像できないタイプかな、とも思ったが、
この感じだと逆のパターンもありえる。
めちゃ手の込んだ料理する旦那さんで、奥さんがそうでないと気になっちゃうパターン。
これは余計にたちが悪い。

なまじ料理が出来ると勘違いしがちだが、
趣味の料理と家事の料理は、まったくの別物なのである。

休日なんかに、趣味で手の込んだ料理をする人がいる。
蕎麦を手打ちしたり、カレーをスパイスから作ったり。
下手したらそのへんの店より美味いものを作る人もいるし、それはそれで素晴らしいことだ。
だが、いったい材料にいくらかけているのか。
一食の調理に、何時間かけているのか。

かかる費用や、栄養バランスや、他の家事や予定との折り合いなどなど、
そういったことを考えながら、
毎日なんらかを用意するのが家事の料理。
ただ趣味で美味いものを作るのとは別の作業。

忙しい中、今日もなにかが用意できれば、それだけで万々歳の晩餐会である。
その上で美味いにこしたことはないが、
手が抜けるならむしろ出来る限り抜くべきじゃないか。

ちなみにもちろん、家事はその時その時でどちらがやっても良い。
どちらかに余裕なければ余裕がある人がやるし、
どちらもなければピザでもとればよい。
ピザは皆を幸せにする。なにも問題はない。

だがまあ、言わばせっかくの冷凍餃子での一悶着である。
ここはひとつ仲直りのために、2人で一緒に冷凍餃子を焼いてみてはどうだろうか。

以下においしい冷凍餃子の作り方を記しておくので、
奥さんの料理が手抜きに感じてしまっている自分に気づいたら、思い出してみてほしい。

てなわけで今回は、おいしい冷凍餃子の作り方のご紹介である。

今回もポイントは3つ。
まず最初に「下手なアレンジを加えないこと。」
つまり、袋に書かれている作り方を忠実に守って作ることである。
冷凍の餃子は、簡単に誰でも上手く焼けるよう研究し尽くされて設計されており、
今や水を油も使わず、フライパンに並べて焼くだけで完成するようになっている。
そのために必要な工夫がすでにあれこれ詰まっているのに、
余計なことをすると逆効果になりかねない。

そしてポイントの2つ目は、もちろん今回も、
「2人で一緒に作ること」である。
2人で一緒に料理をする。料理と言っても冷凍餃子を焼くだけ。
だが、それが妙に楽しくはないか。
思えば同じ作業を協力してやることなど近頃あっただろうか。
まして妻がいつもやってくれている料理をである。離れていた心もまた近づこうというもの。

すでに包んで冷凍してある餃子。
2人で一緒に包んだわけではないが、
味の素食品さんが、2人の代わりに、包んでおいてくれたってさ。
ん? 何を包んでおいたかって?
おっと、野暮なことは聞くもんじゃないぜ。

もし楽しくなってきて、焼くだけでは物足りなくなったら、
お互い一種類ずつタレを作って食べ比べなどすると良いだろう。

さあ、あっと言う間に完成してしまったが、
どうかね、まだ手抜きは気になるかね?

食べながら、その美味しさにさらに弾む会話。
思えば、こうして2人で話しながらの夕食なんていつぶりだろうか。

うまいなー、冷凍のでもこれが出来るんだったら、全然いいよなー。

しかし、俺が作ったこのタレもうまいけど、
お前が作ってくれたこっちのタレ。
自分は辛いの食べれないのに、
俺が好きなピリ辛のタレを用意してくれるなんて。
手抜きなんて言ってごめんな。
いやー、なんていうか、
いつも忙しいおれたちの代わりに、具と一緒に、
味の素食品さんが包んでくれてるんだよな。

え、何をって? いや、言わせる?

や、俺たちの代わりにさ、
具と一緒に、その、

……………

どさっ。


「そうね。

代わりに包んでくれてるわね。

…………憎しみを。」

血を吐いて、床に倒れる夫。
無表情で、それを見下ろす妻。

「まあ、憎しみが入ってたのはタレのほうなんだけど。
ごめんなさいね、ちょっと辛すぎたかしら。

いつから頼もしいって思えなくなっちゃったのかしらね。
なんにでもこだわりたがるあなたのことも、
好きだったのよ。昔はね。

さよなら。」

そう、ポイントの3つ目は「毒には気をつける」なのだが、
今回もどうやらそこだけ抜けていたようであるな。無念。

てなわけで、今回ご紹介したのは冷凍餃子のおいしい作り方。
3つのポイントさえおさえれば、あっという間に出来ちゃう一品である。

さあきみも、レッツトライ!

知らない食材を買ったり、知らない美味しいものを食べたりしております。ありがとうございます。