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シャッターを切り続けたい、そこに推しが居なくとも。


今年になり、新しい趣味が出来た。

趣味に出会ったその頃は仕事を休んだり心の拠り所が不足していて何かに対する熱意が枯渇していたように思う。だから、熱中できるものが欲しかったのだろう。

その趣味について、魅力や始めるに至った経緯など、少しお話をしようと思う。

私の趣味は、フィルムカメラで写真撮影を行うことである。

私が仕事をおやすみした頃、大好きなアイドルのライブが当選した。当選結果を見て驚いたことが、ライブ中の撮影が可能な座席だということだった。私は女性しか座れないエリアの応募をしたはずだが、と目を疑った。何かの手違いでライブ撮影可能席を第1希望として提出してしまったのかもしれない。
こうなればカメラを手に入れるしかない。何せ、私は自分のカメラを持っていないのだ。学生時代、家族からクリスマスプレゼントで貰ったチェキしか手元には無かった。ステージから座席までの距離を考えると、さすがにチェキで推しは撮れない。デジタル一眼レフは、ネットで検索をかければ10人以上の諭吉が旅立ってしまう値段のものが圧倒的に多かった。さすがに今は大人数の諭吉を用意することが出来ない。そう踏んだ私は2万円以内に収まるカメラを買おうと思った。
SNSで調べたところ、中古のフィルムカメラは意外と安価で手に入ることを知った。なるほど、これは良い。フィルムカメラには以前から興味があった。光と影の質感が柔らかく現れるその描写が好きだった。それから、フォローしているアイドルやインフルエンサーが挙って仲間とのフィルム写真をSNSに載せている。それもあって、以前から使用してみたかったのだ。
この機会だから挑戦してみようと、カメラ屋さんへ足を運んだことが全ての始まりだった。

結局、ライブ会場の室内をフィルムで撮影するには明るさが足りず、ライブは撮影せず観戦のみとなった。
あのお店へ行った日、とても目を引くカメラを見つけてしまった。カメラが所狭しと並べられたガラスケースから少し離れた木の棚にぽつんと置かれていた、電池式の自動フィルムカメラだ。フィルムをセットする時や撮り終わった時に自動で巻き上げてくれたり、被写体へのピントを自動で合わせてくれたりと、初心者にとってはありがたい機能が沢山盛り込まれている。私はそれを3800円で購入した。
以上が、私がカメラを始めた経緯である。

その時に訪れたカメラ屋さんが、写真家さんと一緒に主催しているカメラのワークショップの存在を知った。ライブ中の推しを撮れなくても、ワークショップで自由に撮影できるのならそれでもいいと思った。仕事をおやすみした原因の一つに、職場と家を往復するだけの毎日だったということがあった。もしこれをきっかけにコミュニティが広がれば、楽しみが増えるかもしれない。試しに一度参加してみて、雰囲気を味わってみたい。今後も参加してみるかどうかはその時に決めればいい。私は気づいたらワークショップのSNSアカウントへDMを送っていた。

結論から言うと、楽しかった。撮影の舞台が訪れたことの無い場所だったので、初めて上陸する私にとってはどれもが新鮮だった。フィルムを惜しむことなく撮りきってしまい、結局2本も使った。参加した方々も気さくだった。撮影中も賑やかでずっと笑いが絶えなかった。撮影後には意気投合したメンバーでカフェに行きお茶を飲んだ。同じ時間を過ごした人と、街の景観を眺めながら駄弁ることがこれ程に楽しいのか。
これを機に、カフェへ行ったメンバーと連絡を取り合うようになった。ワークショップを介さずとも遊ぶことが増えた。喫茶店や水族館など、予定を立てて様々な場所へ出かけることが楽しかった。彼女たちと会わない休日は、ワークショップへ時々参加するようになった。新しい顔ぶれや、以前参加した時に知り合った人々とコミュニケーションを撮れることが嬉しかった。
もちろん、コミュニケーションだけでなく、フィルムカメラで写真を撮ることも楽しかった。街を歩いて心を惹かれた瞬間を切り取ること、同じ場面をどう切り取るか人によっての違いを見比べること、そうすることで自分の持つ視点の幅が広がったように感じた。カメラを持っていない日でも街を歩く時の目線が変わった気がする。

それから、カメラを手に入れたことで、私はやりたいと思うことが増えた。例えば、ポートレートの撮影、作品撮り、カメラを持って旅をする、デジタルカメラにも挑戦してみるなどだ。
それから季節は夏へと向かっている。私は夏の持つ空気感が好きだ。空の彩度が上がっていくあの感じ。水辺の透明感。グラスに水滴が増え、そして伝い落ちていく瞬間。冷房の効いた部屋で足を伸ばして横たわる時。私は、今年の夏をカメラに収めて次の夏まで生き延びていたい。これから来る夏を保存しに行く。これも、私のやりたいことだ。
カメラという趣味を見つけたことで、物事をより楽しく感じられるようになった気がする。
推しを撮りたいとカメラ屋さんへ駆け込んだきっかけが、私に写真撮影そのものが楽しいということを気づかせてくれた。あの時優しく丁寧に対応してくれたカメラショップの店員さん、ワークショップの主催者さん、ワークショップで仲良くなった方々に感謝をしている。

余談だが、推しをフィルムで撮れないかもと諦めていたが、この夏、推しグループが野外フェスを行うらしい。野外ならフィルムカメラでも撮影は可能だろう。撮影可能席の販売があれば、申し込んでみようと思う。

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